【公開講座】情報教育特講 ~教育リソース・デジタルアーカイブ~
Ⅰ はじめに
教育リソースのデジタル化の研究は、1960年代に始まり、教育論文・資料等の情報管理がERIC(Education Resources Information Center)等で進みだした。また、米国では教師教育の観点から教育実践での有意な資料を原記録として保管・分析がプロトコール運動として始まった。
学習システム研究会(岐阜・愛知の教員、大学関係者の会)では、1967年から教育実践の記録・保管・分析が(岩田晃教諭による)教師教育、教育実践資料のデジタル化の研究として始まった。その後、1970年代には、カナ・英数字を用いたCMIシステムとして、教材・学習材・教育実践研究資料等のデジタル管理とその教育利用が進みだした。
1978年には、小学校用のCMIシステムが開発され、一人一人の学習状況の検出、学習(指導)目標、コードに対応し、個に適した教材・学習材の利用が可能になった。その後、日本語処理が汎化し教育情報処理システムが開発されCMIシステムを基礎にした教育資料のデジタル利用が進みだし、2000年頃からは、映像・音声・文字・数値等のメディアの一体的な取り扱いが可能になり、教育リソース・デジタルアーカイブ(DA)として利活用が始まった。
教育リソースDAの教育実践研究資料を用いて、2010年代には沖縄の二つの小学校で学習指導力、学力の向上に役立てた。
教育リソースDAは、今後、このような教育研究を基礎にして、生成AIの教育利用、個別学習の自動化、主体的な学び、課題解決学習等で教育の質的向上、教師の働き方改革等のためのデジタル化の基盤として重要となる。
Ⅱ 授業の目的・ねらい
教育のデジタル化の発展と今後のOECDの個別学習の自動化、主体的な学び、課題解決学習等での利活用を考える。
Ⅲ 授業の教育目標
第1講~第15講の各研修目標に基づいて、テキストと動画教材を利用して教育リソース・デジタルアーカイブの活用ついて理解し、各講の課題に取り組むことで、教育リソース・デジタルアーカイブについて理解する。
第1講 教育リソースのデジタル化の発展と利活用
1.何を学ぶか
第1章では、先生方のこれまでの教育リソースの活用について考えていきたい。
第1章~第7章は、教育リソースとして、どのように各種の資料を集め、記録し、管理・流通に発展させてきたかを示す。また、そのプロセスでの教育実践での活用例を簡単に説明する。
2.内容
1―1.木田宏氏の教育リソースの必要性の指摘
1―2.教育リソースの資料管理の構成
1―2-1.保管する資料の例(先生方の教育関係機関に存在する例を示せ)
1―3.データの基本的な構成
1―4.どのような使い方がされてきたか、また今後されるか
3.課題
① 教育リソースに記録・管理される資料についてどのような資料があるか、検討し、次に具体例を簡単に説明せよ。
② 個別学習の自動化(OECDの個別学習の自動化のレベル0~5での検出について検討せよ。)
4.プレゼン資料
5.映像資料
6.資料
第2講 教育研究論文・資料と教育事象の原記録
1.何を学ぶか
教育リソースのデジタル化は、1960年代から始まっていて、最初は、教育研究文献・資料情報のデジタル化であった。とくに米国では、ERIC(Education Resources Information Center)が、1966年から研究論文・資料情報やその検索用やシソーラスも合わせて提供が始まった。我が国では、1972年頃に学制百年記念事業として、教育情報センター構想が研究(審議)されたが、オイルショック等の関係で中止となり、事業主体を国立教育研究所に移された。その後、国立教育研究所(木田宏所長)が教育情報センター構想の研究会(手塚晃座長)を1983年に開催され、1985年には教育情報センターが設置された。教育情報センターでは、授業案と教科書を積極的に全国から収集・記録され、注目されたが、政府の事業主体の仕分けにより民間に移された。
また米国では、教育事象の原記録の収集・記録・管理が、プロトコール運動として、主として、教師教育の観点から始まった。たとえば、授業行動カテゴリーによる教授・学習活動の記録・分析などが進められた。
2.内容
2―1.教育文献資料の収集・記録・管理・流通(ERIC)
2―2.教育情報センター構想(日本)
3.課題
① シソーラスについて具体例を挙げて説明しなさい。
② アメリカのプロトコール運動について説明しなさい。
4.プレゼン資料
5.映像資料
6.資料
第3講 教育実践の総合的な記録とデジタル化の準備(1967年~)
1.何を学ぶか
教育実践資料の総合的な記録は、松枝小学校で1967年から始まった。
その利用目的は、教師教育(新卒の教師教育)と教育実践資料のデジタル化の準備であった。とくに、そこでの教育実践資料としては、
・学習指導計画(授業案)、学習プリント、実験・実習プリント
・レスポンスアナライザー(理解の状況の計測)、カメラ、ビデオによる学習活動の記録、筋電等の生理学的データの記録
・テスト、得点グラフ、カルテ 等
が、1967年~1970年に記録・保管し、デジタル化の準備が進められた。(1970年から、コンピュータによる各資料は、保管が始まる。)
収集したデータの分析は、その後の教育リソースとして学習指導力の向上、学力の向上等に役立てられた。
2.内容
3―1.教育実践の総合的な記録~学習状況の検出~
3―2.教育実践の記録例・・・検出の始まり
3―3.教育実践資料のデジタル化の準備
3―4.データ化の準備
3―5.検出の準備
3.課題
①
②
4.プレゼン資料
5.映像資料
6.資料
第4講 CMIシステムの開発(1970年~)・教育リソース情報のデジタル化と利活用
1.何を学ぶか
教育実践資料の収集・記録とそのデジタル化の準備ができ、入力可能になったのが、一般的に1970年頃であり、当時のカナ・英数字しか使用できないコンピュータであった。このため、教材、学習材、素材、学習指導計画等は、表題をカナ文字で入力し、案内情報(メタデータ)を教材項目(情報)として入力し、実物は外部管理していた。
学習反応データや、行動カテゴリーの評価データ等は、直接入力が可能になり、各種のデータ解析が可能になった。
このような資料管理の状態で、教育実践研究のための分析・解析やさらに、教授項目の系列化処理等が進められた。
その結果、授業改善の他に学習指導計画の基礎資料の作成、提供や、学習プログラムブックの作成支援、CAI学習プログラムの開発に役立てられた。
2.内容
4―1.教育実践資料情報のデジタル管理
4―2.CMIの構成
4―3.コンピュータを用いた記録・分析結果の活用
3.課題
①
②
4.プレゼン資料
5.映像資料
6.資料
第5講 学校教育でのCMIシステム
1.何を学ぶか
教育資源のデジタル化の準備の時期(1960年代)で教材、学習材、素材、学習指導計画、学習プリント、カルテ等の教師作成資料(主としてコンテキストデータ)や学習反応データ、行動カテゴリーデータ(映像、音声)、筋電データ等の生理学的データ、行動データの収集・記録・整理の時代から1970年代のコンピュータを用いた管理・流通の時代への発展の時期である。
ただし、当時のコンピュータは、カナ、英数字しか利用できなく、管理・利用で制限があった。
このような状況で、教材データベース、学習遍歴、学習反応等の管理もする学校用のCMIの開発が進められた状況について説明する。
教育リソースのデジタル化の初期の実践である。
2.内容
5―1.教育実践のCMIシステムの開発と利用
5―2.データ管理
5―3.学習指導目標コードの利用
5―4.CMIの出力例
3.課題
①
②
4.プレゼン資料
5.映像資料
6.資料
第6講 日本語処理の可能な教育情報処理システム ~教育情報処理システムとデータベース~
1.何を学ぶか
日本語(漢字)処理が1980年頃から可能になり、これまでのCMIシステムで教育資料情報と実際の資料(教材、学習材、教育実践研究資料等)を合わせてデータベース化が可能になった。(現在の教育リソースに近いデータベースが構成できた。)
その利用方法はCMIシステムと違い、映像、音声以外の資料がデータとして登録でき、個に適した教材、学習プログラム、テキストブック等の提供が可能になった。またそれらのデータは、フロッピーに移され、学校教育での利用が可能になった。(当時は通信が遅く、フロッピー、MTテープ等を用いた提供が主であった。)
2.内容
6―1.教育情報処理システム(1980年~)~日本語(漢字処理)の利用~
6―2.教育情報の記録について
6―3.メタデータの構成
6―4.教育情報システムの出力例
6―5.教育資料データベースの利用
3.課題
①
②
4.プレゼン資料
5.映像資料
6.資料
第7講 教育資料のデジタル管理 ~教育リソース・デジタルアーカイブ(2000年~)~
1.何を学ぶか
教育リソース・デジタルアーカイブは、2000年頃から映像、音声、文字、数値等のメディアを一体的に取扱うマルチメディアデータベースとして開発が進みだした。とくに地域資料のデジタル化・教材化が進みだした。また、過去の教育資源・原記録のデジタル管理が進みだし、これらを選定する選定評価項目を決めることが運用上重要になってきた。
メタデータは、教育リソースの利活用に役立つ記録項目の設置が必要となってきた。
2.内容
7―1.映像・音声・文字等のメディアの一体的な記録
7―2.デジタルアーカイブについて
7―3.地域教育資料のデジタルアーカイブ化
7―4.教育資料の記録の方法
7―5.選定評価項目・権利処理
7―5―1.メタデータの構成
7―5―2.管理・流通・検索のためのメタデータの構成
7―5―3.利活用に関する項目
7―6.教育実践研究資料のデータベース例
3.課題
①
②
4.プレゼン資料
5.映像資料
6.資料
第8講 教育リソース・デジタルアーカイブの利活用
1.何を学ぶか
この章は、教育リソース・デジタルアーカイブの利活用を検討をせよ。
~各自でまたは他の先生方と調べ検討をされたし~
2.内容
8―1.課題解決の学習での利活用
8―2.教育実践研究資料の活用
8―3.個別学習での教育リソースの利活用
8―4.教育リソースの学習指導計画、授業分析での利活用
8―5.学びでの情報(教育リソース・デジタルアーカイブ)の利用について
~DIKWモデルの観点から~
~先生方は、情報をどのように利用されているか~
3.課題
① 8の1~5の中で、指導経験のある項目があれば、まとめて記述しておいてください。
・また、近くに、経験のある先生がおられたら、ぜひ、話を聞いてまとめておいてください。
・また、参考図書等を見られて、理解できる事項もぜひ、まとめておいてください。
② 個別学習の講座でも関係事項についての説明があると思います。
ぜひ、整理し、まとめておいてください。
(注)教育リソース・デジタルアーカイブ、個別学習の自動化等の講座での学びでまとめてください。
現在、理解されている項目のみ記入し、残りは課題等の講義で説明をまとめてください。
4.プレゼン資料
5.映像資料
6.資料
[巻末資料]
8―6.修学旅行での教育リソース・デジタルアーカイブの利用
~観光情報としての利活用~
[巻末資料]
8―7.【参考】 A小学校の教育実践の成果
[巻末資料]
8―8.教育リソースDAを利用した学校文化の形成(宮城先生の実践例)
~学習指導力、学力の向上に適用~
8―8―1.教頭だより
8―8―2.シンポジウムより実践例の紹介(宮城卓司先生)
第9講 教育DX時代の新たな学び
9-1 教育DX時代における新たな学び
1.何を学ぶか
子供たち一人一人に個別最適化され,創造性を育む学びとは何か,その実現のための“新たな学び”とはどのような学びで,従来の学びとどのように異なるのかについて考える.
2.学修到達目標
・教育DX時代の社会の変化について説明できる.
・教育DX時代における新たな学びについて具体例を示して説明できる.
・従来の学びと教育DX時代における“新たな学び”との関係について説明できる.
3.課 題
1.教育DX(Digital Transformation)についてその効果と可能性について説明しなさい.
2.GIGAスクール構想について,具体例を挙げて説明しなさい.
4.プレゼン資料
プレゼン
5.動画資料
6.資料
① デジタル推進化プラン
② GIGA スクール構想の下で整備された1人1台端末の積極的な利活用等について(通知)
③ ポスト・コロナ期における新たな学びの在り方について
④ GIGA スクール構想の実現
9-2 21世紀に求められる学力と学習環境
1.何を学ぶか
21世紀に求められる学力を育む新たな授業と評価について,背景や実践事例を紹介しながら考える.
2.学修到達目標
・21世紀に求められる学力について説明できる.
・資質・能力を引き出す授業の条件を説明できる.
3.課 題
1.知識基盤社会に求められる学力について説明しなさい.
2.21世紀型スキルについて,具体例を挙げて説明しなさい.
3.評価の方法について具体例を挙げて説明しなさい.
4.変容的評価を行う指導案を作成しなさい.
4.プレゼン資料
プレゼン
5.動画資料
6.資料
① 社会の変化に対応する資質や能力を育成する教育課程編成の基本原理(報告書)
② 教材開発の基礎としてのインストラクショナルデザイン
9-3 主体的・対話的な深い学びの実現
1.何を学ぶか
現在決まった答えのないグローバルな課題に対して,大人も子供も含めた重層的なコミュニティの中で,ICTを駆使して一人ひとりが自分の考えや知識を持ち寄り,交換して考えを深め,統合することで解を見出し,その先の課題を見据える社会へと,社会全体が転換しようとしている.ここでは,その情報社会とそれに応じて求められる資質や能力について考える.
2.学修到達目標
・主体的・対話的な深い学びについて具体例を挙げて説明できる.
・アクティブ・ラーニングと主体的・対話的な深い学びについて説明できる.
・主体的・対話的な深い学びについて学習理論を示して説明できる.
3.課 題
1.主体的・対話的な深い学びの視点について,具体例を挙げて説明しなさい.
2.学力観の変遷について具体例を挙げて説明しなさい.
3.主体的.対話的な深い学びを実現するための視点を説明しなさい.
4.プレゼン資料
プレゼン
5.動画資料
6.資料
① 新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ~
9-4 学習目標とその明確化
1.何を学ぶか
授業の設計の考え方において,1960年代に米国の教育工学研究者のロバート・メーガー (Robert F. Mager)は,次の3つの質問をすることで,授業の目標と評価方法を定めることの重要性について考える.
2.学修到達目標
・ロバート・メーガー (Robert F. Mager)の3つの質問について説明できる.
・学習目標とその明確化について具体例を挙げて説明できる.
3.課 題
1.ロバート・メーガー (Robert F. Mager)の3つの質問について説明しなさい.
2.学修目標とその明確化について具体例を挙げて説明しなさい.
4.プレゼン資料
プレゼン
5.動画資料
9-5 学習目標のデザイン
1.何を学ぶか
授業設計の最初の段階で行う,学習目標の明確化について説明する.明確な学習目標の設定のあり方と,授業設計の検討すべき内容について考える.
2.学修到達目標
・ブルームの教育目標分類について,行動目標による例を取り上げて説明できる.
・ガニェの学習成果の5分類について,具体例を挙げて説明できる.
・明確な学習目標について,具体的な単元において設定できる.
3.課 題
1.ブルームの教育目標分類について,行動目標による例を取り上げて説明しなさい.
2.ガニェの学習成果の5分類について,具体例を挙げて説明しなさい.
3.明確な学習目標について,具体的な単元において設定しなさい.
4.プレゼン資料
プレゼン
5.動画資料
9-6 教えて考えさせる授業の展開
1.何を学ぶか
小学校理科における児童の映像教材を活用した実験支援方法に関する研究を通じて,“教えて考えさせる授業”の展開について考える.
2.学修到達目標
・“教えて考えさせる授業”について順を追って説明できる.
・”教えて考えさせる授業”への展開について説明できる.
3.課 題
1.多視点映像教材の処理方法について順を追って説明しなさい.
2.多視点映像教材を使った,教えて考えさせる授業への展開について説明しなさい.
3.マルチアングル映像と多視点映像の違いと特徴を説明しなさい.
4.プレゼン資料
プレゼン
5.動画資料
9-7 協働的な学びのデザイン
1.何を学ぶか
人は社会的な関わりの中で学び,柔軟な知識を育てていく.このベースとなる考えを知識の社会的構成主義モデル(三宅,2011)と呼んでいる.これは人がもともと持っている他人との相互作用を通して自分自身の考えを少しずつ向上させる能力を顕在化し,その試みを繰り返すことによって人は社会的に賢くなっていくという考え方 (Palincsar & Brown ,1984; Miyake,N ,1986)について考える.
2.学修到達目標
・協働学習の考え方を理解し実際に授業デザインできる.
・ワークショップの手法を5種類説明できる.
・ジグソー学習について説明できる.
3.課 題
1.協働学習の必要性について具体例を挙げて説明しなさい.
2.知識構成型ジグソー法による指導案を作成しなさい.
3.大学発教育支援コンソーシアム推進機構(CoREF)を参考に,知識構成型ジグソー法の教材を作成しなさい.
4.プレゼン資料
プレゼン
5.動画資料
9-8 「セカンドGIGAへの展望と課題」
堀田龍也氏(東京学芸大学大学院教育学研究科・教授)
動 画
資 料
テキスト
参考
【公開講座】教育リソース・デジタルアーカイブⅠ