【公開講座】AI(人工知能)概論【Ⅱ】 ~ データサイエンスから見える新たな学びの未来像 ~【構築中】
【概要】
本講座は、教育現場においてデータサイエンスの基本的な知識とスキルを身につけ、実践的に活用できるように設計された教材です。データの収集・整理・分析・可視化の基本的な手法から、教育データの具体的な活用例、さらにデータ倫理やプライバシーの重要性まで幅広く解説します。教員が日常の授業や学校運営において、データを効果的に活用し、より良い教育環境を構築するための基礎知識と実践力を養うことを目的としています。データリテラシーの向上により、教育の質の向上や、個別最適化された指導、教育政策の立案にも寄与できる人材育成を目指します。
【学修到達目標】
① データサイエンスの基本的な概念と用語を理解し、説明できる。
② 教育現場で扱うデータの種類や収集方法、整理の基本的な手法を理解し、実践できる。
③ 基本的な統計分析やデータの可視化技術を用いて、教育データから有益な情報を抽出できる。
④ 教育データの活用例や事例を理解し、自校や授業に応用できるアイデアを持てる。
⑤ データの倫理やプライバシーに関する基本的な考え方を理解し、適切に対応できる。
第1講 データサイエンスとは何か
白水 始(国立教育政策研究所 初等中等教育研究部・部長、教育データサイエンスセンター・副センター長)
1.学修到達目標
① データサイエンスの定義と基本的な概念を説明できる。
② データサイエンスが現代社会やさまざまな分野で果たす役割を理解できる。
③ データの収集・分析・可視化の流れと、その重要性を説明できる。
2.内容
現代社会において、データサイエンスはますます重要な役割を果たしています。データサイエンスとは、大量のデータを収集・分析し、その結果から有用な知見や意思決定の材料を導き出す学問・技術の総称です。情報化社会の進展に伴い、さまざまな分野でデータの重要性が高まる中、データサイエンスはビジネス、医療、教育、公共政策など、多岐にわたる領域で活用されています。
この分野の基本的な流れは、まずデータの収集から始まります。インターネットやセンサー、アンケート調査など、多様な手法でデータを集め、その後、ノイズや欠損値を取り除く前処理を行います。次に、統計学や機械学習の手法を用いてデータを分析し、パターンや傾向を抽出します。最後に、分析結果をわかりやすく伝えるために、グラフやチャートを用いた可視化を行います。
データサイエンスの意義は、単なるデータの収集や分析にとどまらず、現実の問題解決や意思決定の質を向上させる点にあります。例えば、企業は顧客の購買行動を分析してマーケティング戦略を最適化したり、医療分野では患者の診断や治療計画に役立てたりしています。こうした活動を支えるためには、データの取り扱いに関する倫理やプライバシー保護も重要な課題となっています。
また、データサイエンスは単なる技術だけでなく、問題設定や解釈力も求められる学問です。
3.課題
① データサイエンスの定義や役割について、複数の資料や文献を比較しながら、自分の言葉で説明できるようにすること。
② データサイエンスの各工程(データ収集、前処理、分析、可視化)の具体的な例を挙げ、それぞれの重要性と役割を理解し、説明できるようにすること。
③ データサイエンスの技術や用語について、専門的な内容を理解しながらも、初心者にもわかりやすく説明できるように、基本的な概念や用語の整理を行うこと。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第2講 データの種類と収集方法(仮題)
尾関 智恵(岐阜大学 高等研究院 航空宇宙生産技術開発センター・准教授)
1.学修到達目標
① さまざまな種類のデータ(定量データ、定性データ、時系列データなど)を理解し、それぞれの特徴や適した分析方法について説明できる。
② データの収集方法(観察、アンケート、実験など)を理解し、具体的な場面に応じた適切な収集手法を選択できる。
③ データの種類と収集方法の違いを理解し、実際の教育現場や調査活動において適切なデータ収集計画を立てることができる。
2.内容
データサイエンスを学ぶ上で、最も基本的かつ重要な知識は、「どのような種類のデータが存在し、それらをどのように収集するか」という点です。これらの理解は、教育現場や調査活動において適切なデータを収集し、正確な分析を行うための土台となります。
まず、データには大きく分けて「定量データ」と「定性データ」の二つがあります。定量データは数値で表されるもので、計測や計算が可能です。例えば、生徒の身長、体重、テストの点数、授業時間などが該当します。これらは平均値や標準偏差といった統計的手法を用いて分析しやすく、比較や傾向の把握に適しています。
一方、定性データは属性やカテゴリーを表すもので、数値ではなく分類や属性を示します。例えば、生徒の性別、好きな教科、出席状況、評価(良い・普通・悪い)などが含まれます。これらはクロス集計や比率の計算により、パターンや傾向を見つけるのに役立ちます。
また、データはその性質に応じてさらに細かく分類されることがあります。離散データは、数えられるもので、例としてクラスの人数や参加者数があります。連続データは、任意の範囲の値を取ることができ、気温や時間、身長などが該当します。時系列データは、時間の経過とともに変化するデータであり、気温の推移や株価の動きなどが例です。
1.データの収集方法
データの種類に応じて適切な収集方法を選択することが重要です。代表的な方法には以下のものがあります。
(1)観察法
観察法は、自然な状態や行動をそのまま記録する方法です。例えば、授業中の生徒の様子や、校内の活動の様子を記録する際に用います。観察は、客観的なデータを得るのに適しており、特に行動や態度の記録に有効です。ただし、観察者の主観や偏りに注意が必要です。
(2)アンケート調査
アンケートは、多くの人から意見や情報を収集するのに適した方法です。紙やオンラインフォームを用いて、質問項目を作成し、生徒や保護者、教員に回答してもらいます。定量的なデータ(例:満足度の点数)や定性的な意見(例:改善点の提案)を収集できます。設問の設計や回答の集計・分析がポイントです。
(3)実験・試験
特定の条件を設定し、その結果を測定する方法です。例えば、新しい指導法の効果を検証するために、一定期間実施し、その前後の成績や態度の変化を比較します。実験は因果関係を明らかにするのに有効ですが、倫理的配慮や実施の難しさも伴います。
(4)既存資料の活用
学校の成績記録や出席簿、調査報告書など、すでに存在する資料を利用する方法です。これにより、コストや時間を節約しながら、多くのデータを収集できます。ただし、データの正確性や最新性に注意が必要です。
教員がデータサイエンスの基礎を理解し、実践できるようになるためには、まずデータの種類とそれに適した収集方法を正しく理解することが不可欠です。定量データと定性データの違いを把握し、それぞれの特徴に応じた収集手法を選択することが、正確なデータ分析の第一歩です。観察法やアンケート調査、実験、既存資料の活用など、多様な収集方法を状況に応じて使い分ける能力を養うことが求められます。さらに、データの収集にあたっては、倫理的配慮やプライバシーの保護も重要です。例えば、個人情報を扱う場合は適切な管理と同意取得が必要です。
教員がデータサイエンスの基礎をしっかりと身につけることで、教育現場におけるさまざまな課題解決に役立てることが期待されます。例えば、学習状況の把握や授業の改善、児童・生徒の個別支援、学校運営の効率化など、多岐にわたる場面でデータを活用できるようになります。これにより、より客観的で根拠に基づく意思決定が可能となり、教育の質の向上につながります。さらに、データの収集と分析のスキルは、ICT教育やプログラミング教育とも連携しやすく、未来の教育環境においてますます重要性を増すでしょう。
したがって、教員は日常の教育活動の中で積極的にデータを取り入れ、継続的に学び続ける姿勢が求められます。最後に、データサイエンスは単なる技術や知識の習得だけでなく、教育の現場での実践と連携させることが最も重要です。これからの教育者は、データを活用した新しい教育のあり方を模索し、子どもたちのより良い未来を築くための一助となることを目指しましょう。
3.課題
① 次のデータの種類を分類し、それぞれの特徴と適した分析例を述べなさい。
a) 生徒の身長の測定値
b) 生徒の好きな教科(国語、数学、英語など)
c) 1週間の気温の変化(時系列データ)
② 以下の状況に適したデータ収集方法を選び、その理由を説明しなさい。
a) 学校の授業改善のために生徒の意見を集めたい。
b) 校内の運動会の参加者数を正確に把握したい。
c) 地域の気候変動を長期的に観察したい。
③ 阿なたが教員として、クラスの学習状況を把握するためのデータ収集計画を立てるとします。どのようなデータを収集し、どの方法で行うかを具体的に記述しなさい。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第3講 データの前処理とクリーニング
笹山和明(株式会社 村田製作所・クオリティシニアエンジニア)
1.学修到達目標
① データ前処理とクリーニングの基本的な目的と重要性を理解できる。
② 欠損値や異常値の検出と適切な処理方法を説明できる。
③ データの整形や正規化の手法を理解し、実際に適用できる。
2.内容
データサイエンスにおいて、収集した生データはそのままでは分析に適さない場合が多く、前処理とクリーニングは非常に重要な工程です。これらの工程は、データの品質を向上させ、正確な分析結果を得るための基礎となります。
まず、前処理の目的は、データの欠損や誤りを修正し、分析に適した形に整えることです。生データには、入力ミスや測定エラー、欠損値、異常値などが含まれることが多く、これらを適切に処理しないと、分析結果に偏りや誤りが生じる可能性があります。
次に、欠損値の処理についてです。欠損値は、回答漏れや測定不能な場合に生じます。これを放置すると、統計解析や機械学習モデルの性能に悪影響を及ぼすため、適切な対応が必要です。一般的な方法としては、欠損値を持つデータを除外する、平均値や中央値で埋める、または予測モデルを用いて推定する方法があります。
1.異常値(アウトライアー)の検出と処理
異常値は、他のデータと著しく異なる値であり、分析結果に大きな影響を与えることがあります。これらを検出する方法には、箱ひげ図や標準偏差を用いた方法があります。検出後は、誤ったデータとして除外したり、適切な値に置き換えたりします。異常値の適切な処理は、分析の信頼性を高めるために不可欠です。
2.データの整形と正規化
データの整形には、データの型変換や不要な情報の削除、カテゴリーデータのエンコーディングなどが含まれます。これにより、分析やモデル構築がスムーズに行えます。また、正規化や標準化は、異なる尺度のデータを比較可能にし、機械学習モデルの性能向上に寄与します。例えば、最小-最大スケーリングやZスコア正規化が一般的です。これらの処理を適切に行うことで、データの一貫性と分析の精度が向上します。
3.課題
① 欠損値が含まれるデータセットに対して、どのような処理方法が考えられるか説明してください。
② 異常値を検出するための方法を2つ挙げ、それぞれの特徴を説明してください。
③ データの正規化と標準化の違いについて説明し、それぞれのメリットを述べてください。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第4講 データの可視化と探索的データ分析(EDA)(仮題)
1.学修到達目標
① データの可視化の目的と基本的な手法を理解し、適切に選択・実施できる。
② 探索的データ分析(EDA)の意義と基本的な流れを説明できる。
③ 可視化ツールやグラフの種類を理解し、データの特徴や傾向を効果的に把握できる。
2.内容
データの可視化と探索的データ分析(EDA)は、データ分析の最初の段階で非常に重要な工程です。これらの手法を通じて、データの全体像や潜在的なパターン、異常値、関係性を直感的に理解し、次の分析やモデル構築に役立てます。
まず、可視化の目的は、数値やカテゴリーデータの分布や関係性を視覚的に把握し、データの特徴や傾向を理解することです。グラフや図表を用いることで、数値だけでは見えにくいパターンや異常を発見しやすくなります。代表的な可視化手法には、ヒストグラム、棒グラフ、箱ひげ図、散布図、折れ線グラフなどがあります。例えば、学校の成績分布をヒストグラムで示すことで、平均や偏り、極端な値(アウトライアー)を把握できます。
次に、EDAの過程では、まずデータの基本的な統計量を計算し、データの中心傾向やばらつき、分布の形状を把握します。例えば、平均値や中央値、最小値・最大値、四分位範囲などを確認します。これにより、データの偏りや異常値の存在を見つけやすくなります。
次に、可視化を用いてデータの分布や関係性を直感的に理解します。ヒストグラムや箱ひげ図は、データの分布や外れ値の検出に有効です。散布図は、二つの変数間の関係性や相関を視覚的に示すのに適しています。カテゴリーデータの場合は、棒グラフや円グラフを用いて、各カテゴリーの割合や頻度を把握します。
また、多変量の関係性を理解するために、相関係数や散布図行列を作成します。これにより、変数間の相関の強さやパターンを把握し、後の分析やモデル選択に役立てます。さらに、欠損値や異常値の検出も重要なステップです。欠損値は適切に処理し、異常値は除外または修正します。
EDAの最終目的は、データの性質や構造を深く理解し、次の分析段階に進むための準備を整えることです。これにより、分析の精度向上や誤った結論の回避が可能となります。
3.課題
① ヒストグラムと箱ひげ図の違いと、それぞれの特徴について説明してください。
② 散布図を用いた探索的データ分析の際に、どのような情報を得ることができるか具体例を挙げて説明してください。
③ 探索的データ分析の過程で欠損値や異常値を発見した場合、どのような対応策が考えられるか、具体的な方法を挙げて説明してください。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第5講 統計学の基礎(仮題)
尾関 智恵(岐阜大学 高等研究院 航空宇宙生産技術開発センター・准教授)
1.学修到達目標
① 基本的な統計量(平均値、中央値、最頻値、分散、標準偏差など)の意味と計算方法を理解し、適切に使い分けられる。
② データの分布や傾向を表すための代表的な統計的手法(ヒストグラム、箱ひげ図など)を理解し、実際に作成・解釈できる。
③ 確率の基本概念と、その応用例を理解し、日常や教育現場でのデータ解釈に役立てられる。
2.内容
統計学は、データを収集・整理・分析し、そこから意味のある情報を引き出す学問です。教員が教育や調査の場面でデータを理解し、適切な判断を下すために不可欠な基礎知識です。
まず、記述統計の基本的な概念として、データの中心や散らばりを表す統計量があります。代表的なものには、**平均値(算術平均)**があります。これは、データの合計をデータ数で割った値で、データの一般的な傾向を示します。一方、中央値は、データを小さい順に並べたときの中央の値で、外れ値に影響されにくい特徴があります。
最頻値(モード)は、最も頻繁に出現する値で、カテゴリーデータや離散データの代表値として用いられます。
次に、データの散らばりやばらつきを表す指標として、分散と標準偏差があります。分散は、各データと平均値との差の二乗平均であり、データのばらつきの大きさを示します。
また、データの分布や偏りを理解するために、ヒストグラムや箱ひげ図といった可視化手法が用いられます。ヒストグラムは、データを一定の範囲(ビン)に分け、その範囲内のデータ数を棒グラフで表すもので、データの分布の形状や偏り、外れ値の有無を直感的に把握できます。一方、箱ひげ図は、データの最小値、第一四分位数(Q1)、中央値(Q2)、第三四分位数(Q3)、最大値を箱とひげで表し、データの散らばりや偏り、外れ値を一目で理解できる便利な図です。
次に、確率の基本概念についても理解が必要です。確率は、ある事象が起こる可能性を数値で表したもので、0から1の範囲で示されます。例えば、コインを投げたときに表が出る確率は0.5です。確率の基本的なルールには、「排反事象の確率の和は、それぞれの確率の和に等しい」「独立事象の同時確率は、それぞれの確率の積に等しい」などがあります。これらのルールは、教育現場や調査結果の解釈においても重要です。
最後に、これらの統計的手法や確率の知識は、データの正しい解釈や意思決定に役立ちます。例えば、テストの平均点や偏差値を理解し、偏りや異常値を見つけること、また、調査結果の確率的な解釈を行うことは、教育の質向上や改善策の立案に直結します。
3.課題
① データの平均値、中央値、最頻値の違いと、それぞれの特徴について説明してください。
② 以下のデータセット(例:5, 7, 8, 8, 9, 10, 12)について、分散と標準偏差を計算し、その意味を説明してください。
③ コインを10回投げたときに表が出る確率は0.5です。このとき、実際に表が7回以上出る確率について二項分布を用いて計算し、その結果から何がわかるか説明してください。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第6講 機械学習の基本概念(仮題)
澤井進(岐阜女子大学・特任教授)
1.学修到達目標
① 機械学習の基本的な仕組みと種類(教師あり学習、教師なし学習、強化学習)を理解し、それぞれの特徴と適用例を説明できる。
② モデルの学習過程(訓練、検証、テストの流れ)と、その目的や重要性を理解し、適切なモデル評価指標(正確率、精度、再現率など)を選択できる。
③ 過学習やバイアス・バリアンスのトレードオフについて理解し、モデルの汎化性能を向上させるための基本的な対策を説明できる。
2.内容
機械学習は、コンピュータに大量のデータを与え、そのパターンや規則性を自動的に学習させる技術です。これにより、従来のプログラムでは難しかった予測や分類、異常検知などのタスクを自動化できます。機械学習は大きく分けて三つの種類に分類されます。
まず、「教師あり学習」は、入力データとそれに対応する正解(ラベル)が与えられ、その関係性を学習します。例えば、学生の成績データから合格・不合格を予測するモデルや、画像から猫・犬を分類するモデルがこれに該当します。学習の過程では、モデルは入力と正解の関係を捉え、未知のデータに対しても正確に予測できるように調整されます。
次に、「教師なし学習」は、正解ラベルなしでデータの構造やパターンを見つけ出す手法です。
最後に、「強化学習」は、エージェントが環境と相互作用しながら、報酬を最大化する行動を学習する手法です。例えば、ゲームのプレイやロボットの動作制御に応用されます。エージェントは、行動を選択し、その結果得られる報酬をもとに次の行動を改善していきます。これにより、長期的な利益を最大化する戦略を自動的に獲得します。
モデルの学習過程では、データを用いてモデルのパラメータを調整し、予測や分類の精度を高めていきます。モデルの評価には、正解率や精度、再現率、F値などの指標が用いられます。これらの指標は、モデルの性能や汎化能力を測るために重要です。
しかし、モデルには過学習やバイアス・バリアンスの問題も存在します。過学習は、訓練データに過度に適合しすぎて、新しいデータに対して性能が低下する現象です。これを防ぐためには、データの増加や正則化、交差検証などの手法が用いられます。また、バイアスとバリアンスのトレードオフを理解し、適切なモデル選択やハイパーパラメータ調整を行うことが、良い汎化性能を持つモデルを作るための基本です。
このように、機械学習はデータからパターンを抽出し、予測や意思決定を自動化する強力な技術です。教育や医療、金融など多くの分野で活用されており、今後もその重要性は増していくと考えられます。
3.課題
① 機械学習の三つの主要な種類(教師あり学習、教師なし学習、強化学習)について、それぞれの特徴と代表的な応用例を説明してください。
② 過学習とは何かを説明し、過学習を防ぐための一般的な方法を2つ挙げてください。
① 機械学習モデルの評価指標にはさまざまなものがありますが、正解率(Accuracy)と再現率(Recall)の違いについて具体的な例を用いて説明してください。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第7講 回帰分析と分類モデル
笹山和明(株式会社 村田製作所・クオリティシニアエンジニア)
1.学修到達目標
① 回帰分析と分類モデルの基本的な概念と違いを理解し、適切な場面で使い分けられるようになる。
② 回帰分析における代表的な手法(例:線形回帰)の仕組みと、その結果の解釈方法を説明できる。
③ 分類モデル(例:ロジスティック回帰や決定木)の仕組みと、その評価指標(例:正解率、再現率)について理解し、モデルの性能を適切に評価できるようになる。
2.内容
回帰分析と分類モデルは、データサイエンスにおいて最も基本的かつ重要な予測手法です。これらは、データからパターンを抽出し、未知のデータに対して予測を行うためのモデルです。
回帰分析は、連続値の予測を目的とします。例えば、住宅の価格予測、気温の予測、売上高の予測などが典型的な例です。最も基本的な回帰手法は線形回帰です。線形回帰は、説明変数(特徴量)と目的変数(予測したい値)との間に線形関係があると仮定し、最小二乗法を用いてパラメータを推定します。モデルの式は、目的変数が説明変数の線形結合として表され、例えば「価格 = a × 面積 + b」といった形になります。回帰分析の結果からは、各説明変数の影響度や、予測値の範囲を理解することができます。
一方、分類モデルは、データをあらかじめ定められたカテゴリーに分類することを目的とします。
分類モデルにはさまざまな手法がありますが、代表的なものにロジスティック回帰や決定木があります。ロジスティック回帰は、線形回帰と似ていますが、出力を確率値(0から1の範囲)に変換するシグモイド関数を用います。これにより、あるデータが特定のクラスに属する確率を推定し、その確率に基づいてクラスを判定します。例えば、「このメールはスパムか?」という問いに対し、70%の確率でスパムと判定された場合、その結果をもとに分類します。
決定木は、特徴量の値に基づいてデータを分岐させていく木構造のモデルです。分岐の基準は情報利得やジニ不純度などの指標を用いて決定され、最終的に葉に到達したときにクラスを決定します。決定木は直感的に理解しやすく、特徴量の重要性も把握しやすいのが特徴です。
これらのモデルの性能評価には、正解率(Accuracy)だけでなく、再現率(Recall)、適合率(Precision)、F値なども用いられます。例えば、医療診断の場面では、見逃しを防ぐために再現率を重視することがあります。一方、スパムメール判定では、誤って正当なメールをスパムと判定しないことも重要であり、そのために適合率やF値を考慮します。
回帰分析と分類モデルは、どちらもデータの性質や目的に応じて適切に選択し、モデルの性能を評価・改善することが求められます。これらの理解は、実際のデータ分析や予測モデルの構築において不可欠です。
3.課題
① 回帰分析と分類モデルの違いについて示してください。
② 回帰分析において線形回帰モデルを用いる場合、どのようにしてモデルのパラメータ(係数)を推定しますか?また、その推定結果の解釈について説明してください。
③ 分類モデルの評価指標の一つであるF値(F1スコア)について、その意味と計算方法を具体的に説明し、なぜこの指標が重要となる場合があるのか例を挙げて説明してください。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第8講 クラスタリングと次元削減
小松尚登(滋賀大学・データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター・助教)
1.学修到達目標
① クラスタリングの基本概念と代表的な手法を理解し、適切な場面での適用方法を説明できる。
② 次元削減の目的と代表的な手法(主成分分析(PCA)など)を理解し、データの可視化や前処理に役立てられる。
③ クラスタリングと次元削減の違いや関係性を理解し、実データ分析においてこれらの手法を適切に選択・適用できる。
2.内容
クラスタリングと次元削減は、データサイエンスにおいて重要な前処理・分析手法です。まず、クラスタリングは、データを類似性に基づいて複数のグループ(クラスタ)に分ける手法です。教師なし学習の一種であり、事前にラベル付けされた情報がなくても、データの構造やパターンを把握するのに役立ちます。代表的なクラスタリング手法には、k-means法や階層的クラスタリングがあります。k-meansは、事前にクラスタ数を決め、その数だけ中心点(クラスタ中心)を設定し、データ点を最も近い中心に割り当てることでクラスタを形成します。一方、階層的クラスタリングは、データ間の距離に基づき、階層的にクラスタを結合または分割していきます。クラスタリングは、市場セグメントの特定、画像の分類、異常検知など多岐にわたる応用があります。
次に、次元削減は、多次元のデータをより少ない次元に変換し、データの本質的な情報を保持しつつ、可視化や計算効率の向上を目的とします。代表的な手法は主成分分析(PCA)です。PCAは、データの分散を最大化する方向(主成分を見つけ出し、その方向にデータを射影することで次元を削減します。これにより、データの構造やパターンを理解しやすくなり、ノイズの除去や計算コストの削減にも寄与します。その他の次元削減手法には、t-SNEやUMAPなどの非線形手法もあり、これらは高次元データの複雑な構造を低次元に効果的に可視化するのに適しています。
クラスタリングと次元削減は、しばしば併用されることがあります。例えば、多次元のデータに対してまず次元削減を行い、その後クラスタリングを適用することで、計算負荷を軽減し、より明確なクラスタ構造を抽出できる場合があります。これらの手法を適切に選択・組み合わせることは、データの理解と分析の質を高める上で重要です。
ただし、次元削減は情報の一部を失うリスクも伴うため、目的に応じて適切な手法と次元数を選ぶ必要があります。クラスタリングと次元削減は、データの構造理解や可視化、前処理の一環として、データサイエンスの基礎的な技術として広く利用されています。これらの手法を理解し、適切に適用できることは、データ分析のスキル向上に直結します。
3.課題
① クラスタリングの代表的な手法を2つ挙げ、それぞれの特徴と適用例について説明してください。
② 主成分分析(PCA)の基本的な仕組みと、その結果得られる主成分の意味について説明してください。さらに、PCAを用いる際の注意点も述べてください。
③ 高次元データに対して次元削減を行う目的と、その際に考慮すべきポイントについて具体的に説明してください。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第9講 データサイエンスにおけるプログラミング基礎(仮題)
小松尚登(滋賀大学・データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター・助教)
1.学修到達目標
① プログラミングの基本的な概念と構文を理解し、データ処理や分析に必要な基本操作を実行できる。
② 代表的なプログラミング言語(例:Python)の基本的な文法とライブラリの使い方を習得し、簡単なデータ分析プログラムを作成できる。
③ データの読み込み、加工、可視化といった基本的なプログラミングスキルを身につけ、データサイエンスの基礎的な作業を自律的に行える。
2.内容
データサイエンスの基礎を理解するためには、プログラミングの基礎知識が不可欠です。プログラミングは、データの収集、前処理、分析、可視化といった一連の作業を自動化し、効率的に行うためのツールです。特に、Pythonはそのシンプルさと豊富なライブラリ群により、データサイエンスの分野で広く採用されています。
まず、プログラミングの基本的な概念として、変数、データ型(数値、文字列、リスト、辞書など)、演算子、制御構造(if文、ループ)、関数の定義と呼び出しがあります。これらは、プログラムの基本的な構成要素であり、データの操作や処理の土台となります。
次に、Pythonの基本的な文法について理解します。例えば、変数への値の代入、条件分岐、繰り返し処理、関数の作成と呼び出し方です。これらを習得することで、簡単なプログラムが作成できます。
プログラミングにおいては、データの入出力も重要です。Pythonでは、pandasやnumpyといったライブラリを用いることで、CSVやExcelファイルなどのデータを簡単に読み込み、データフレームや配列として扱うことができます。これにより、大量のデータを効率的に処理できるようになります。
次に、データの前処理もプログラミングの重要な側面です。欠損値の処理、データの正規化や標準化、カテゴリ変数のエンコーディングなどを行います。これらの操作は、pandasやscikit-learnといったライブラリを使うことで、比較的容易に実現できます。
また、データの可視化もプログラミングスキルの一環です。matplotlibやseabornといったライブラリを用いて、散布図、ヒストグラム、箱ひげ図などを作成し、データの分布や関係性を視覚的に理解します。
最後に、プログラミングの学習には、実際に手を動かしてコードを書きながら理解を深めることが重要です。簡単なデータ分析の例題を自分で解いてみることで、理論だけでなく実践的なスキルも身につきます。
3.課題
① Pythonを用いて、リストに格納された数値データの平均値と中央値を計算するプログラムを作成してください。
② pandasライブラリを使って、CSVファイルからデータを読み込み、特定の列の欠損値を平均値で埋める処理を行うコードを書いてください。
③ matplotlibやseabornを用いて、データの散布図とヒストグラムを作成し、データの分布や関係性を視覚的に表現してください。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第10講 学力調査と分析(仮題)
山川喜葉(埼玉県教育局市町村支援部・義務教育指導課長)
1.学修到達目標
① 全国学力・学習状況調査や校内テストなど、様々な学力調査データの種類と特性を理解し、表計算ソフト等を用いて適切に整理できる。
② 平均値や標準偏差といった基本的な統計量を算出・解釈し、ヒストグラムや箱ひげ図などを用いてデータ分布を視覚的に表現・分析できる。
③ 正答率や識別指数(学力層をどの程度見分けられるかを示す指標)といった古典的テスト理論の初歩を理解し、個々の問題の質を評価・分析できる。
④ データ分析の結果から、クラス全体の傾向や個々の児童生徒のつまずきの原因を科学的に考察し、指導改善や個別最適な学びの支援に繋がる具体的な示唆を導き出せる。
2.内容
学力調査データの種類と構造
全国学力・学習状況調査、CBT(Computer Based Testing)形式のテスト、教員作成の小テストなど、多様なデータの形式と、それらが持つ情報の特性について学びます。
記述統計とデータの可視化
平均値、中央値、標準偏差などの基本的な統計量の算出方法とその意味を学びます。さらに、度数分布表やヒストグラムを作成し、クラス全体の得点分布のばらつきや傾向を把握する手法を習得します。これにより、「平均点」だけでは見えない学力の実態を捉えます。
テスト問題の分析手法
個々の設問について、正答率を算出し、難易度を評価します。加えて、成績上位層と下位層で正答率にどれだけ差があるかを示す「識別指数」を計算し、学力差を測る上で良問であったかを分析します。また、誤答の傾向を分析し、児童生徒がどのような点でつまずいているのかを探ります。
関係性の探求
学習時間と成績、アンケート項目(例:自己肯定感)と学力の関係など、2つのデータの関係性を分析するために散布図を作成し、相関の有無を視覚的に捉えます。その際、相関関係と因果関係の違いを明確に理解し、安易な結論に飛びつかない科学的な思考態度を養います。
分析結果の教育実践への応用
分析によって得られた客観的なデータに基づき、具体的な授業改善プランや、個々の児童生徒への声かけ・支援計画を立案します。また、保護者面談等で児童生徒の学習状況を客観的かつ分かりやすく説明するための資料作成にも活用します。これらの活動を通して、データに基づいた教育実践(Evidence-Based Education)のサイクルを体験的に学びます。
す。
3.課題
① あなたは、あるクラスの担任です。先日実施した理科の単元テスト(50点満点)の結果がまとまりました。まずはクラス全体の学力状況を客観的に把握し、夏休み前の補習など、今後の指導方針を検討してください。
② クラス全体の平均点は悪くないものの、特定の問題で多くの生徒が間違えていることが気になりました。そこで、設問ごとの正答状況を詳しく分析し、生徒たちの「つまずき」の具体的な原因を探りましょう。
③ テストを重ねる中で、「この問題は、本当に学力を正しく測れているだろうか?」という疑問が湧きました。特に、ある問題は、勉強を頑張っている生徒も、そうでない生徒も、同じように間違えているように感じます。そこで、問題が学力差を適切に反映しているかを評価してください。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第11講 データの倫理とプライバシー(仮題)
芳賀高洋(岐阜聖徳学園大学・教授)
1.学修到達目標
① データの倫理的取り扱いの重要性と基本的な原則を理解し、説明できる。
② 個人情報保護のためのプライバシー保護技術や法規制(例:個人情報保護法、GDPR)について理解し、適切に適用できる。
③ データの倫理的課題やプライバシー侵害のリスクを認識し、その対策や責任あるデータ活用の方法について議論できる。
2.内容
データサイエンスの発展に伴い、個人情報やセンシティブなデータを扱う機会が増えています。これに伴い、データの倫理的取り扱いやプライバシー保護の重要性が高まっています。まず、データの倫理とは、データを収集・利用・公開する際に、個人の権利や尊厳を尊重し、公正かつ責任ある行動を取ることを指します。倫理的なデータ活用には、本人の同意を得ること、目的外利用を避けること、データの正確性を保つことなどが基本原則として挙げられます。これらの原則を守ることは、信頼性の確保や社会的信用の維持に不可欠です。次に、プライバシー保護は、個人情報が不適切に漏洩したり、不正に利用されたりするリスクを低減するための技術や法規制を指します。代表的な法規制には、日本の個人情報保護法やEUのGDPR(一般データ保護規則)があります。
これらの法規制は、個人情報の収集・保存・利用に関するルールを定め、違反した場合の罰則や責任を明確にしています。具体的な保護技術としては、データの匿名化や仮名化、暗号化、アクセス制御、監査ログの管理などがあります。これらの技術は、個人を特定できる情報を隠すことで、プライバシー侵害のリスクを低減します。さらに、データの倫理的取り扱いには、透明性や説明責任も求められます。たとえば、データ収集の目的や利用範囲を明示し、本人の同意を得ること、データの利用状況や結果について説明責任を果たすことが重要です。加えて、データの不適切な利用や偏りによる差別や不公平の発生も倫理的課題です。これらを防ぐためには、倫理的ガイドラインや監査体制の整備が必要です。最後に、データの倫理とプライバシー保護は、単なる技術的対策だけでなく、組織や個人の意識改革も求められます。教育や啓発活動を通じて、責任あるデータ活用の文化を育むことが重要です。これらの取り組みは、信頼されるデータ社会の実現に不可欠です。教員としては、学生に対してこれらの倫理的原則や法規制、技術的対策を理解させ、実践的な判断力を養う指導が求められます。
3.課題
① データの倫理的取り扱いにおいて重要な原則を3つ挙げ、それぞれについて具体例を交えて説明してください。
② 個人情報保護法やGDPRなどの法規制が求める、個人情報の取り扱いに関する基本的なルールを説明し、それらを遵守するための具体的な対策例を挙げてください。
③ データのプライバシー保護において、匿名化や暗号化などの技術の役割と、それらを適切に活用する際の注意点について述べてください。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第12講 データサイエンスの実践的応用例(仮題)
成瀬喜則(富山大学・名誉教授・学長特命補佐)
1.学修到達目標
① データサイエンスの具体的な応用例を理解し、説明できる。
② 各応用例において、どのようなデータ分析手法や技術が用いられるかを理解し、説明できる。
③ 実社会や教育現場において、データサイエンスを活用した課題解決の事例を挙げ、応用の可能性を議論できる。
2.内容
データサイエンスは、多様な分野で実践的に応用されており、その具体例は私たちの生活や社会のさまざまな側面に影響を与えています。まず、医療分野では、患者の診断データや遺伝情報を解析し、個別化医療や早期発見に役立てられています。例えば、機械学習を用いた画像診断では、X線やMRI画像から疾患の兆候を自動的に検出し、医師の診断支援を行います。
次に、マーケティング分野では、顧客の購買履歴やウェブ行動データを分析し、ターゲット広告やパーソナライズされた商品推薦を実現しています。これにより、企業は効率的なマーケティング戦略を立て、売上向上を図っています。例えば、オンラインショッピングサイトでは、過去の閲覧履歴や購入履歴をもとに、個々の顧客に最適な商品を提案しています。
教育分野では、学習者の成績や行動データを分析することで、学習の進捗や理解度を把握し、個別指導や教材の最適化に役立てられています。例えば、学習管理システム(LMS)を用いて、学生の解答パターンや学習時間を分析し、苦手分野を特定したり、適切な学習コンテンツを推奨したりすることが可能です。
また、都市計画や交通管理の分野でも、ビッグデータと分析技術が活用されています。交通量データや気象情報を解析し、渋滞の予測や最適な交通ルートの提案、公共交通機関の運行計画の改善に役立てられています。これにより、都市の効率的な運営や環境負荷の軽減が期待されています。
さらに、環境保護や気候変動の研究においても、衛星画像や気象データの解析が重要です。地球規模の気候変動のパターンを把握し、適切な対策を立てるために、データサイエンスは不可欠なツールとなっています。
これらの応用例からわかるように、データサイエンスは多岐にわたる分野で実践的に利用されており、社会のさまざまな課題解決に貢献しています。教育現場においても、データを活用した個別指導や学習支援の最適化は、今後ますます重要になると考えられます。教員や教育関係者は、これらの応用例を理解し、自らの教育活動にどう取り入れるかを考えることが求められます。
3.課題
① 医療分野において、画像診断に機械学習を用いることのメリットとデメリットをそれぞれ述べなさい。
② マーケティング分野でのデータサイエンスの応用例として、オンラインショッピングサイトでの顧客への商品推薦があります。これにおいて、どのようなデータが収集され、どのような分析手法が用いられるのかを説明しなさい。
③ 教育分野において、学習者のデータを分析して学習支援を行うことの意義と、その際に注意すべき点について述べなさい。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第13講 データ可視化の高度な技術(仮題)
1.学修到達目標
① 高度なデータ可視化技術の種類と特徴を理解し、適切に選択・活用できる。
② インタラクティブな可視化ツールやダッシュボードの作成方法を理解し、実践できる。
③ 複雑なデータ構造や多次元データを効果的に可視化し、洞察を得るための工夫や技術を説明できる。
2.内容
データ可視化は、データの理解と伝達を促進するための重要な手法です。基本的なグラフやチャートだけでなく、より高度な技術を駆使することで、複雑なデータや多次元データから深い洞察を得ることが可能となります。
まず、インタラクティブな可視化は、ユーザーがデータの特定部分に焦点を当てたり、フィルタリングやズームを行ったりできる技術です。これにより、静的なグラフでは捉えきれない詳細情報を動的に探索できます。例えば、Webベースのダッシュボードやツール(TableauやPower BI、D3.jsなど)を用いて、ユーザーが操作できる可視化を作成します。
次に、多次元データの可視化は、複数の変数を同時に表現し、関係性やパターンを明らかにします。代表的な手法には、散布図行列(pair plot)や主成分分析(PCA)による次元削減後の散布図があります。
また、ヒートマップやサンキー図などの特殊な可視化手法も、多次元データや複雑な関係性を表現するのに有効です。ヒートマップは、色の濃淡を用いてデータの密度や相関関係を視覚的に示し、サンキー図はフローや因果関係を表現するのに適しています。
さらに、時系列データの高度な可視化も重要です。単純な折れ線グラフだけでなく、アニメーションやインタラクティブなタイムラインを用いることで、時間の経過とともに変化するデータのパターンやトレンドを直感的に理解できます。これにより、季節変動や長期的な傾向を把握しやすくなります。
また、3D可視化や空間データの可視化も高度な技術の一つです。地理情報システム(GIS)を用いた地図上のデータ表示や、3Dモデルを用いたデータの可視化は、場所や空間的関係性を理解するのに役立ちます。ただし、3D表示は情報過多になりやすいため、適切な工夫と注意が必要です。
最後に、可視化の自動化とプログラムによるカスタマイズも重要です。PythonのMatplotlibやSeaborn、Plotly、Rのggplot2やShinyなどのツールを用いて、複雑なデータセットに対して効率的に高度な可視化を作成し、必要に応じて自動化やカスタマイズを行う技術も習得すべきです。
これらの高度な可視化技術を駆使することで、単なるデータの見た目の良さだけでなく、深い洞察や伝達力のある資料作成が可能となります。
3.課題
① 多次元データの関係性を視覚的に理解するために適した可視化手法を2つ挙げ、それぞれの特徴と適用例を説明してください。
② インタラクティブなダッシュボードを作成する際に用いられる代表的なツールを2つ挙げ、それぞれの特徴と利点を述べてください。
③ 機械学習の次元削減手法(例:t-SNEやUMAP)を用いた可視化の目的と、その結果から得られる洞察について説明してください。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第14講 AIと深層学習の基礎と応用(仮題)
藤吉弘亘(中部大学AI数理データサイエンスセンター教授)
1.学修到達目標
① AIと深層学習の基本的な概念と仕組みを理解し、その違いと関係性を説明できる。
② 深層学習の代表的なモデル(例:ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、リカレントニューラルネットワーク)の構造と特徴を理解し、適用例を説明できる。
③ 深層学習の応用分野とその課題・限界について理解し、実社会における具体的な事例を挙げて説明できる。
2.内容
人工知能(AI)は、人間の知的活動を模倣し、学習・推論・判断などを行う技術の総称です。AIにはさまざまなアプローチがありますが、その中でも特に注目されているのが深層学習(ディープラーニング)です。深層学習は、多層のニューラルネットワークを用いて、大量のデータから特徴を自動的に抽出し、高度なパターン認識を可能にします。
AIの歴史は1950年代にさかのぼりますが、従来の機械学習は特徴量の設計や抽出に人間の知識が必要でした。一方、深層学習は、画像認識や音声認識、自然言語処理などの分野で大きな成功を収めており、膨大なデータと計算資源を活用して、従来の手法を凌駕する性能を発揮しています。
深層学習の基本的なモデルは、ニューラルネットワークです。これは、人間の神経細胞(ニューロン)を模した構造で、入力層・隠れ層・出力層から構成されます。各層のニューロンは、前の層からの入力を重み付けし、非線形関数(活性化関数)を通じて次の層に伝達します。多層にわたるこの構造により、複雑なパターンや特徴を抽出できるのです。特に、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は画像認識に優れ、画像の局所的な特徴を捉えることに長けています。リカレントニューラルネットワーク(RNN)は、時系列データや自然言語処理に適しており、過去の情報を保持しながら処理を行います。
深層学習の応用範囲は広く、画像認識(顔認証、医療画像診断)、音声認識(音声アシスタント、翻訳)、自然言語処理(チャットボット、文章生成)、自動運転車など、多岐にわたります。これらの技術は、従来のルールベースや特徴量抽出に頼る手法を超え、大量のデータから自動的に特徴を学習するため、精度向上に寄与しています。
しかしながら、深層学習には課題も存在します。大量のデータと計算資源を必要とし、モデルの解釈性が低いため、「ブラックボックス」としての側面も指摘されています。また、過学習やバイアスの問題もあり、倫理的・社会的な配慮も求められています。さらに、モデルの訓練には時間とコストがかかるため、実用化には工夫や工場的な運用が必要です。
総じて、深層学習は多くの革新的な応用を生み出しており、今後も技術の進展とともに新たな可能性が広がっています。一方で、その課題に対しては、モデルの解釈性を高める研究や、少ないデータで学習できる手法の開発、倫理的なガイドラインの整備などが進められています。これらの取り組みを通じて、深層学習の社会的な受容と実用性は向上し続けています。教員としては、これらの基礎知識を理解し、教育現場での適切な活用や、学生への指導に役立てることが求められます。深層学習の理解は、今後のAI技術の発展を見据えた重要なスキルとなるため、基礎からしっかりと学び、実社会の課題解決に役立てていくことが期待されます。これにより、学生のデータリテラシーやAIリテラシーの向上にもつながります。最後に、深層学習の未来は、より効率的で解釈しやすいモデルの開発や、倫理的なAIの実現に向けた研究とともに進展していくでしょう。教員はこれらの動向を把握し、教育に反映させることが重要です。
このように、AIと深層学習は、現代社会において不可欠な技術となっており、その基礎と応用を理解することは、教育者としても非常に重要です。深層学習の技術は、医療、交通、金融、エンターテインメントなど、多くの分野で革新的な変化をもたらしています。これらの応用例を通じて、学生に実社会での具体的な事例を示しながら、技術の意義や課題について議論を深めることが効果的です。また、深層学習の発展は、倫理的な問題や社会的な責任も伴います。教員は、技術の進歩だけでなく、その社会的影響についても理解を深め、学生に対してバランスの取れた視点を提供することが求められます。今後も、AIと深層学習の動向を注視し、最新の知識と教育方法を取り入れることで、次世代の人材育成に寄与していくことが重要です。これらの知識と理解を基盤に、学生が未来の社会をリードできるような教育を目指しましょう。
3.課題
① 深層学習と従来の機械学習の違いについて、具体例を挙げて説明しなさい。
② 畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の特徴と、その代表的な応用例を述べなさい。
③ 深層学習の社会的な課題や倫理的な問題について、あなたの考えを述べ、その解決策の一例を提案しなさい。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第15講 データサイエンスの未来と教育への展望(仮題)
澤井進(岐阜女子大学特任教授)
1.学修到達目標
① データサイエンスの未来の展望とその社会的・教育的意義を理解できる。
② 今後の教育現場におけるデータサイエンス教育の役割と必要性を説明できる。
③ データサイエンスの発展に伴う課題と、それに対する教育の対応策を考察できる。
2.内容
データサイエンスは、ビッグデータの収集・分析・解釈を通じて、さまざまな社会課題の解決や意思決定の支援を行う学問分野です。今後の社会において、データサイエンスの重要性はますます高まると予測されており、その未来展望は多岐にわたります。
まず、産業界ではAIやIoTの普及により、リアルタイムのデータ分析や予測モデルの構築が不可欠となっています。これにより、医療分野では個別化医療や早期診断、金融分野ではリスク管理や詐欺検出、交通分野では自動運転や交通流の最適化など、多くの革新的なサービスが実現しています。これらの進展は、データサイエンスの技術者だけでなく、一般のビジネスパーソンや教育者にも求められるスキルとなっています。
教育の側面では、データリテラシーの重要性が高まっています。未来の社会を担う子どもたちに対して、データの扱い方や分析の基礎を教えることは、情報化社会に適応し、主体的に意思決定できる市民を育成することにつながります。これにより、学校教育や高等教育においても、データサイエンスの基礎的な知識やスキルを身につけることが求められるようになっています。特に、プログラミングや統計学の基礎、データの可視化や解釈の能力は、今後の教育カリキュラムにおいて重要な位置を占めるでしょう。
一方で、データサイエンスの発展に伴う課題も存在します。データのプライバシーや倫理的問題、偏ったデータによるバイアスのリスク、そしてデータの扱いに関する法的・社会的な規制の整備などです。これらの課題に対して、教育現場では倫理教育や法的知識の習得を促す必要があります。また、AIや自動化の進展により、従来の仕事やスキルのあり方も変化しており、柔軟な思考や継続的な学習能力を育む教育の重要性も増しています。
未来の教育は、単なる知識の伝達だけでなく、データを活用した問題解決能力や倫理観を育むことが求められます。これにより、学生は変化の激しい社会に適応し、自らの意思で情報を判断し、行動できる市民へと成長していきます。したがって、教育者は、データサイエンスの未来を見据えた教育プログラムの開発と実践を進める必要があります。これらの取り組みは、社会全体のデータリテラシー向上と、持続可能な発展に寄与するものと期待されます。
3.課題
① データサイエンスの未来において、社会や産業界で期待される役割と、その教育的意義について述べなさい。
② 今後の教育現場において、データリテラシー教育を推進するために必要な取り組みや内容について具体的に述べなさい。
③ データサイエンスの発展に伴う倫理的・社会的課題を挙げ、それに対して教育現場でどのような対策や教育内容を取り入れるべきか、あなたの考えを述べなさい。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
提出文書様式
1.テキスト(様式)(Word版)
2.プレゼン様式(例)(pptx版)
3.動画の作成(各講20分程度)
動画作成の方法について
資料映像
【公開講座】学校DX戦略コーディネータ概論【Ⅲ】~ 未来を創る教育設計:カリキュラム開発の新しい視点 ~ 【構想中】
【概 要】
カリキュラム開発の理論と実践は、教育における目標達成のために必要な学習内容、教育方法、評価方法を体系的に設計・実行するプロセスです。理論的には、カリキュラム開発は学習者中心のアプローチを重視し、学習の目的や成果を明確に定義します。加えて、学習者のニーズ、社会的・文化的背景、教育政策を考慮した柔軟で効果的なデザインが求められます。実践的な側面では、カリキュラムを教室で実際に運用し、評価を通じてその効果を確認し、改善を行うことが重要です。
カリキュラム開発のポイントは、学習者の多様性に対応すること、学びの過程が段階的に進行すること、そして、評価とフィードバックを取り入れた反復的な改善が必要であることです。さらに、現代の教育では、テクノロジーやグローバルな視点、持続可能な教育など、最新のアプローチを取り入れることが求められています。これにより、学習者は知識だけでなく、実践的なスキルや問題解決能力を身につけることができます。カリキュラム開発は、単なる知識伝達にとどまらず、学習者を未来に向けて準備させる重要な役割を果たします。
【学修到達目標】
1.学習者中心のカリキュラム設計ができる
※学習者のニーズ、興味、能力に基づいて、効果的な学習目標と内容を設定し、カリキュラムを設計できる。
2.カリキュラム開発における評価手法を理解し、実践できる
※カリキュラムの評価方法を選定し、実施して、その成果を分析し、改善のためのフィードバックを提供できる。
3.多様な教育手法や学習スタイルを取り入れたカリキュラムを作成できる
※さまざまな学習者に対応した教育方法(例:協働学習、プロジェクトベース学習、反転授業)を取り入れたカリキュラムを設計できる。
4.最新の教育技術をカリキュラムに組み込み、効果的に活用できる
※テクノロジーやデジタルツールを活用したカリキュラムを開発し、学習者にとって効果的な学習環境を提供できる。
5.カリキュラムの改善と適応を行い、持続的に最適化できる
※実施したカリキュラムを評価し、学習者の成果やフィードバックを基にカリキュラムを柔軟に修正・改善できる。
第1講 カリキュラムの定義と重要性(仮題)
森下 孟(信州大学学術研究院教育学系・准教授)
1.学修到達目標
① カリキュラムの基本的な構成要素(学習目標、教材、指導方法、評価基準など)を明確に説明し、それぞれの役割を理解することができる。
② カリキュラムが教育の一貫性やインクルーシブな環境の促進にどのように寄与するかを具体的な事例を挙げて論じることができる。
③ 自校のカリキュラムを分析し、学習者の多様なニーズに応じた改善点を特定し、具体的な提案を行うことができる。
2.内容
カリキュラムとは、教育機関において提供される教育内容や学習活動の体系的な計画を指します。具体的には、学習目標、教材、指導方法、評価基準などが含まれ、教育の質を高めるための枠組みを提供します。カリキュラムは、教育の目的を達成するための道筋を示すものであり、学習者が必要な知識やスキルを身につけるための基盤となります。
カリキュラムの重要性は多岐にわたります。まず、教育の一貫性を確保する役割があります。明確なカリキュラムが存在することで、教育者は同じ目標に向かって指導を行うことができ、学習者も自分の学びの進捗を把握しやすくなります。また、カリキュラムは学習者の多様なニーズに応じた内容を提供することで、インクルーシブな教育環境を促進します。これにより、すべての学習者が平等に学ぶ機会を得ることができます。
さらに、カリキュラムは教育の質を向上させるための重要な要素です。適切に設計されたカリキュラムは、学習者の興味を引き出し、主体的な学びを促進します。また、評価方法を組み込むことで、学習成果を測定し、必要に応じて改善を図ることが可能です。このように、カリキュラムは教育の根幹を成すものであり、教育機関の使命を果たすために不可欠な要素です。
3.課題
① 特定の教育機関のカリキュラムを選定し、その構成要素や教育目標、教材、指導方法、評価基準を分析するレポートを作成する。
※この課題を通じて、カリキュラムの実際の運用状況を理解し、改善点を見出す能力を養う。
② 特定の学習者グループ(例:異なる年齢層や特別支援が必要な学習者)に対応したカリキュラム案を設計し、その目的や内容、指導方法、評価方法を詳細に記述する。
※この課題を通じて、学習者の多様なニーズに応じたカリキュラムの重要性を実践的に学ぶ。
③ 自校のカリキュラムに対する改善提案をまとめ、プレゼンテーション形式で発表する。提案には、具体的な改善点やその理由、期待される効果を含める。
※この課題を通じて、受講者はコミュニケーション能力や説得力を高めるとともに、実践的な改善策を考える力を養う。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第2講 カリキュラム開発の歴史(仮題)
1.学修到達目標
① 古代から現代に至るまでのカリキュラム開発の歴史的変遷を理解し、主要な教育思想や改革の影響を具体的に説明することができる。
② 特定の時代や教育思想に基づくカリキュラムの特徴を分析し、それがどのように学習者のニーズや社会の要求に応じて変化してきたかを論じることができる。
③ カリキュラム開発の歴史を踏まえ、現代の教育課題や社会的ニーズに応じた未来のカリキュラムの改善点や新たな提案を具体的に示すことができる。
2.内容
カリキュラム開発の歴史は、教育の進化と密接に関連しています。古代ギリシャやローマでは、教育は主に哲学や倫理、文学を中心に行われ、知識の伝承が重視されていました。中世には、キリスト教の影響を受けた教育が広まり、神学や哲学がカリキュラムの中心となりました。この時期、大学が設立され、学問の体系化が進みました。
近代に入ると、教育の目的や方法が大きく変化しました。18世紀の啓蒙思想家たち、特にルソーは、子どもの自然な成長を重視し、学習者中心の教育の重要性を提唱しました。19世紀には、教育制度が整備され、国家による教育の普及が進みました。この時期、カリキュラムはより体系的に設計され、科目の分化が進みました。
20世紀に入ると、教育心理学や社会学の発展により、学習者の特性や社会的背景を考慮したカリキュラム開発が求められるようになりました。特に、ジョン・デューイは「経験に基づく学習」を提唱し、実践的な学びの重要性を強調しました。また、1960年代から70年代にかけては、教育改革運動が盛んになり、カリキュラムの柔軟性や多様性が重視されるようになりました。
現在では、テクノロジーの進化やグローバル化に伴い、カリキュラム開発はますます複雑化しています。学習者の多様性に対応するためのインクルーシブ教育や、持続可能な開発目標(SDGs)に基づく教育が求められるなど、カリキュラムは常に進化し続けています。このように、カリキュラム開発の歴史は、教育の目的や方法の変遷を反映した重要なプロセスであると言えます。教育の変化に応じて、カリキュラムは単なる知識の伝達にとどまらず、学習者の批判的思考や問題解決能力、協働性を育むことを目指すようになりました。
また、21世紀に入ると、情報化社会の進展に伴い、デジタルリテラシーや情報活用能力が重視されるようになりました。これにより、カリキュラムにはテクノロジーを活用した学習方法や、オンライン教育の要素が組み込まれるようになっています。さらに、国際的な視点を取り入れた教育が求められる中で、異文化理解やグローバルな問題への対応もカリキュラムの重要な要素となっています。
このように、カリキュラム開発の歴史は、教育の目的や社会のニーズに応じて変化し続けており、今後も新たな課題や技術の進展に対応した柔軟なカリキュラムが求められるでしょう。教育者は、これらの歴史的背景を理解し、未来の教育に向けた効果的なカリキュラムを設計することが重要です。
3.課題
① 特定の時代(例:古代ギリシャ、中世、近代など)のカリキュラムを選び、その特徴や教育思想、社会的背景を分析したレポートを作成する。
※この課題を通じて、カリキュラムの歴史的変遷を理解し、教育の目的や方法の変化を考察する。
② 特定の教育思想家(例:ジョン・デューイ、ルソーなど)を選び、その思想がカリキュラム開発に与えた影響について研究し、プレゼンテーション形式で発表する。
※この課題を通じて、教育思想が実際のカリキュラムにどのように反映されているかを探求する。
③ カリキュラム開発の歴史を踏まえ、現代の教育課題や社会的ニーズに応じた未来のカリキュラムの改善点や新たな提案をまとめた提案書を作成する。
※この課題を通じて、受講者は歴史的な視点を持ちながら、実践的な解決策を考える力を養う。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第3講 教育理論とカリキュラム(仮題)
田中康平(教育ICTデザイナー)
1.学修到達目標
① 主要な教育理論(行動主義、認知主義、構成主義など)を理解し、それぞれの理論の特徴や学習に対するアプローチを具体的に説明できる。
② 特定の教育理論に基づいて、学習者のニーズや社会的要求を考慮したカリキュラムを設計し、その内容や指導方法を具体的に示すことができる。
③ 教育理論がカリキュラムにどのように影響を与えるかを分析し、具体的な事例を挙げてその関連性を論じることができる。
2.内容
教育理論とカリキュラムは、教育の質を向上させるために密接に関連しています。教育理論は、学習者がどのように学び、知識を獲得するかを理解するための枠組みを提供します。代表的な教育理論には、行動主義、認知主義、構成主義などがあります。行動主義は、外的刺激に対する反応を重視し、学習を行動の変化として捉えます。一方、認知主義は、学習者の内部プロセスや思考過程に焦点を当て、知識の構築を重視します。構成主義は、学習者が自らの経験を通じて知識を構築することを強調し、協働学習や探究学習の重要性を訴えます。
カリキュラムは、教育理論に基づいて設計され、教育の目的や内容、指導方法、評価基準を体系的にまとめたものです。カリキュラムは、教育の目標を達成するための具体的な手段であり、学習者のニーズや社会の要求に応じて柔軟に変化する必要があります。例えば、構成主義に基づくカリキュラムでは、プロジェクトベースの学習や問題解決型のアプローチが取り入れられ、学習者が主体的に学ぶ環境が整えられます。
教育理論とカリキュラムの関係は、教育の質を高めるために不可欠です。理論に基づいたカリキュラムの設計は、学習者の理解を深め、実践的なスキルを育むことに寄与します。したがって、教育者は教育理論を理解し、それをカリキュラムに反映させることが重要です。これにより、より効果的な教育が実現されるでしょう。
3.課題
① 行動主義、認知主義、構成主義などの主要な教育理論を比較し、それぞれの理論の特徴、利点、限界について分析したレポートを作成する。
※この課題を通じて、教育理論の多様性とその教育実践への影響を理解する。
② 特定の教育理論に基づいて、特定の学年や教科に適したカリキュラムを設計するプロジェクトを行う。具体的には、学習目標、内容、指導方法、評価方法を含むカリキュラム案を作成し、プレゼンテーションを行う。
※この課題を通じて、理論を実践に応用する能力を養う。
③ 特定の教育理論がどのようにカリキュラムに影響を与えているかを研究し、その結果を発表する。
※この課題では、具体的な事例を挙げて理論と実践の関連性を論じることが求められる。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第4講 学習者中心のカリキュラムデザイン(仮題)
木田 博(鹿児島市教育委員会・教育DX担当部長)
1.学修到達目標
① 特定の学習者グループのニーズや興味を調査し、その結果を基に学習者中心のカリキュラムを設計するための分析レポートを作成できる。
② 学習者中心のアプローチに基づいて、具体的な学習目標、活動、評価方法を含むカリキュラム案を作成し、プレゼンテーションを通じてその意図や効果を説明できる。
③ 実際の授業や学習活動に対してフィードバックを行い、その結果を基にカリキュラムの改善点を提案することができる。
2.内容
学習者中心のカリキュラムデザインは、教育の現場において学習者のニーズや興味を重視し、彼らが主体的に学ぶことを促進するアプローチです。このデザインは、従来の教員中心の教育からの転換を図り、学習者が自らの学びに対して責任を持つことを目指します。
このアプローチでは、学習者の背景、経験、興味を考慮し、個々の学習スタイルに応じた柔軟なカリキュラムが求められます。具体的には、プロジェクトベースの学習や探究学習、協働学習などが取り入れられ、学習者が実際の問題に取り組むことで、知識を深めることができます。また、フィードバックや自己評価を通じて、学習者は自分の進捗を把握し、次のステップを考える力を養います。
さらに、学習者中心のカリキュラムデザインでは、教員の役割も変化します。教員は知識の伝達者からファシリテーターへとシフトし、学習者が自らの学びを深めるためのサポートを行います。これにより、学習者は自分のペースで学び、興味を持ったテーマに対して深く探求することが可能になります。
このように、学習者中心のカリキュラムデザインは、学習者の主体性を尊重し、彼らが自らの学びをコントロールできる環境を提供することで、より効果的な学習を促進します。結果として、学習者は知識を単に受け取るのではなく、実際に活用し、応用する力を身につけることが期待されます。
3.課題
① 特定の学習者グループ(例:特定の年齢層や学習スタイルを持つグループ)を対象に、ニーズや興味を調査し、その結果を分析したレポートを作成する。
※この課題を通じて、学習者の特性を理解し、カリキュラム設計に活かす能力を養う。
② 学習者中心のアプローチに基づいて、特定の教科やテーマに関するカリキュラム案を作成する。具体的には、学習目標、活動内容、評価方法を含む詳細なプランを作成し、クラス内で発表する。
※この課題を通じて、実践的なカリキュラムデザインのスキルを身につける。
③ 自ら設計したカリキュラムを実際に授業で実施し、その後、学習者からのフィードバックを収集・分析する。さらに、その結果を基にカリキュラムの改善点を提案するレポートを作成する。
※この課題を通じて、実践的な授業運営能力と改善提案のスキルを高める。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第5講 目標設定と学習成果(仮題)
久世 均(岐阜女子大学・教授)
1.学修到達目標
① 特定の学習テーマに基づいて、SMART基準に従った具体的な学習目標を3つ以上設定し、その目標がどのように学習成果に結びつくかを説明できる。
② 設定した学習目標に対して適切な評価方法(定量的および定性的)を提案し、それぞれの評価方法がどのように学習成果を測定するかを具体的に示すことができる。
③ 自己評価や他者からのフィードバックを基に、自らの学習成果を分析し、次の学びに向けた改善計画を作成することができる。
2.内容
目標設定と学習成果は、教育において重要な要素であり、学習者の成長を促進するための基盤となります。目標設定は、学習者が達成すべき具体的な成果を明確にするプロセスであり、SMART(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)基準に基づくことが推奨されます。具体的な目標を設定することで、学習者は自分の進捗を把握しやすくなり、モチベーションを高めることができます。
学習成果は、設定した目標に対する達成度を示すものであり、学習者がどの程度の知識やスキルを習得したかを評価する指標となります。学習成果は、定量的な評価(テストや課題の点数)だけでなく、定性的な評価(自己評価やフィードバック)も含まれます。これにより、学習者は自分の強みや改善点を理解し、次の学びに活かすことができます。
さらに、目標設定と学習成果は、教育者にとっても重要です。教育者は、学習者の目標達成を支援するために、適切な指導方法や評価方法を選択する必要があります。また、学習成果を分析することで、カリキュラムや指導法の改善点を見つけ出し、教育の質を向上させることができます。
このように、目標設定と学習成果は、学習者の成長を促進し、教育の質を向上させるための重要な要素であり、相互に関連し合っています。学習者が自らの目標を意識し、成果を評価することで、より効果的な学びが実現されるのです。
3.課題
① 特定の学習テーマやプロジェクトに基づいて、SMART基準に従った具体的な学習目標を3つ以上設定し、その目標がどのように学習成果に結びつくかを説明するレポートを作成する。
※この課題を通じて、効果的な目標設定のスキルを養う。
② 設定した学習目標に対して適切な評価方法を設計し、定量的および定性的な評価基準を含む評価計画を作成する。
※この課題では、評価方法が学習成果をどのように測定するかを具体的に示し、実践的な評価スキルを身につける。
③ 自己評価や他者からのフィードバックを基に、自らの学習成果を分析し、次の学びに向けた改善計画を作成する。
※この課題を通じて、フィードバックの重要性を理解し、自己改善のための具体的なアクションプランを策定する能力を高める。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第6講 内容の選定と組織化(仮題)
今井亜湖(岐阜大学教育学部・教授)
1.学修到達目標
① 特定の学習者グループに対してニーズ分析を行い、その結果に基づいて適切な学習内容を選定することができる。具体的には、学習者の背景や興味を考慮し、関連性のある教材やトピックを3つ以上提案する。
② 選定した学習内容を論理的に組織化し、テーマやトピックを階層的に整理したカリキュラムマップを作成することができる。このマップには、各トピックの関連性や学習の進行順序を明示する。
③ 異なる学習スタイルに対応するために、選定した内容に基づいて複数の教授法や教材を提案し、それぞれのアプローチがどのように学習者の理解を促進するかを説明することができる。
2.内容
内容の選定と組織化は、効果的な教育プログラムやカリキュラムを構築するための重要なプロセスです。まず、内容の選定では、学習者のニーズ、興味、背景に基づいて、教えるべき知識やスキルを明確にすることが求められます。これには、教育目標や学習成果を考慮し、関連性の高い情報や教材を選ぶことが含まれます。選定された内容は、学習者が実生活や将来のキャリアに役立てることができるように、実践的で意味のあるものであるべきです。
次に、内容の組織化は、選定した情報を効果的に構造化し、学習者が理解しやすい形で提示するプロセスです。これには、テーマやトピックを論理的に整理し、関連性のある内容をグループ化することが含まれます。例えば、概念を階層的に整理したり、前提知識から新しい知識へと段階的に進むように構成したりすることが考えられます。また、視覚的な要素(図表やマインドマップなど)を活用することで、学習者の理解を深めることができます。
さらに、内容の選定と組織化は、学習者の多様な学習スタイルやペースに対応するためにも重要です。異なるアプローチや教材を用いることで、すべての学習者が効果的に学べる環境を整えることができます。このように、内容の選定と組織化は、教育の質を向上させ、学習者の成果を最大化するための基盤となるのです。
3.課題
① 特定の学習者グループ(例:学生、社会人、特定の職業群など)に対してニーズ分析を行い、その結果をまとめたレポートを作成する。
※このレポートには、学習者の背景、興味、必要なスキルを明示し、それに基づいて選定した学習内容を提案する。
② 選定した学習内容を基に、論理的に組織化されたカリキュラムマップを作成する。
※このマップには、各トピックの関連性や学習の進行順序を示し、学習者がどのように知識を段階的に習得できるかを明示する。
③ 選定した内容に基づいて、異なる学習スタイルに対応するための複数の教授法や教材を提案し、それぞれのアプローチが学習者の理解をどのように促進するかを説明するプレゼンテーションを作成する。
※この課題を通じて、受講者は多様な学習者に対する配慮を学ぶ。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第7講 教育方法と戦略(仮題)
林 一真(岐阜聖徳学園大学・講師)
1.学修到達目標
① 異なる教育方法(講義、ディスカッション、グループワークなど)を用いて、特定の学習内容を教えるための授業計画を作成し、実際に模擬授業を行うことができる。これにより、各方法の効果を実践的に理解する。
② 特定の学習者グループに対して、個別指導や協同学習、反転授業などの教育戦略を組み合わせた学習プランを設計し、そのプランがどのように学習者のニーズに応えるかを説明することができる。
③ 選定した教育方法と戦略に基づいて実施した授業の効果を評価し、学習者からのフィードバックを収集して分析し、その結果をもとに次回の授業改善点を提案することができる。
2.内容
教育方法と戦略は、効果的な学習を促進するための重要な要素です。教育方法は、教師が学習者に知識やスキルを伝えるために用いる具体的な手法や技術を指します。一方、教育戦略は、教育目標を達成するための全体的な計画やアプローチを意味します。これらは、学習者の特性やニーズに応じて柔軟に選択されるべきです。
教育方法には、講義、ディスカッション、グループワーク、プロジェクトベース学習、実践的な演習など、さまざまな形式があります。例えば、講義は情報を一方的に伝える方法ですが、ディスカッションやグループワークは学習者同士の相互作用を促進し、深い理解を得るために効果的です。また、プロジェクトベース学習は、実際の問題解決を通じて学ぶことができ、学習者の主体性を高めることができます。
教育戦略には、個別指導、協同学習、反転授業、アクティブラーニングなどがあります。個別指導は、学習者のペースや理解度に応じた指導を行う方法であり、協同学習は、学習者同士が協力して学ぶことで、社会的スキルやコミュニケーション能力を育むことができます。反転授業は、事前に学習内容を自宅で学び、授業ではその内容を深める活動を行うスタイルです。
これらの教育方法と戦略を組み合わせることで、学習者の多様なニーズに応じた効果的な学習環境を構築することが可能となります。教育者は、これらの手法を適切に選択し、実践することで、学習者の理解を深め、学びの成果を最大化することが期待されます。
3.課題
① 選定した教育方法(例:講義、ディスカッション、グループワークなど)を用いて、特定の学習内容に基づく模擬授業を実施する。
※この授業では、学習者の反応や理解度を観察し、授業の進行や方法の効果を評価する。
② 特定の学習者グループ(例:年齢、背景、学習スタイルなど)に応じた教育戦略を組み合わせた学習プランを作成する。
※このプランには、具体的な目標、使用する教育方法、評価方法を含め、どのように学習者のニーズに応えるかを説明する。
③ 模擬授業や実際の授業を通じて得たフィードバックを基に、授業の効果を評価するレポートを作成する。
※このレポートには、授業の強みや改善点、次回の授業に向けた具体的な提案を含める。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第8講 学習評価とフィードバックの重要性(仮題)
森下 孟(信州大学学術研究院教育学系・准教授)
1.学修到達目標
① 学習者の評価結果を基に、自らの授業計画を調整できる。
② 具体的かつ建設的なフィードバックを学習者に提供できる。
③ カリキュラムの改善に向けた評価とフィードバックの活用方法を理解し、実践できる。
2.内容
「学修評価とフィードバックの重要性」は、カリキュラム開発において欠かせない要素です。まず、評価は学習の進捗や成果を測る手段として、学習者がどの程度目標を達成したかを明確にします。評価結果は、カリキュラムが効果的かどうかを判断するための指標となり、学習の質を向上させるための重要な情報源です。教師は、評価を通じて学習者の理解度や課題を把握し、次の授業に反映させることができます。
また、フィードバックは学習者が自分の強みや改善点を理解し、成長するための道しるべとなります。効果的なフィードバックは、具体的かつ建設的である必要があります。学習者がどの部分で間違えたか、どのように改善すべきかを明確に伝えることで、次の学びへと繋げることができます。ポジティブなフィードバックは学習者のモチベーションを高め、改善点を指摘するフィードバックは学びを深めます。
学習評価とフィードバックは、カリキュラムの改善にも繋がります。教師は学習者からのフィードバックを元に授業内容や方法を見直し、効果的なカリキュラムに進化させることができます。このように、評価とフィードバックは学習者の成長を促進し、カリキュラムの質を高めるために重要な役割を果たします。
3.課題
① 学習者の進捗や成果をどのように評価するかを検討し、個々の学習スタイルやニーズに適した評価方法を提案する。
※課題では、異なる評価方法(例えば、自己評価、ピアレビュー、定期的なテストなど)の適用例を示し、それぞれの利点と課題を分析する。
② 学習者に対して、具体的で建設的なフィードバックをどのように提供するかについて検討する。
※この課題では、フィードバックを与える際に注意すべきポイント(タイミング、表現方法、具体性など)を考え、実際に自分の授業でフィードバックを提供する方法を計画する。
③ 学習者の評価結果を反映させ、どのようにカリキュラムを改善するかを考える。
※この課題では、過去の授業での評価データを基に、カリキュラムの改善案を立案し、その改善が学習者の学びにどのように影響を与えるかを示す。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第9講 インクルーシブ教育とカリキュラム
太田容次(京都ノートルダム女子大学・准教授)
1.学修到達目標
① 学習者の多様なニーズを理解し、適切な支援方法をカリキュラムに組み込むことができる。
② 異なる学習者に合わせた教材や評価方法を選定し、実践できる。
③ インクルーシブ教育を実現するための協力体制を構築し、教師と他の教育スタッフとの連携を促進できる。
2.内容
インクルーシブ教育とは、すべての学習者がその個別のニーズに応じて教育を受けることができる環境を提供する教育理念です。カリキュラム開発においてインクルーシブ教育を取り入れることは、学習者の多様性を尊重し、全員に平等な学びの機会を提供することを意味します。この理念を反映させるためには、障害を持つ学習者や特別な支援が必要な学習者、異なる文化的背景を持つ学習者を含む多様なニーズに対応したカリキュラム設計が求められます。
インクルーシブ教育に基づくカリキュラム開発では、学習者の能力やペースに応じた柔軟な指導方法や教材の選定が重要です。例えば、視覚や聴覚に障害がある学習者のために、視覚支援ツールや聴覚支援機器を活用した教材を作成することが挙げられます。また、教師は学習者一人一人の個別のニーズを把握し、柔軟な評価方法を採用する必要があります。
インクルーシブ教育を実現するためには、教育の場全体で協力と理解を深め、学習者が自分のペースで学び、成功体験を積み重ねられる環境を作ることが重要です。これにより、すべての学習者が平等に学びの機会を得られ、学びの質が向上します。
3.課題
① 学習者の個別ニーズに対応するため、インクルーシブ教育の理念に基づいたカリキュラム設計を行い、その中でどのように障害や特別な支援が必要な学習者に対応するかを計画する。
※具体的な支援方法や教材、活動案を提案し、実施可能なプランを作成する。
② インクルーシブ教育を実現するために、視覚支援や聴覚支援、身体的な障害を持つ学習者を対象とした教材を作成する。
※例えば、視覚障害を持つ学習者に向けた教材や、聴覚障害のある学習者のための支援ツールを提案し、それぞれに対する具体的な工夫を盛り込むこと。
③ インクルーシブ教育を効果的に実施するために、教師や支援スタッフとの協力体制をどう構築するかについて具体的なアイデアを考え、チームでの連携方法や情報共有の仕組みを設計する。
※協力体制を強化するための具体的なステップや活動内容を提案し、実践可能な方法を示すこと。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第10講 テクノロジーの活用(仮題)
田中康平(教育ICTデザイナー)
1.学修到達目標
① 学習者のニーズに応じて、適切な教育テクノロジーツールを選定し、カリキュラムに組み込むことができる。
② インタラクティブコンテンツやゲームベース学習をカリキュラムに統合し、学習者のモチベーションを向上させることができる。
③ テクノロジーを活用した学習の成果を適切に評価し、フィードバックを提供することができる。
2.内容
テクノロジーの活用は、現代のカリキュラム開発において重要な要素となっています。教育におけるテクノロジーの利用は、学習者に対してより効果的かつ個別化された学習体験を提供し、教師の指導方法を革新する可能性を持っています。例えば、オンラインプラットフォームや教育用アプリケーションを活用することで、学習者は自分のペースで学びを進めることができ、必要に応じて即時のフィードバックを得ることができます。また、インタラクティブなコンテンツやシミュレーション、ゲームベース学習などを取り入れることで、学習者の興味を引き、深い理解を促進することができます。
さらに、テクノロジーは教育のアクセシビリティを向上させ、すべての学習者に平等な学びの機会を提供します。特別支援が必要な学習者に対して、音声認識ソフトやスクリーンリーダーなどの支援技術を活用することで、学びのバリアを取り除くことができます。
カリキュラム開発においてテクノロジーを活用するには、教師が新しいツールや技術を適切に選び、効果的に取り入れることが求められます。また、テクノロジーを活用する際には、学習目標を達成するためにツールをどのように活かすかを計画し、評価方法を再設計する必要があります。これにより、学習の質が向上し、学習者一人一人に適した教育が実現できます。
3.課題
① 異なる学習目標に対応するために、オンラインプラットフォーム、教育アプリケーション、シミュレーションツールなどのテクノロジーを選定する。それぞれのツールが学習者に与える影響を評価し、どのようにカリキュラムに組み込むかを具体的に説明しなさい。
② 学習者の興味を引き、効果的な学びを促進するインタラクティブな教材(例えば、ゲームベース学習、シミュレーション)を設計しなさい。
※その設計において、学習者が主体的に学ぶための具体的な活動や、テクノロジーを活用した学習活動の流れを考案すること。
③ テクノロジーを使用して学習者の進捗や成果をどのように評価するかについて計画を立てる。
※具体的には、リアルタイムで進捗を評価する方法や、自動化されたフィードバックシステムを活用した評価方法を提案し、その利点と課題を考察すること。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第11講 プロジェクトベースの学習(仮題)
成瀬喜則(富山大学・名誉教授・学長特命補佐)
1.学修到達目標
① 実際の課題に対してチームで協力し、問題解決のためのプロジェクトを企画・実行できる。
② 調査結果やアイデアを論理的に整理し、効果的にプレゼンテーションを行うことができる。
③ 他者と協力しながらフィードバックを受け入れ、プロジェクトの改善に反映させることができる。
2.内容
プロジェクトベースの学習(PBL)は、学習者が実際の課題や問題に取り組む中で知識やスキルを習得する教育方法です。このアプローチでは、学習者がグループで協力しながらプロジェクトを計画、実行、評価することを通じて、学びを深めます。PBLは、単に知識を受動的に習得するのではなく、実践的な経験を通じて学び、問題解決能力や批判的思考力、協力性を育むことが目的です。
PBLでは、リアルな社会問題や学問的なテーマを課題として設定し、学習者がそれに対する解決策を考え、実行する過程が重視されます。この過程で、学習者はリサーチ、議論、プレゼンテーションなどを行い、最終的には成果物(レポートやプロトタイプなど)を発表します。教員はファシリテーターとして、学習者が自主的に問題解決に取り組むためのサポートを行います。
このアプローチは、学習者が主体的に学び、協力的な学習環境を作るため、深い理解と実践的なスキルを養うのに非常に効果的です。また、学習者が学んだ知識を実際の状況に適用することで、学びの意味や目的を実感しやすくなります。PBLは、21世紀の教育において重要な役割を果たす学習方法の一つとされています。
3.課題
① 現在の社会問題(例:環境問題、貧困、教育格差など)に対して、グループで解決策を提案するプロジェクトを企画する。
※プロジェクトの目的、方法、必要なリソース、期待される成果を具体的に計画し、最終的にどのようにその解決策を実行するかを説明すること。
② 自分たちのプロジェクトに関連するテーマについて調査を行い、その結果を基にプレゼンテーション資料を作成する。
※資料には、調査の方法、得られた結果、解決策の提案、そしてその意義について分かりやすくまとめ、発表準備を行うこと。
③ プロジェクトの途中で得られたフィードバックを受けて、どのように改善点を取り入れ、プロジェクトの進行を最適化するかを考え、その具体的な改善提案を作成する。
※フィードバックに基づいた課題解決のプロセスと、チーム内での協力方法についても検討すること。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第12講 カリキュラムの評価と改善(仮題)
齋藤陽子(岐阜女子大学・准教授)
1.学修到達目標
① カリキュラム評価の結果を分析し、改善のための具体的な提案を行うことができる。
② 複数の評価方法(テスト、自己評価、フィードバックなど)を活用して、学習者の進捗を効果的に把握することができる。
③ 教師と学習者のフィードバックをもとに、カリキュラムの内容や指導方法を柔軟に修正・改善することができる。
2.内容
カリキュラムの評価と改善は、教育の質を向上させるために不可欠なプロセスです。カリキュラム評価は、学習目標がどれだけ達成されているかを確認するために行われます。これには、学習者の成果や進捗を測るための定期的なテストや、教師からのフィードバックを活用した評価方法が含まれます。また、学習者の理解度や授業の効果を反映させるために、自己評価やピアレビューなどの多角的な評価が重要です。
カリキュラム改善は、評価結果をもとに行われます。評価結果が示す課題や不足点を特定し、これを反映させるためにカリキュラム内容、教材、指導方法などを見直します。改善のプロセスには、教師や学習者の意見を取り入れることが効果的であり、教育の現場で何がうまく機能し、何が改善が必要かを明確にすることが求められます。
カリキュラムの改善は一度きりの作業ではなく、継続的に行われるべきです。新しい教育技術や学習方法が登場する中で、カリキュラムは常に適応・進化する必要があります。これにより、学習者にとって最適な学びの環境を提供することができ、教育効果を最大化することが可能になります。
3.課題
① あなたの授業で使用しているカリキュラムに対して、過去の評価結果(学習者の成績やフィードバック)をもとに、改善すべき点を挙げ、具体的な改善策を提案する。
※例えば、指導方法や教材の変更、学習目標の修正など、どの部分をどのように改善するかを説明すること。
② カリキュラム評価のために、複数の評価方法(例:定期テスト、自己評価、ピアレビュー、フィードバック)を導入する方法を考え、その実施方法とそれぞれの評価方法が学習者の進捗に与える影響について分析する。
※どの評価方法がどのように学習者の理解を深め、学びを促進するのかについて具体的に説明すること。
③ 学習者および教師からのフィードバックを受けて、カリキュラムのどの部分を修正すべきかを考え、改善案を作成する。
※フィードバックの内容に基づき、教材や指導方法、学習目標をどう変更するかを具体的に説明し、改善後の効果について予測すること。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第13講 学力調査とCBT(仮題)
1.学修到達目標
① 従来の紙媒体のテスト(PBT)と比較し、CBTの利点・欠点、そして問題形式の多様化や即時フィードバック等がもたらす教育的な可能性を体系的に説明できる。国の政策動向を理解し、自校の教育活動に与える影響を多角的に分析できる。
② CBTによって得られる多様なデータ(解答時間、操作ログ、解答の軌跡など)の意味を理解し、児童生徒一人ひとりの認知プロセスやつまずきの特徴を多角的に分析できる。その分析結果に基づき、個別最適な指導や授業改善に繋げるための具体的な方策を立案できる。
③ 自校においてCBTを円滑に導入・実施するための環境整備、トラブル対応、教職員への支援計画を策定できる。また、個人情報保護などのデータ倫理を踏まえ、データに基づく教育実践を学校の文化として定着させるための組織的なアプローチを主導できる。
2.内容
1.CBTの基礎と教育の変革
CBTとは何かを、従来のPBTとの比較から学びます。単なる「コンピュータで受けるテスト」ではなく、動画・音声問題、シミュレーション、作図など、これまで測定が難しかった思考力・表現力を問う問題形式が可能になる点を理解します。また、個人の習熟度に応じて出題内容が変わる「アダプティブ・テスト」の仕組みと、個別最適な学びへの応用可能性についても学びます。MEXCBT(メクビット)に代表される国のCBTシステムの動向と、今後の展望を概観します。
2.CBTが拓くデータ駆動型の指導
CBTでは、単なる正誤結果だけでなく、「どの問題にどれだけ時間をかけたか」「どの選択肢で迷ったか」「一度解答してから修正したか」といった解答プロセスに関するデータ(操作ログ)が取得できます。これらのデータの見方・分析手法の初歩を学び、児童生徒の「わかったつもり」や「つまずきの本質」を深く洞察するアプローチを探求します。分析から得た気づきを、具体的な声かけや補充学習、さらにはクラス全体の授業設計の見直しに繋げる方法を、事例を通して学びます。
3.学校におけるCBT導入とマネジメント
学校DX戦略コーディネータの視点から、CBTを学校現場へ円滑に導入するための実践的なマネジメント手法を学びます。端末やネットワーク環境の確認といった技術的側面、実施計画の策定、教職員への操作研修の企画などの運営面、そして個人情報保護や情報セキュリティといったデータ倫理の側面から、注意すべき点を網羅的に確認します。最終的には、一部の教員だけでなく、学校全体でデータを活用し、対話しながら教育改善を進める「データ活用文化」をどう醸成していくか、その組織づくりの方策を考えます。
3.課題
① 以下の手順に従い、「CBT導入に関する比較考察レポート」を作成してください。
・従来の紙媒体テスト(PBT)とCBTについて、それぞれのメリット・デメリットを「①児童生徒」「②教員」「③学校運営」の3つの視点から整理してください。
・あなたの学校の現状(児童生徒の実態、教職員のICTスキル、ネットワーク環境など)を考慮したとき、CBTを導入することで得られる「最大の教育的価値(光)」は何だと考えますか。
・逆に、導入・運用する上で「最も懸念される課題(影)」は何だと考えますか。また、その課題を乗り越えるために、コーディネータとしてどのような準備や働きかけが必要になるか、あなたの考えを述べてください。
② 配布された架空のクラスのCBT結果データ(※)を参照し、以下の問いに答えてください。
(※データには、生徒ごとの「①設問ごとの正誤」「②設問ごとの解答時間」「③解答の修正回数」が含まれるとします)
・データ全体を見て、クラスの傾向として読み取れることを記述してください。(例:「問3は正答率が低いが、多くの生徒が時間をかけて悩んでいる」など)
・以下の特徴を持つ生徒Aさんと生徒Bさんについて、データから推測されるそれぞれの学習上の特性やつまずきの状況を分析してください。
生徒A: 全体的に正答率は高いが、特定の計算問題において、他の生徒の3倍以上の解答時間がかかっている。
生徒B: 知識を問う問題は即答で正解しているが、文章題になると解答時間が短く、ケアレスミスによる誤答が目立つ。
・上記2名の生徒に対し、あなたは明日からどのような個別の声かけや学習支援を行いますか。データから読み取った仮説に基づいて、具体的な指導計画を立案してください。
③ 来年度、あなたの学校で主要教科の単元テストの一部にCBTを試験導入することを想定し、以下の項目を含む「CBT導入に向けた校内研修・合意形成プラン」を企画・提案してください。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第14講 教科の構造化とカリキュラム(仮題)
岩木美詠子(福岡市立香椎第1中学校・教頭)
1.学修到達目標
① 学習指導要領が示す資質・能力を基軸に、自校のGIGAスクール環境(1人1台端末、クラウドツール等)が、各教科の学習目標達成や探究的な学習においてどのように機能しているかを構造的に分析し、教育DX推進における現状カリキュラムの成果と課題を客観的に説明できる。
② 学校の教育目標(グランドデザイン)と接続させながら、学習支援ツールやデジタル教材、学習履歴(スタディ・ログ)の活用を前提として、教科内の個別最適な学びと教科横断的な協働学習を効果的に組み合わせた、特色ある教育カリキュラム(年間指導計画や中核単元など)を具体的に再設計できる。
③ 設計したカリキュラムを学校全体で推進するため、学習データの分析結果に基づいて指導の改善やカリキュラムの更新を行う「データ駆動型のカリキュラム・マネジメント」のサイクルを構築できる。また、その実現に向けて、教職員へのICT活用研修やデジタルでの情報共有・連携の仕組みを含めた組織的な推進計画を立案できる。
2.内容
はい、承知いたしました。先に示した学習到達目標を踏まえ、「学校DX戦略コーディネータ講座」における「教科の構造化とカリキュラム」というテーマの講座内容を以下に示します。
講座名:学校DX戦略コーディネータ講座
テーマ:教科の構造化とカリキュラム ―テクノロジーで学びをリデザインする―
本講座は、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進する中核人材として、学校の教育活動の根幹であるカリキュラムを再構築し、その実現を主導できる能力の育成を目指します。理論学習と演習を組み合わせ、実践的なスキルを習得します。
【第1部】現状分析:DX時代のカリキュラムを可視化する
GIGAスクール環境が整備された今、既存のカリキュラムがどう機能しているかを客観的に分析する手法を学びます。
学習項目:
学習指導要領とDXの接続: 資質・能力の三つの柱や「主体的・対話的で深い学び」を、1人1台端末環境下でどう具体化するかを理解します。
教科の構造化とデジタルツール: 各教科の「見方・考え方」を働かせる上で、デジタルツール(協働編集ツール、シミュレーション教材、AIドリル等)がどのような役割を果たすかを分析します。
情報活用能力の育成状況の分析: 特定の教科だけでなく、教科横断的に情報活用能力が育成されているか、現状のカリキュラムマップから評価します。
演習:
自校の年間指導計画や単元計画を題材に、デジタルツールの活用状況をマッピングし、教育効果や課題を構造的に分析・考察するワークショップを行います。
【第2部】設計:テクノロジーで学びをリデザインする
分析した課題に基づき、デジタル技術の特性を最大限に活かした新しいカリキュラムを構想・設計するスキルを磨きます。
学習項目:
個別最適な学びと協働的な学びのデザイン: 学習プラットフォーム(LMS)やAI教材を活用した個別最適な学習と、クラウドツールを用いた協働的なプロジェクト学習を両立させる単元設計の手法を学びます。
学習履歴(スタディ・ログ)の活用: 学習データの基本的な見方を学び、データに基づいて児童生徒のつまずきを発見し、指導や評価に活かす方法を検討します。
ハイブリッド型学習の構想: オンライン学習と対面学習のそれぞれの利点を活かした、効果的な学習サイクルのデザインパターンを習得します。
演習:
グループワーク形式で、特定の教科・単元を選び、学習履歴の活用を前提とした新しい単元計画(単元全体のゴール、評価計画、具体的な活動を含む)を設計し、プレゼンテーションを行います。
【第3部】推進:データ駆動型カリキュラム・マネジメントの実践
設計したカリキュラムを形骸化させず、学校全体で推進し、継続的に改善していくためのマネジメント手法を学びます。
学習項目:
データ駆動型の意思決定(DDDM): 学習データやアンケート結果などの客観的な証拠(エビデンス)に基づき、カリキュラムを評価・改善するサイクル(PDCA)の回し方を学びます。
チェンジ・マネジメントと合意形成: 新しい取り組みに対する教職員の不安を解消し、前向きな協力を得るためのコミュニケーション戦略やファシリテーション技術を習得します。
持続可能な校内研修の計画: 教職員のICT活用スキルやデータリテラシーを組織的に高めていくための、効果的な研修プログラムの企画・運営方法を学びます。
演習:
第2部で設計した単元計画を自校に導入することを想定し、教職員への説明、研修、評価、改善までを含んだ1年間の「推進ロードマップ」を作成します。
3.課題
① あなたの学校で実践されているいずれかの教科・学年の年間指導計画を一つ選んでください。その上で、以下の項目を含む「自校カリキュラムDX診断レポート」を作成し、提出してください。
② 課題①で分析した中で、特にDXによる改善効果が大きいと考える単元を一つ選んでください。その単元について、以下の要素を含む「単元リデザイン案」を策定し、提出してください。
③ 課題②で設計した「単元リデザイン案」を、来年度から学年全体で実践することを想定し、以下の項目を含む「推進ロードマップ」を立案してください。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第15講 知識の構造化とカリキュラム
益川弘如(青山学院大学・教授)
1.学修到達目標
① 知識の構造化の基本概念とその意義を理解し、教育カリキュラムにおける役割を説明できる。
② 知識の階層化や関連付けを通じて、効果的なカリキュラム設計の方法を理解し、具体的な設計例を示せる。
③ 学習者の理解度や進度に応じた知識の構造化の工夫を考え、実践的なカリキュラム開発に応用できる。
2.内容
カリキュラムの理論において、「知識の構造化」は、学習内容を体系的に整理し、学習者が効率的かつ深く理解できるように設計するための重要な要素です。知識の構造化とは、学習すべき内容を階層化し、関連性や順序性を明確にすることを指します。これにより、学習者は新しい知識を既存の理解と結びつけながら、段階的に学びを深めることが可能となります。
知識の構造化にはいくつかの方法があります。代表的なものは、「階層構造」と「ネットワーク構造」です。階層構造は、基本的な概念からより複雑な内容へと段階的に進むもので、例えば「数学の基礎→代数→関数→微積分」といった順序です。一方、ネットワーク構造は、異なる概念間の関連性を多角的に示し、横断的な理解を促します。
教育カリキュラムにおいては、知識の構造化は学習の効理的な設計においては、まず学習目標を明確にし、その達成に必要な知識やスキルを洗い出します。次に、それらを階層化し、学習者が段階的に理解を深められるように配列します。例えば、基礎的な概念から応用的な内容へと進むことで、学習者は無理なく知識を積み重ねることができます。また、知識の関連性を示すことで、学習者は異なる分野やテーマ間のつながりを理解しやすくなります。さらに、学習者の理解度や進度に応じて、柔軟に内容を調整することも重要です。これには、段階的な評価やフィードバックを取り入れることが有効です。知識の構造化は、単なる情報の羅列ではなく、学習者の理解を促進し、長期的な定着を図るための設計思想です。効果的なカリキュラム設計においては、知識の階層化と関連付けを意識し、学習者が主体的に学びを進められる環境を整えることが求められます。
3.課題
① 知識の階層化と関連付けの違いについて説明し、それぞれのメリットとデメリットを具体例を交えて述べよ。
② ある科目(例:生物学)の学習内容を階層構造で整理し、どのように段階的に学習を進める設計にするか、具体的なカリキュラム例を作成せよ。
③ 学習者の理解度や進度に応じて知識の構造化を調整する方法について、具体的な工夫や評価方法を提案せよ。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
提出文書様式
1.学校DX戦略コーディネータ特論(Ⅲ)テキスト(様式)(Word版)
2.学校DX戦略コーディネータ特論(Ⅲ)プレゼン様式(pptx版)
3.動画の作成(各講20分程度)
動画作成の方法について
【公開講座】デジタルアーカイブ概論【Ⅱ】 ~ デジタルアーカイブにおける新たな価値創造 ~
Ⅰ はじめに
デジタルアーカイブは,さまざまな分野で必要とされる資料を記録・保存・発信・評価する重要なプロセスである.このデジタルアーカイブは,わが国の知識基盤社会を支えるものであり,デジタルアーカイブ学会でも,デジタルアーカイブ立国に向けて「デジタルアーカイブ基盤基本法(仮称)」などの法整備への政策提言を積極的に行っている.今後,知識基盤社会おいてデジタルアーカイブについて責任をもって実践できる専門職であるデジタルアーキビストが必要とされている.ここでは,デジタルアーキビストの学術的な基礎として,デジタルアーカイブに関する歴史から我が国の動向並びにデジタルアーカイブの課題を学ぶ.また,この内容は,今後の学修におけるデジタルアーキビストの学びの地図となる.
Ⅱ 授業の目的・ねらい
・この授業は全15講に分かれて論述している.各講における参考文献並びに関連情報は,横のQRコードで示してある.各講においてこれらの参考文献などを読み込んで発展的な学修ができるように構成されている.
・各講の最後に研究課題が設定されており,個別で学修する場合にも,集団で学修する場合においても学修を深めるために主体的に研究課題を考えることが重要である.
・解が見えない地域課題を主体的に探求し,深化させ課題の本質を探り実践的な解決方法を導き出すための手法を研究する.
Ⅲ 授業の教育目標
・日本の目指す知識基盤社会を支えるのはデジタルアーカイブといっても過言ではありません.初期の文化遺産を中心とした展示やウェブ公開など提示中心から,いかに社会の全領域で知的生産やナレッジマネジメントに活用できるインターフェイス,横断的ネットワークなどの環境を確保するかの段階に入ったといえます.
・ここでは,15のテーマに基づいて,それぞれのテーマの中に研究課題を設定し,また,各講に学修到達目標を設定し,個々に学修の到達を確認することができる.
第1講 デジタルアーカイブの歴史とその課題
久世 均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
デジタルアーカイブの日本にける歴史と本学のデジタルアーカイブの変遷を比較しながら,どのような点が明らかになり,新たにどのような課題が創出されたのかについて考える.
2.学修到達目標
・デジタルアーカイブの歴史について説明できる.
・知識基盤社会におけるデジタルアーカイブの必要性について事例をあげて説明できる.
3.研究課題
・デジタルアーカイブの歴史をまとめて,何が変化して何が課題になっているかを話し合ってみなさい.
4.プレゼン資料
5.映像
6.資料
第2講 デジタルアーカイブプロセス
久世 均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
2000年代における第1次のデジタルアーカイブブームの現在の状況を見て,第1次のデジタルアーカイブブーム(デジタルアーカイブ1.0)のプロセスから何が問題で,今後何をどのように改善することが持続可能なデジタルアーカイブ(デジタルアーカイブ2.0)を開発するために必要であるかについて考える.
2.学修到達目標
・「Wonder沖縄」におけるWeb用コンテンツがなぜ消滅したかについて説明できる.
3.研究課題
・「Wonder沖縄」のアーカイブプロセスでは何が足りなかったのか.どうすれば持続可能になったのかを考えなさい.
4.プレゼン資料
5.映像
第3講 知のデジタルアーカイブ
久世 均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
知のデジタルアーカイブに関する研究会により知のデジタルアーカイブ ―社会の知識インフラの拡充に向けて―(2012年3月30日)という提言がされ,システム(技術),人材育成,災害の3テーマに焦点を当てたグループを構成して議論を行った.こうした議論から,デジタルアーカイブのための技術,知識,ノウハウの共有の重要性,デジタル・ネットワーク社会に適合したデジタルアーカイブ連携の必要性について考える.
2.学修到達目標
・知のデジタルアーカイブの提言について説明できる.
・MLA連携などデジタルアーカイブの連携の必要性について説明できる.
3.研究課題
・知のデジタルアーカイブの提言を受けて博物館・図書館・公文書館の現状と課題について論述しなさい.
4.プレゼン資料
5.映像
6.資料
知のデジタルアーカイブ
第4講 デジタルアーカイブの構築・連携のためのガイドライン
久世 均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
デジタルアーカイブの構築・連携のためのガイドライン(2012年3月26日)が総務省から提言されている.ここでは,図書・出版物,公文書,美術品・博物品,歴史資料等公共的な知 的資産の総デジタル化を進め,インターネット上で電子情報として共有・利用できる仕組みを 構築し,知の地域づくりを推進するため,地域の知の記録組織で活用することを提言している.ここでは,インターネット上で電子情報として共有・利用できる仕組みを 構築し,知の地域づくりを推進することを考える.
2.学修到達目標
・知の地域づくりの推進するために必要なことは何かを説明できる.
・デジタルアーカイブの構築・連携において大切なことを説明できる.
3.研究課題
・デジタルアーカイブの構築・連携のためのガイドラインをよく読んで,それぞれの組織のデジタルアーカイブ構築・連携の手引きを完成しなさい.
4.プレゼン資料
5.映像
6.資料
第5講 知の増殖型サイクルの情報処理システムの構成
久世 均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
デジタルアーカイブのプロセスとして,知的創造サイクルをデジタルアーカイブに当てはめた知の増殖型サイクルを開発した.ここではこのシステムについて理解する.このためには,知の増殖型サイクルにおけるデータ分析・解析・加工処理システムなどのスキルやその考え方を知る必要がある.ここでは,これらのデータ処理における留意事項について解説する.
2.学修到達目標
・デジタルアーカイブのプロセスとして,知的創造サイクルをデジタルアーカイブに当てはめた知の増殖型サイクルについて説明できる.
3.研究課題
・知の増殖型サイクルにおけるメタデータの項目を作成してみなさい.なお,その際にDublin Core(ダブリン・コア)に配慮すること.
4.プレゼン資料
5.映像
第6講 知の増殖型サイクルの知的処理と流通システム
久世 均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
デジタルアーカイブにおける知の増殖型サイクルの構成は,資料の保管,検索,分析処理とその結果の利用という閉じたサイクルとして成立つものである.そのためには,利用の計画,活用,評価の面のみではなく,知の増殖型サイクルで最も重要なデジタルアーカイブの保管,メタデータ,検索,抽出,提示,分析,解析処理についても研究する必要がある.また,このデジタルアーカイブを用いた知の増殖型サイクルでは,利用目的に対し,いかに適した資料を検索し,分析・解析・加工処理して提供できるかが重要である.ここでは,知の増殖型サイクルが何回もサイクルを繰り返すことにより,新しい知が各サイクルに追加され,より精度の良いデータの利用が可能になる.ここでは,いかに適した資料を検索し,分析・解析・加工処理して提供できるかという視点から,横断検索やサイクル処理を支えるメタデータ,また,知的処理に対応した著作権,プライバシーの問題及び検索結果の選定・提供における課題を考える.
2.学修到達目標
・デジタルアーカイブにおける知の増殖型サイクルの構成を説明できる.
3.研究課題
・「沖縄おぅらい」における知の増殖型サイクルはどのように構成されるか述べなさい.
・沖縄の学力向上における知の増殖型サイクルとは,どのようなサイクルになるか論じなさい.(参考:沖縄における教育資料デジタルアーカイブを活用した学力向上について)
4.プレゼン資料
5.映像
第7講 知の増殖型サイクルを支えるメタデータの構成
久世 均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
知の増殖型サイクルでは,新たな知を創造することが重要であり,また,その新たな知をデジタルアーカイブする閉じたサイクルである.そのために,新たにメタデータをその新たな地に対応した項目を追加し,ここでダイナミックなメタデータを提案する.
2.学修到達目標
・地域資源のメタデータの構成について説明できる.
3.研究課題
・地域資源のデジタルアーカイブのメタ情報の項目を考えてみなさい.そのうえで,それらの項目がなぜ必要なのか利用を考えて論述しなさい.
4.プレゼン資料
5.映像
第8講 我が国におけるデジタルアーカイブ推進の方向性
久世 均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
平成 29 年4月に「我が国におけるデジタルアーカイブ推進の方向性」がデジタルアーカイブの連携に関する 関係省庁等連絡会・実務者協議会より提言された.この新たな提言で新たに追加されたデジタルアーカイブの考え方について考える.
2.学修到達目標
・デジタルアーカイブ社会について説明できる.
・オープンなデジタルコンテンツの必要性について具体例を挙げて説明できる.
3.研究課題
・デジタルコンテンツのオープン化と著作権はどうしても利害が衝突する.デジタルアーカイブ社会においてオープンデータ化はなぜ必要で,そのために著作権をどのように改正する必要があるかについて論述しなさい.
4.プレゼン資料
5.映像
6.資料
第9講 デジタルアーカイブの構築・共有・活用ガイドライン
久世 均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
平成29年4月に「デジタルアーカイブの構築・共有・活用ガイドライン」がデジタルアーカイブの連携に関する 関係省庁等連絡会・実務者協議会にてまとめられた.ここでは,博物館・美術館,図書館,文書館といった文化的施設に加えて,大学・研究機関,企業,市民団体,官公庁・地方公共団体などの有形・無形の様々なコンテンツを保有する機関・団体等を対象に,業務にもサービスにも役立つデジタル情報資源の整備・運用方法について報告している.ここでは,各機関におけるデジタルアーカイブの構築・共有・活用について考える.
2.学修到達目標
・デジタルアーカイブの構築・提供ついて説明できる.
・アーカイブ機関が無理なくデータを整備・共有・連携できる共通基盤(プラットフォーム)の構築について,その機能を具体的に説明できる.
3.研究課題
・活用する場合は,メタデータを共有することで,様々なアプリの提供,付加価値の追加等を通じて,活用を行い,その成果物を保存・共有領域に還元し,再資源化することも期待されると報告されている.そのためには,具体的に何をすることが必要になるか述べよ.
4.プレゼン資料
5.映像
6.資料
デジタルアーカイブジャパン推進委員会及び実務者検討委員会
3か年総括報告書 我が国が目指すデジタルアーカイブ社会の実現に向けて
第10講 知的財産推進計画に見るデジタルアーカイブ
久世 均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
知的財産戦略本部より知的財産推進計画2017(2017年5月)が発表され,そこには,「我が国の知や文化資源を結集し,世界中に発信しながら新たな価値創造につなげることができるデジタルアーカイブの構築とその利活用について,計画的に推進していくことが必要である」と,デジタルアーカイブに関する記述が増加していることを見ることができる.知的財産推進計画の目的と今後の方向性について考える.
2.学修到達目標
・知的財産推進計画を理解し説明できる.
・新たな価値創造とデジタルアーカイブの構築について具体例を出して説明できる.
3.研究課題
・知的財産推進計画とデジタルアーカイブとの関係を明確にして,知的財産計画の目的について論述しなさい.
4.プレゼン資料
5.映像
6.資料
第11講 地域資源デジタルアーカイブによる知の拠点の形成
久世 均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
知識基盤社会においてデジタルアーカイブを有効的に活用し,新たな知を創造するという本学独自の「知の増殖型サイクル」の手法により,地域課題に実践的な解決方法を確立するために,地域に開かれた地域資源デジタルアーカイブによる知の拠点形成をする.このことにより,地域課題に主体的に取り組む人材を養成する大学として,伝統文化産業の振興と新たな観光資源の発掘並びにデジタルアーカイブ研究による地方創成イノベーションの創出を行う.
2.学修到達目標
・デジタルアーカイブと地域課題解決について説明できる.
・地方創成イノベーションの創出について具体的に説明できる.
3.研究課題
・飛騨高山匠の技デジタルアーカイブにより,地域の文化産業を振興するための方策を3つ挙げて論述しなさい.
4.プレゼン資料
5.映像
6.資料
第12講 知の拠点形成のための基盤整備
久世 均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
知識基盤社会においてデジタルアーカイブを有効的に活用し,新たな知を創造するという岐阜女子大学独自の「知の増殖型サイクル」の手法により,地域課題に実践的な解決方法を確立するために,地域に開かれた地域資源デジタルアーカイブによる知の拠点形成のための基盤整備が必要となる.このことにより,地方創成イノベーションの実現と伝統文化産業の振興並びに新たな観光資源の発掘を行うことができることを考える.
2.学修到達目標
・知識基盤社会とデジタルアーカイブの関係について説明できる.
・知識循環型社会について具体的に説明できる.
・地域課題の解決とデジタルアーカイブについて説明できる.
3.研究課題
・大学が地域の知の拠点形成のための基盤整備に必要な要素は何か論述しなさい.
4.プレゼン資料
5.映像
6.資料
第13講 デジタルアーカイブにおける新たな評価法
久世 均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
20017年10月,Europeanaより評価方法の新規開発プロジェクトの成果物として“Impact Playbook: For Museums, Libraries, Archives and Galleries”(以下プレイブック)の第一部が公開された.プレイブックは「インパクト評価」を実施するための手順・方法をまとめた一種のガイドラインであり,Europeanaだけでなく,その参加機関である欧州各域の図書館・博物館・公文書館・ギャラリー等が各々のデジタルアーカイブ関連事業の持つ多様な価値を各々の見方で評価し,かつその評価結果を他者と共有できるようにするための「共通言語」としての役割を果たすという.筑波大学大学院図書館情報メディア研究科・西川開氏によると,インパクト評価はもともと環境分野で発達した評価方法であると言われており,その後公衆衛生や社会福祉事業などの諸領域にも普及・発展してきた.近年では公的助成金の減額等を背景として図書館を始めとする文化機関においても自組織の持続可能な発展に資する手段として注目を集めている.
2.学修到達目標
・新たな評価法であるインパクト評価について具体的に説明できる.
3.研究課題
・デジタルアーカイブの新しい評価について論述しなさい.
4.プレゼン資料
5.映像
第14講 デジタルアーカイブを活用した地域課題の解決手法
久世 均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
飛騨高山匠の技の歴史は古く,古代の律令制度下では,匠丁(木工技術者)として徴用され,多くの神社仏閣の建立に関わり,平城京・平安京の造営においても活躍したと伝えられている.しかし,現在の匠の技術や製品についても,これら伝統文化産業における後継者の問題や海外への展開,地域アイデンティティの復活など匠の技を取り巻く解が見えない課題が山積している.ここでは,知識基盤社会におけるデジタルアーカイブを有効的に活用し,新たな知を創造するという本学独自の「知の増殖型サイクル」の手法により,これらの地域課題に実践的な解決方法を確立するために,「知的創造サイクル」をデジタルアーカイブに応用して飛騨高山の匠の技に関する総合的な地域文化の創造を進めるデジタルアーカイブの新たな評価指標ついて考える.
2.学修到達目標
・「知の増殖型サイクル」の手法による地域課題に実践的な解決方法を確立することについて説明できる.
3.研究課題
・住民R(Resident)-地域資源L(Local Resources)認知度診断表から何がわかるか論述してみなさい.
4.プレゼン資料
5.映像
第15講 首里城の復元とデジタルアーカイブの可能性
久世 均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
鎌倉芳太郎は沖縄で撮影したガラス乾板を自身の避難先である防空壕で保管していたという.これら保存されていた資料が,首里城復元において大きな役割を果たしたという事実は,「知の増殖型サイクル」の考え方に当てはめることができる.首里城復元の際に利用された鎌倉資料は原資料であり,デジタルアーカイブではない.しかし,「知の増殖型サイクル」に適応することで,これからのデジタルアーカイブの在り方が見えてくる.
2.学修到達目標
・鎌倉芳太郎と首里城復元の過程で説明できる.
・デジタルアーカイブという視点から鎌倉芳太郎資料集について説明できる.
3.研究課題
・首里城の復元に鎌倉芳太郎の資料が重要であったかについてデジタルアーカイブの視点で論述しなさい.
4.プレゼン資料
5.映像
資料
Ⅳ 課題
課題1
テーマ1からテーマ8の中で,興味を持った研究課題についてさらに詳しく調べA4用紙1ページにまとめよ.
課題2
テーマ9からテーマ15の中で,興味を持った研究課題についてさらに詳しく調べA4用紙1ページにまとめてよ.
Ⅴ アドバイス
課題1解説
テキスト並びに参考文献を参考に論述しなさい.
課題2解説
テキスト並びに参考文献を参考に論述しなさい.
Ⅶ テキスト
1.学修ガイドブック
デジタルアーカイブ特講Ⅱガイドブック
久世均著:情報の管理と流通 岐阜女子大学 2020
1.表紙&奥付
2.目次
3.デジタルアーカイブ特講
年表
4.年表
Ⅷ タキソノミーテーブル(教育目標の分類体系:タキソノミー)
【公開講座】学校DX戦略コーディネータ概論【Ⅳ】 ~ 教育DX時代における教材開発 ~
Ⅰ はじめに
最近の情報技術等の進展に伴い,多様な学習者に対応した多方向から撮影した教材化の開発がなされてきた.また,高品位で大容量の記録も安価で可能になり,また大容量記憶装置や高速ネットワークが急速に進み,映像教材も高品位で大容量の配信が可能になった.従来の学習教材の撮影方法や記録方法は,単方向からの撮影・記録が主なものであり,撮影方向には教材作成者の撮影意図 が多く反映されていた.
今後,多様な学習者に対応した映像の教材化を考えると,これまでの単方向を主として撮影・記録されてきたものから,多様な視点で教材を提示することが必要となる.そこで,本研究は,学習教材を多方向同時撮影することにより多視点映像として教材化し,多視点映像教材の教育利用・研究での課題について考える.
Ⅱ 授業の目的・ねらい
・この授業は全15講に分かれて論述している.各講における参考文献並びに関連情報は,横のQRコードで示してある.
各講においてこれらの参考文献などを読み込んで発展的な学修ができるように構成されている.
・各講の最後に研究課題が設定されており,個別で学修する場合にも,集団で学修する場合においても学修を深めるため
に主体的に研究課題を考えることが重要である.
・多視点映像教材の開発を主体的に探求し,深化させ課題の本質を探り教材作成手法を導き出すための手法を研究する.
Ⅲ 授業の教育目標
学習教材を選定・開発するに当たっては,多視点映像教材の活用により児童生徒が自ら考えることができるようにするなどの教育効果を高めるため,身近な事柄を取り上げたり,児童生徒の興味・関心等を生かしたりするなどの教材作成を行う.なお,学習教材の選定・開発に際しては,児童生徒の発達段階を十分考慮すると共に,その内容を公正な観点から吟味する.さらに,例えば身近な事柄を取り上げる場合など教材の内容によっては,プライバシーの保護等にも十分配慮することを理解する.
第1講 多視点映像教材と複眼的思考法
久世均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
学習教材を多方向同時撮影することにより多視点映像として教材化し,多視点映像教材の教育利用・研究での課題について考える.
2.学修到達目標
・多視点映像教材について説明できる.
・多視点映像教材の教育利用について具体例を示して説明できる.
・多視点映像教材と複眼的思考法との関係について説明できる.
3.課 題
1.多視点映像教材についてその効果と可能性について説明しなさい.
2.多視点映像教材の教育利用について,具体例を挙げて説明しなさい.
3.多視点映像教材を具体的に企画しなさい.
4.複眼的思考法と多視点映像教材の関係について具体例を挙げて説明しなさい.
4.プレゼン資料
5.動画教材
第2講 多視点映像教材と教えて考えさせる授業
久世均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
理科実験の学習で,児童が理科の実験方法を身につけるための支援として,児童・教師が簡単に操作でき,必要な部分を繰り返し見ることができる理科実験のデジタルコンテンツを考える.
2.学修到達目標
・小学校の理科における多視点映像教材の活用ついて説明できる.
・理科実験の学習における学習展開について具体的に説明できる.
・教えて考えさせる授業の学習展開について具体例を挙げて説明できる.
3.課 題
1.多視点映像教材の理科への活用についてその効果と可能性について説明しなさい.
2.理科実験の学習における学習展開について具体的に説明しなさい.
3.教えて考えさせる授業の学習展開について具体的に指導案を作成しなさい.
4.プレゼン資料
5.動画教材
第3講 表示映像の違いは理解度に影響を与えるか
久世均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
高山での遠隔親子教室を例に表示視点の違いが理解度に与える影響に関する調査をしたので,この調査結果の分析と今後の課題について考える.
2.学修到達目標
・表示映像の違いが理解度に与える影響について説明できる.
・遠隔学習における多視点映像の効果について具体的に説明できる.
3.課 題
1.表示映像の違いが理解度に与える影響について具体例を挙げて説明しなさい.
2.遠隔学習における多視点映像の効果について具体的に説明しなさい.
3.遠隔学習における多視点映像を配信する効果について具体的に説明しなさい.
4.プレゼン資料
5.動画教材
第4講 多視点映像教材による主体的な学習の支援
久世均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
小学校における器械運動の学習で,児童が自己の能力に適した技を選んで主体的に身につけるための支援として,児童・教師が簡単に操作でき,必要な部分を繰り返し見ることができる模範演技のデジタルコンテンツを考える.
2.学修到達目標
・小学校の器械体操における多視点映像教材の効果ついて説明できる.
・主体的な学習と多視点映像教材との関係について説明できる.
3.課 題
1.小学校の器械体操における多視点映像教材の効果ついて具体的に説明しなさい.
2.主体的な学習と多視点映像教材との関係について具体的に説明しなさい.
3.個別最適な学びにおける多視点映像の効果について具体例を挙げて説明しなさい.
4.プレゼン資料
5.動画教材
第5講 伝統と文化の視点を考える
久世均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
地域の伝統文化に関する“知”の伝承サイクルを支援するためのデジタルアーカイブの技術的考察を沖縄の「獅子舞・エイサー」を例にして考える。
2.学修到達目標
・伝統文化教材の作成に関する視点を説明できる.
・伝統文化の多視点映像教材の作成手順を説明できる.
3.課 題
1.伝統文化教材の作成に関する視点を具体的に説明しなさい.
2.伝統文化の多視点映像教材の作成手順を作成しなさい.
3.地域の伝統文化を教材化した指導案を作成しなさい.
4.プレゼン資料
5.動画教材
第6講 授業技術の対象化とデジタルアーカイブ
久世均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
多視点映像教材を用いた授業や自己学習教材としての利用方法等の総合的な教材化の開発が,多様な学習者に対応した映像の教材化の開発として重要である.そこで,多視点映像の授業技術の対象化について考える.
2.学修到達目標
・授業技術の対象化とは何か説明できる.
・授業実践を多視点で撮影する利点について説明できる.
3.課 題
1.実践的な教師力とは何か説明しなさい.
2.授業実践を多視点で撮影する利点について説明しなさい.
3.授業実践を多視点で撮影する企画書作成しなさい.
4.授業技術の対象化とは何か説明しなさい.
4.プレゼン資料
5.動画教材
第7講 「伝統」と「文化」の同時代性と創造
久世均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
地域の伝統と文化に関する“知”の伝承サイクルを支援するために,沖縄の伝統と文化に関して,我が国の政策を整理し,「伝統と文化」を教育に取り入れる必要性について考える.
2.学修到達目標
・学校教育における伝統と文化について説明できる.
・伝統と文化教育の歴史について説明できる.
3.課 題
1.学校教育における伝統と文化について具体的に説明しなさい.
2.伝統と文化教育の歴史についてについて具体例を挙げながら説明しなさい.
3.学校で「伝統と文化」の教育を行うために必要と思われる教材を考えて一覧表を作成しなさい.
4.プレゼン資料
5.動画教材
第8講 「できる授業」と「わかる授業」
久世均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
体育(本研究では器械運動)の指導で活用する上で大切なことは,児童に「お手本」を示す際,技能のポイントなどがわかりやすい資料(映像)を提示できるか,児童が運動に対してより理解を深め,仲間とともに課題解決に向けて主体的に取り組んでいくときに,ICT を活用できるような環境を整えて指導ができるかということを考える.
2.学修到達目標
・体育教科における ICT 活用について具体的な事例を挙げて説明できる.
・体育における教材について企画し設計できる.
3.課 題
1.体育教科における ICT 活用について具体的な事例を挙げて説明しなさい.
2.体育における教材について企画し設計しなさい.
3.自分で自分のフォームを撮影し,主体的に学ぶという指導案を作成しなさい.
4.プレゼン資料
5.動画教材
第9講 複眼的思考法により主体的な学習を伸ばす
久世均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
見たい視点を自分で選択でき,横や正面等自分では客観視することのできない視点からの映像を見ることで,跳び方のイメージを持つことが容易になり,主体的に跳び箱学習を楽しむことができるようになることについて考える.
2.学修到達目標
・主体的な学習態度を育てることについて具体的に例を挙げて説明できる.
・主体的な学習態度を育成するために,どのように多視点教材を活用すればよいか説明できる.
3.課 題
1.主体的な学習態度を育てることについて具体的に例を挙げて説明しなさい.
2.主体的な学習態度を育成するために,どのように多視点教材を活用すればよいか説明しなさい.
3.主体的な学習態度を育成するための教材活用事例を作成しなさい.
4.プレゼン資料
5.動画教材
第10講 教えて考えさせる授業の展開
久世均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
小学校理科における児童の多視点映像教材を活用した実験支援方法に関する研究を通じて,教えて考えさせる授業の展開について考える.
2.学修到達目標
・多視点映像教材の処理方法について順を追って説明できる.
・多視点映像教材を使った“教えて考えさせる授業”への展開について説明できる.
3.課 題
1.多視点映像教材の処理方法について順を追って説明しなさい.
2.多視点映像教材を使った教えて考えさせる授業への展開について説明しなさい.
3.マルチアングル映像と多視点映像の違いと特徴を説明しなさい.
4.プレゼン資料
5.動画教材
第11講 単視点映像と多視点映像の違いを考える
久世均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
小学校教育においては,授業は担任の教師が全ての科目を担当している.つまり教師の専門外の科目でも教えなければならない.専門家でなくても授業を円滑に進めることが大変重視される.そこで誰でも簡単に操作ができ,尚且つ授業を進めるうえでの手助けとなる書写の授業のための教材開発を考える.
2.学修到達目標
・書写教育における多視点映像の必要性について説明できる.
・書写教育においてどこからの視点が効果的か説明できる.
3.課 題
1.書写教育における多視点映像の必要性について具体例を挙げて説明しなさい.
2.書写教育においてどこからの視点が効果的かを具体的に説明しなさい.
3.書写教育における多視点映像教材の企画書を作成しなさい.
4.プレゼン資料
5.動画教材
第12講 授業をデジタルアーカイブする
久世均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
日本の授業のみならず具体的に諸外国の授業をアーカイブ化し,長期保存を考えデジタルアーカイブ手法による関連教育資料の構成について考える.
2.学修到達目標
・授業分析に必要な教育資料の構成について説明できる.
・授業分析手法について具体的に説明できる.
3.課 題
1.授業分析に必要な教育資料の構成について具体例を挙げて説明しなさい.
2.授業分析手法について具体的に説明しなさい.
3.英国の授業分析を右の授業アーカイブプロジェクトの例に倣って,行ってみなさい.
4.プレゼン資料
5.動画教材
第13講 多視点映像教材の流通を考える
久世均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
多様な学習者に対応した映像の教材化を考えると,これまでの単方向を主として撮影・記録されてきたものから,多様な視点で教材を提示・流通することを考える.
2.学修到達目標
・多視点映像教材の教育利用とその効果について説明できる.
・単視点と多視点の映像教材の違いについて説明できる.
・多視点映像教材の有効的な流通方法について説明できる.
3.課 題
1.多視点映像教材の教育利用とその効果について具体的な例を挙げて説明しなさい.
2.単視点と多視点を比較し映像教材の違いについて説明しなさい.
3.多視点映像教材とするとよい教育の対象を説明し,多視点映像教材の企画書を作成しなさい.
4.多視点映像教材の有効的な流通方法について説明しなさい.
4.プレゼン資料
5.動画教材
第14講 遠隔学習における多視点映像の評価法
久世均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
高山での遠隔親子教室を例にアンケートを実施したので,このアンケート結果の分析と今後の課題について考える.
2.学修到達目標
・遠隔学習において動く紙おもちゃのどの視点を配信するとよいか,その学習シーンを想定して説明できる.
・目的に対応したアンケート調査用紙を作成できる.
3.課 題
1.遠隔学習において動く紙おもちゃのどの視点を配信するとよいか,その学習シーンを想定して設計しなさい.
2.遠隔学習における学習効果のアンケート調査用紙を作成しなさい.
3.遠隔学習において教師はどのようなことに配慮して指導することが必要か具体的に説明しなさい.
4.プレゼン資料
5.動画教材
第15講 多視点映像で変える授業
久世均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
岐阜と沖縄の親子教室で,親子を対象に意識調査を実施したので,この意識調査の結果の分析と今後の課題について考える.
2.学修到達目標
・意識調査の必要性について説明できる.
・子どもを対象にした調査の留意点について説明できる.
3.課 題
1.意識調査の必要性について具体的に説明しなさい.
2.子どもを対象にした調査の留意点について具体例を挙げて説明しなさい.
4.プレゼン資料
5.動画教材
第16講 コミュニケーションを可視化する
久世均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
このような活動を教育として適用するためには,活動についての親子の状況を調査し,親子の共同学習として,どのような指導方法,展開をさせるか検討する必要がある.そこで,この「動く紙おもちゃ作り」の教材化と意識の調査を考える.
2.学修到達目標
・コミュニケーションの定義について説明できる.
・コミュニケーションを促す講座の設計について説明できる.
3.課 題
1.コミュニケーションの定義について説明しなさい.
2.コミュニケーションを促す講座を設計しなさい.
3.コミュニケーションに関する独自の調査用紙を作成しなさい.
4.プレゼン資料
5.動画教材
第17講 コミュニケーションを分析する
久世均(岐阜女子大学・教授)
1.何を学ぶか
講師の提示と親子のコミュニケーションによる直接・間接的影響について量的分析を考える.
2.学修到達目標
・フランダースの相互分析カテゴリーシステムについて説明できる.
・コミュニケーションを可視化する方法について説明できる.
3.課 題
1.フランダースの相互分析カテゴリーシステムについて説明しなさい.
2.コミュニケーションを可視化する方法について具体的に説明しなさい.
3.コミュニケーション分析を実際に行ってみなさい.
4.プレゼン資料
5.動画教材
Ⅳ 総合課題
課題1 第1から第8講の中で,興味を持った研究課題についてさらに詳しく調べA4用紙1ページにまとめよ.
課題2 第9から第17講の中で,興味を持った研究課題についてさらに詳しく調べA4用紙1ページにまとめてよ.
Ⅴ アドバイス
課題1解説 テキスト並びに参考文献を参考に論述しなさい.
課題2解説 テキスト並びに参考文献を参考に論述しなさい.
Ⅵ 教材リサーチⅡガイドブック
1.教材リサーチⅡガイドブック(PDF版)
2.教材リサーチⅡガイドブック(Word版)
Ⅶ テキスト
課題提出用
教材リサーチⅡ課題様式(docx)
Ⅷ 参考文献
主にテキストの中に記してある文献が参考になります.
Ⅷ タキソノミーテーブル(教育目標の分類体系:タキソノミー)
1.タキソノミーテーブル(教育目標の分類体系:タキソノミー)(PDF版)
2.タキソノミーテーブル(教育目標の分類体系:タキソノミー)(word版)
※本講座は、大学の授業をリニューアルしてあります。
デジタルアーキビスト講座 ~ デジタルアーカイブの起源と未来 ~
趣 旨:
デジタルアーキビストとは,文化・産業資源等の対象を理解し,著作権・肖像権・プライバシー等の権利処理を行い,デジタル化の知識と技能を持ち,収集・管理・保護・活用・創造を担当できる人材のことをいいます。
ここでは、デジタルアーキビスト資格と絡め知的財産人材の育成を行います。
プログラム:
1.「なぜ、デジタルアーカイブなのか? 地域創成とデジタルアーカイブ活用」
吉見俊哉氏(國學院大學教授・東京大学名誉教授)
動 画
資 料
内 容
1. メディアの歴史とデジタルアーカイブの登場
1.1. コミュニケーションの根源とメディアの誕生
人類の歴史において、ホモサピエンスが生き残った主要な理由は、比較的大きな集団でコミュニケーションをする動物だったことにあります。初期のコミュニケーションはジェスチャーや声によるもので、これらは身体的行為であり、まだメディアは存在しませんでした。メディアが誕生したのは、壁画や楽器の使用からであり、これは人間の身体的行為の技術的な拡張と言えます。そして、文字の発明は、コミュニケーション能力を決定的に変える転換点となりました。ロゼッタストーンはその象徴であり、異なる文字で同じメッセージを記録することで、古代文明の解読が大きく進んだ事例として紹介されました。
1.2. 時間性のメディアと空間性のメディア
カナダのトロント大学の学者ハルド・イニスは、人類史におけるメディアを二種類に分類しました。
時間性のメディア: 書かれたメッセージを、書き手が死んだ後も長い時間、継承・伝達していくメディア(例:石碑)。
空間性のメディア: ある情報を遠くの人に伝える、軽くて持ち運びしやすいメディア(例:パピルス、手紙)。
人類の歴史は、この二種類のメディアが共存しながら発展してきました。現代社会に当てはめると、インターネットは主に空間性のメディアであり、ネットワーク的に情報を共有する「集合知」を形成します。一方、デジタルアーカイブはまさに時間性のメディアであり、過去の記憶や知識を継承し、新しい知識を生み出す「記憶知」としての役割を担います。
1.3. メディア革命と知能の機械化
近代のメディア史における決定的な転換点は、15世紀半ばのグーテンベルクによる活版印刷の発明でした。これにより、同じ情報や知識が大量に複製・伝達されるようになり、近代社会の基礎を築きました。活版印刷は、情報の空間的・時間的な拡張を可能にしました。
さらに、メディア革命は2回起こったと指摘されました。
19世紀末から20世紀初頭: アナログ革命
蓄音機、電話機、映写機、ラジオ、放送ネットワークなどが生まれ、人間の視覚や聴覚を時間的・空間的に無限に拡張しました(例:映画、テレビ)。
20世紀末から21世紀: デジタル革命
コンピューターとインターネットの発展により、人間の視聴覚だけでなく、知能そのものを機械化する段階へと進みました。これは現在のAIの発展につながっています。
1.4. コンピューターの進化と記憶・更新の融合
コンピューターは、当初は純粋な計算機でしたが、やがてパーソナルコンピューターの普及とともに、人々が書いたものや写真を記憶し、再生する装置へと変化しました。そして1990年代にインターネットが爆発的に発展すると、コンピューターは情報を記憶するだけでなく、人々が遠隔地と更新(やり取り)する機械へと進化しました。
現在のAIは、この「記憶する」機能と「更新する」機能が融合したものです。人々が蓄積した記憶情報に基づいて、ディープラーニングを通じて対話する能力を持つようになりました。しかし、この記憶と更新の融合はAIに留まらず、私たちがデジタルで記憶したものをネット社会でいかに共有していくかという問い、すなわちデジタルアーカイブの問いへと繋がっていくと述べています。
2. デジタルアーカイブの定義と現代社会における意義
2.1. アーカイブの歴史的変遷と権力との関係
アーカイブの要件は以下の通りです。
歴史的記録の集積: 個人や組織がその存続期間を通じて生み出した一時的記録の総体。
唯一性: 図書館が複製された本を収集するのに対し、アーカイブは基本的に複製されない唯一性を持つ資料が中心。
アーカイブの概念は古代ギリシャに遡り、「アルコンの住まい」、すなわちポリスの最高統治者(権力者)の家を意味しました。権力者は記録を管理することで支配を行使したため、アーカイブは当初から**権力者の「全てを見渡す権力」**と深く結びついていました。古代中国、ギリシャ、中世ヨーロッパにおいて、アーカイブの中心は常に権力側(宮廷や修道院)でした。
この構図が劇的に転換したのがフランス革命です。王権から権力が奪われたことで、アーカイブは王のアーカイブから国民のアーカイブへと大きく転換し、「ナショナルアーカイブ」のシステムが各国で発展しました。日本においては、このような国民のアーカイブという意識や仕組みが十分に発達してこなかったことが大きな問題であると指摘されました。
2.2. デリダのアーカイブ論と知識の二側面
フランスの哲学者ジャック・デリダは、著書『アーカイブの病』の中でアーカイブには二側面あると議論しました。
掟としてのアーカイブ: 権力者が記録を管理し、権力を掌握する側面。
始まりとしてのアーカイブ(生成としてのアーカイブ): 新しい知識や創造が生まれる場としての側面。
これをより分かりやすく説明するために、「形式知」と「暗黙知」という知識の形式が持ち出されました。
形式知: 言葉によって書かれ、記録として残された知識(例:オーラルヒストリー、個人文書、論文など)。図書館や文書館に収められるのはこの形式知が中心。
暗黙知: 言葉にならない、あるいは断片的ながら、あらゆる知識の源となる知識(例:日常会話、会議中のメモ、試行錯誤のプロセス)。
知識は、暗黙知レベルの無数のコミュニケーションの中から生まれ、最終的に形式知として記録されます。この循環がアーカイブのプロセスの中に常に存在していると説明されました。
2.3. デジタル革命によるアーカイブの変革
20世紀末から21世紀にかけてのデジタル革命は、アーカイブのあり方を劇的に変えました。
境界の消失:
文書館と図書館の区別: 活版印刷以降、複製された書籍を収蔵する図書館と、唯一性を持つ原資料を収蔵する文書館は明確に区別されていました。しかし、デジタル化により、文書も本もスキャンされれば無限に複製可能になり、両者の区別が意味を失いました。
アーカイブ機関間の境界: 図書館、文書館、博物館、美術館といった従来の制度的な境界線が、デジタル化によって溶解しました。デジタルデータとしては全て同じ形式で保存可能になったため、それぞれの機関に属さない写真、映画、録音テープ、設計図などの「文化的な資産」も全てデジタルアーカイブとして蓄積可能になりました。これは、全ての壁が溶解した先にデジタルアーカイブが登場したことを意味します。
制作プロセスのアーカイブ化:
これまで図書館やミュージアムは最終的な完成品を収蔵する施設でしたが、デジタル化により、暗黙知から形式知へと至る**知識や作品の「制作プロセス全体」**もデジタル形式で記録・収蔵可能になりました。これにより、アーカイブは単なる完成品の保管庫ではなく、新たな知的創造の場として再定義されつつあります。フィンランドのヘルシンキ中央図書館は、音楽スタジオや3Dプリンター工房などを併設し、制作プロセス全体をアーカイブ化している未来型の図書館として紹介されました。
このことから、デジタルアーカイブは、行政文書の保存・公開といった公的記録の集積庫としての従来の役割に加え、美術館、博物館、図書館の要素を取り込み、さらにこれまで取りこぼされてきた様々な文化資産(録音、写真、映像、電子データ、オーラルヒストリー、行動履歴など)をも記憶する装置として、公的な場の組織のあり方を問い直していると述べられました。
2.4. 日本社会の「痴呆症」とデジタルアーカイブの必要性
しかし、日本の現状は芳しくありません。フランスの国立映像研究所INAがほぼ全ての放送映像・録音資料を収蔵し公開しているのに対し、日本のNHKアーカイブスは大量のデジタルデータを修蔵しているものの、そのアクセスはNHK職員に限定されており、完全には開かれていません。
現代社会は、インターネットとSNSの発展により、個人の発信や様々な情報(マーケティング、医療情報など)が爆発的に膨らみ、「記憶の海」の中にいます。この情報過多の中で、フェイクニュース、フィルターバブル、ポストトゥルース、炎上、ポピュリズムといった問題が顕在化しています。
日本は特にこの問題が深刻です。過去を蓄積してこなかったため、**「痴呆症」**のような状態に陥っていると指摘されました。日本は常に「次の新しい動き」(マルチメディア、ビッグデータ、ソサエティ5.0、AIなど)に飛びつく「キャッチアップ型」の国であり、過去の蓄積に対して非常に不十分な姿勢をとってきました。公文書の改ざんすら行われる現状は、その根深い問題を象徴しています。過去から学べず、過去を知らない社会になっていると警鐘を鳴らしました。
この「痴呆症」は日本に限らず、インターネット社会が拡大する中で世界中に広がっている現象です。過去の記録を「巨人の肩」と見立て、その上に乗って初めて未来が見えるにもかかわらず、多くの社会は現在や未来のことばかり考えて空回りしていると述べました。
3. デジタルアーカイブの推進と「記憶する権利」
3.1. 縦軸としてのデジタルアーカイブ:「歴史のコモンズ」の構築
現代のネット社会は、情報が空間的に爆発的に広がる「集合知」の社会ですが、同時に「忘却の社会」でもあります。この横軸の広がりに対し、不足しているのが「縦軸」、すなわち**記憶する仕組み(記録知)**です。
近代社会では、図書館、博物館、美術館、文書館といった機関がこの縦軸の役割を担ってきましたが、デジタル化によってそれらがボーダーレス化し、爆発的に広がる可能性を秘めているにもかかわらず、それに対応するアーカイブの仕組みが整備されていません。この縦軸の仕組みが整備されれば、横軸に広がる情報やニュースの真偽を検証したり、過去の出来事をアーカイブの中で再検証したりすることが可能になり、「歴史のコモンズ」が形成されると述べました。
3.2. 日本におけるデジタルアーカイブの歩み
「デジタルアーカイブ」という言葉は和製英語であり、日本では1990年代初頭から尾崎紀男氏らが提唱しました。当時は、文化資産をデジタル化し、データベース化して保管し、ネットワークで発信する仕組みと定義されていました。アレクサンドリア図書館の再建計画や、米国のNII構想、G7での電子博物館構想など、国際的な動きと連動していました。
日本は、デジタル化やインターネット社会のビジョン、実証実験において、韓国や台湾、中国よりも早い時期から取り組んでいました。しかし、日本の社会の決定的な問題は、それらが制度化されたり、社会全体を変えるところまで至らなかったことです。部分的な新しい試みは行われるものの、予算がつかず忘れ去られ、社会全体の構造改革には繋がらないという問題を抱えています。デジタルアーカイブも同様で、90年代初頭に提唱されたものの、2000年代には忘れ去られ、一部の細々とした取り組み(文化遺産オンラインなど)が行われるに留まりました。
しかし、2010年代に入り、「このままではいけない」という意識が生まれました。1994年に長尾真氏(国立国会図書館館長、京都大学総長)が提唱した「電子図書館アリアドネの構想」が全く実現されていないことに危機感を抱き、2014年には「アーカイブ立国宣言」を発表しました。
3.3. アーカイブ立国宣言とデジタルアーカイブ学会の活動
アーカイブ立国宣言では、以下の4つの目標が掲げられました。
国立デジタルアーカイブセンターの設立
デジタルアーカイブを支える人材育成の仕組みの構築
文化資源のデジタルアーカイブのオープンデータ化
根本的な孤児作品(著作権者が不明な作品)の利用可能化対策
これらの実現を阻む「人、法、お金」の三つの壁を突破するための議論が行われました。その継続として、2015年にはアーカイブサミットが開催され、著作権とパブリックドメインのバランス、クリエイティブなアーキビストの育成、アーカイブの標準化・横断化・公開化、そしてそれらのハブとしての国立デジタルアーカイブセンターの設立が目標とされました。
これらの目標実現のため、様々な組織が設立されました。
デジタルアーカイブ学会: 現在会員数800人を超える主要な学術団体。
デジタルアーカイブ推進コンソーシアム(DAPCON): 凸版印刷、DNP、テラタコクといった企業との産学連携組織。
デジタルアーカイブ研究機関連絡会: 博物館、美術館、図書館といった連携機関。
デジタルアーカイブ推進議員連盟: 国会への働きかけのための組織。
学会の役割として、学術発表・交流の場、研究テーマの推進、社会問題への声明発表に加え、「学術的知見に基づき世界的な理念を提起する」ことを挙げ、その柱として「デジタルアーカイブ憲章」を提唱すべきだと述べました。
3.4. デジタルアーカイブ憲章:「記憶する権利」の提唱
「チャーター(検証)」とは、古くはマグナ・カルタ(13世紀、王権の制限と諸侯・都市の自由を認めた英国憲法の原点)に始まり、人民憲章(19世紀、普通選挙運動)、世界労働憲章、国連人権憲章など、市民や民衆が国家や権力に対して、あるべき制度を求める「下からの憲法」のようなものだと説明されました。
松尾氏は、このチャーターの概念がデジタルアーカイブにも必要だと主張します。デジタル革命以前のマスメディア社会では、情報公開とプライバシーの対立が常に議論されてきました。しかし、ネット社会に移行した今、一方では忘れられる権利(個人の情報がいつまでもネット上に残りハラスメント状態になることを防ぐ)が必要であると同時に、他方で社会には「記憶する権利」があるはずだと訴えました。
「記憶する権利」とは、何が実際に起こったのかがデジタル社会で分からなくなることを防ぎ、市民一人ひとりの個人や地域社会、公的機関、国家に至るまで、その記憶を社会の記憶として蓄積する仕組みが整備されるべきであるという考え方です。これにより、アーキビストは「市民の記憶する権利を媒介する媒介者」として再定義されるべきだと述べました。
デジタルアーカイブ学会は、この考え方に基づいて「デジタルアーカイブ憲章」を定めています。その基本理念は、「市民生活を豊かにする公共的知識基盤には、信頼性があり、知識や情報が構造化・体系化されており、ユニバーサル化により言語的・社会的障壁がなく、ネットワーク化により恒常的に効率よくアクセスできる仕組みが必要である」としています。
そして、「記憶する権利」をその根本理念とし、プライバシーや知的財産権に配慮しつつ、過去および現在の知識や情報を記録し、社会に残し、未来に継承する仕組みを整える必要性を強調しました。
デジタルアーカイブ憲章の具体的な行動指針として、以下の項目が挙げられました。
デジタルアーキビストの使命: 提供者と活用者を含む幅広い主体の声を聞き、主体的な参加を促す。情報資産をオンラインで公開し、再利用可能な条件を設定し、相互利用しやすい技術を整える。
社会制度の整備: 方針・計画の策定・見直し、適切な法整備と財政的措置を働きかける。
信頼性の確保: データの由来や改変履歴が把握できるトレサビリティの仕組みやメタデータの充実を促す。
体系性の確保: FAIR原則に基づき、収集した情報資産を構造化・体系化し、誰でも利用しやすい形に整理・提供する。
恒常性の保証: デジタル資源の長期保存とアクセスを保証するためのコミュニティ基盤を構築する。
ユニバーサル化: 多言語による情報発信や国際標準への対応を図り、グローバルに活用できる情報資産を発信する。様々なアクセス障害のある人々による活用を促す。
ネットワーク構築: 情報資産の横断的・国際的なネットワーク構築を図り、地域・分野・官民セクターごとの取り組みを横断的につなげる拠点を構築する。
活用促進: 研究者、エンジニア、企業などに対し必要な情報を提供し、人と情報資産を結びつける。あらゆる年代でデジタルアーカイブを用いた学習機会を増やす。
人材養成: デジタルアーカイブに関わる多様な知識を有する人材を育成する場を設ける。
吉見氏は、この「記憶する権利」を日本社会に確立していくことが、現在の「痴呆症化した社会」を立て直すために不可欠であると強調し、講演を締めくくりました。
(文責:久世)
2.「『デジタル時代のアーカイブ系譜学』~アーカイブの概念史~」
加藤 諭氏(東北大学学術資源研究公開センター 史料館 教授)
動 画
資 料
内 容
1. デジタル時代のアーカイブ系譜学を論じる意義
1.1. アーカイブの普及と多様化
現在、**「アーカイブ」**という言葉は、NHKアーカイブス、YouTubeのアーカイブ機能、市民団体や非営利組織の名称など、多岐にわたる場面で使われ、多くの人々に語られるようになりました。これは、デジタル化されたテキスト、音声、画像、動画といったコンテンツが身近になったことと密接に関連しています。
しかし、アーカイブが広く使われるようになる一方で、その意味や内容が多様化している側面もあります。アナログメディア時代から存在し、人類が記録と記憶を司ってきた概念であるアーカイブが、デジタル化と情報のネットワーク化が進む現代において、どのように捉え方が変化してきたのかに注目する必要があります。
1.2. アナログ時代とデジタル時代のアーカイブ概念の相違
日本では1990年代頃から「アーカイブ」や「デジタルアーカイブ」という言葉が普及し始め、2000年代以降に多くのプレイヤーが関わるようになりました。特に2000年代は、デジタルアーカイブに関する活発な理論的議論が展開された時期です。
伝統的なアーカイブズ学においては、以下の二つの理念が重視されてきました。
保存するものの価値判断: 保存すべき記録は無制限ではなく、人類が価値判断を伴って残してきたものである。何を残すことが有用なのかを突き詰めるのがアーカイブズ学の初発の考え方です。
長期保存と利用規範: 保存された記録が未来永劫利用可能であるために、いかなる規範に従って構築されるべきかという問いが重要です。
しかし、現代のアーカイブ概念(例:YouTubeやWikipedia)には、必ずしもこのような特定の誰かや国・機関によるレギュレーションに基づかない集積物も含まれます。アナログ時代は情報の集積が物理的な蓄積として想像しやすかったのに対し、デジタル時代は情報が潜在的に複製可能で相互に接続されるため、情報の集積概念も変化しています。
私たちは、政治的、経済的、社会的、文化的な文脈の中で、人類が記録や記憶(情報)を生み出し、保存し、利用し、時には忘れ、破壊してきた「アーカイブ的な行為」をどのように扱ってきたのかを歴史的に捉え直す必要があります。
2. デジタルアーカイブの系譜と概念変遷
2.1. 「デジタルアーカイブ」の誕生と初期の文脈
日本の学会では、現在、「日本アーカイブズ学会」(2004年設立)と「デジタルアーカイブ学会」(2017年設立)が主要な存在です。しかし、「デジタルアーカイブ」という言葉は、それ以前の1990年代前半に月尾嘉男氏によって創り出された和製英語です。
月尾氏の当初の問題意識は、情報が国の隆盛に大きく関わる時代が来るという危機感とフロンティア意識にあり、デジタルアーカイブを情報通信政策の中に位置づけようとしていました。当時のキーワードは「マルチメディア」であり、そのコンテンツ論を重視する立場でデジタルアーカイブという言葉が作られました。
このことから、デジタルアーカイブという言葉は、当初は「どんな記録を選んで残すか」「永続性をどう担保するか」といった伝統的なアーカイブズ学の観点から生まれたわけではなかったことがわかります。
2.2. 多様な系譜の合流と概念の拡張(1990年代後半〜2000年代前半)
1990年代半ばから、月尾氏が提唱したデジタルアーカイブの概念は、文化財保護や博物館の分野で最初に導入されました。世界の文化をデジタル化して保存する文化財保護の観点や、マルチメディアなミュージアムを構築する考え方と結びついていきます。
1996年には、国の政策としてデジタルアーカイブ構想が位置づけられ、文化庁、通産省、自治省(情報通信政策、文化財保護、地域振興を担う省庁)が連携してデジタルアーカイブ推進協議会が設立されます。
この時期、すでに図書館情報学分野の長尾真氏による「デジタルライブラリー」や「電子図書館構想」、博物館分野の青木保氏による「デジタルミュージアム」といった言葉が存在していました。これらが徐々に「デジタルアーカイブ」という言葉に置き換えられ、合流していくことになります。
このように、デジタルアーカイブという言葉には、文化学術振興、産業振興、地域振興、博物館、図書館といった多様な系譜と思いが込められていきました。月尾氏の当初の情報通信政策としての意図から、概念が多義的になっていったことがわかります。2000年代前半に書かれた「デジタルアーカイブとは」といった書籍でも、著者によってその考え方が少しずつ異なっていました。これは、関わってきた人々のバックボーンが大きく影響していたと考えられます。
2.3. 長期保存への視点とMLA連携の提唱(2000年代中盤〜)
2000年代に入ると、デジタルアーカイブの概念に長期保存への観点が加わるようになります。1990年代後半に多くの予算がつき、デジタルアーカイブへの期待が高まった一方で、2000年代は予算が停滞する時期でもありました。この頃、初期に作られたデジタルコンテンツのシステムが古くなったり、画素数の問題やネットワークの遅延によりアクセスできなくなるといった問題が顕在化し、「デジタル技術は長期保存に適しているのか」という疑問が生じました。
そこで、デジタルアーカイブには「長期保存」という概念が不可欠であるという認識が強まります。これに最も親和性が高かったのが、改ざんがないこと、アクセスが担保されていること、長期で安定して信頼性のある形で保存されることなどを重視する伝統的なアーカイブズ学の考え方でした。2004年の日本アーカイブズ学会設立も、この長期保存への視点を強める要因となりました。
さらに、2000年代には、図書館(電子図書館)、博物館(デジタルミュージアム)、文書館(アーカイブズ)といった各機関が「デジタルアーカイブ」という共通の言葉を使うようになり、これらを基盤としたMLA(Museums, Libraries, Archives)連携という新しい形の連携が提唱され、デジタルアーカイブがその結節点となっていくという議論も起こりました。
2.4. 東日本大震災と市民参加型アーカイブの出現(2010年代〜)
2010年代に入り、東日本大震災を契機に、デジタルアーカイブの概念に新たな要素が加わります。MLA連携だけでなく、震災のような広域災害における人々の共有の記録や記憶を伝承し、今後の災害対策に役立てるという役割がアーカイブに求められるようになりました。東北大学やYahoo!、Googleなどが震災アーカイブを構築したほか、ハーバード大学や国立公文書館なども、名称に「アーカイブ」が含まれていなくても、その目的や趣旨にアーカイブ概念を含むプロジェクトを多数立ち上げました。
この時期に特に重要になったのが、市民参加型のアーカイブです。スマートフォンの普及により、市民が被災現場の動画や写真を撮影し、SNSで共有することが容易になりました。これにより、これまで国や組織がデジタルアーカイブの担い手であったのに対し、個人の発信が社会に大きな影響力を持つようになりました。
これは、これまでのツリー構造的な、構築されるデジタルアーカイブとは異なる、多元的なアーカイブのあり方を提示しました。また、これまでデジタルアーカイブが、ある程度価値評価が固まったものをデジタル化するという流れであったのに対し、瞬発的に生成されるデジタル画像などが現れ、それらが簡単に消去されうるという問題も生じました。
これにより、「デジタルアーカイブとはこういうものだ」という共通認識が再びシャッフルされることになり、デジタルアーカイブの共通理解や最大公約数をどこに設定するかが新たな論点となりました。デジタルアーカイブ学会による「アーカイブ立国宣言」や「デジタルアーカイブ憲章」は、まさにこの問いに対する答えを模索する取り組みと言えます。現在は、多様な思いや考え方が流入しているため、それらを一つにまとめることは困難であるという共通理解のもと、図書館や文書館、博物館に立脚した考え方から、ネットワーク性やアクセシビリティを含めた、より広範な概念を構築しようとする取り組みが進められています。
3. デジタルアーカイブを支える技術的文脈と政策動向
3.1. Web技術の発展と永続性の確保
デジタルアーカイブは、**ワールドワイドウェブ(WWW)**の技術と密接不可分な関係にあります。1980年代後半にティム・バーナーズ=リーによってURL/URIとWebの概念が提唱され、インターネット上で情報にアクセスすることが可能になりました。
Web技術の進歩は、デジタルアーカイブの永続性を担保する方向へと進化しました。
パーマリンク(2000年〜): コンテンツ管理システムの導入により、URIを維持し、コンテンツを固定するという考え方が生まれました。
PID(永久識別子、2010年〜): 第三者機関との連携によりURL/URIを維持し、DOI(Digital Object Identifier)のような仕組みによって、コンテンツに永久的な識別子が付与され、永続性が確保されるようになりました。
IIIF(2011年〜): 画像コンテンツの相互運用性を高めるための国際的な枠組みです。URIの書式と画像処理ルールを標準化することで、Web上でデジタルアーカイブの画像がより広く利用されるようになりました。
3.2. 日本におけるデジタルアーカイブ政策の推進
月尾嘉男氏が「デジタルアーカイブ」という言葉を作った背景には、郵政省、自治省、通産省といった省庁との連携を通じた情報通信政策の中にそれを位置づけたいという意図がありました。
1990年代前半、日本ではハイビジョン技術の活用と普及のためのインフラ整備が模索されており、そのコンテンツとしてマルチメディア、そしてデジタルアーカイブが着目されました。
1996年: デジタルアーカイブ推進協議会の設立: 文化庁、通産省、自治省が連携し、文化学術振興、産業振興、地域振興の文脈でデジタルアーカイブが推進されることになります。
2000年: 内閣府IT戦略本部の設立とe-Japan戦略: IT戦略本部が発足し、2001年には「世界最先端のIT国家」を目指すe-Japan戦略が策定され、IT化・デジタル化が強力に推進されました。IT戦略本部はその後も名称を変えながら、国家プロジェクトとしてデジタル化政策を牽引していきます。
22000年代以降のデジタルコンテンツ整備:
2001年: アジア歴史資料センターが開設され、国立公文書館などが提供するデジタルコンテンツが国として公式に発信されるようになりました。
2002年: 国立国会図書館が近代デジタルライブラリーを開始。
2005年: 国立公文書館がデジタルアーカイブの運用を開始。
その他、自然史系博物館のS-Net、人間文化研究機構のNIHU-Int、文化庁の文化遺産オンラインなどが公開され、図書館、博物館、文書館といった各機関がそれぞれデジタルアーカイブのポータルサイトを整備するようになりました。
2010年代以降: 知的財産戦略本部による推進とJapan Search構想:
国のIT戦略本部から、デジタルアーカイブ政策の担い手が知的財産戦略本部へと移管されます。知的財産戦略本部は、従来のIT・e-Japan戦略を引き継ぎ、デジタルアーカイブを知的財産政策の中に位置付けました。
2013年頃からアーカイブに関するタスクフォースが設置され、保有コンテンツのデジタル化と活用、分野横断的・統合的なポータルサイトの必要性が議論されました。
その結果、Japan Search構想が生まれ、2020年にはJapan Searchが正式に公開され、分野横断的なデジタルアーカイブの統合ポータルが実現しました。
現在、内閣官房の知的財産戦略推進事務局がデジタルアーカイブ推進を担っていますが、その議論は、単なるポータルサイトの構築だけでなく、産業振興、アーカイブの担い手育成、教育など、より広範な領域に広がっています。
4. デジタルアーカイブの多様性と今後の展望
現在のデジタルアーカイブの系譜を振り返ると、「デジタルアーカイブ」という言葉が、特定の個人の思想や単線的な議論から生まれたものではなく、多様な概念や定義に関わる複数の源流が合流して形成されてきたことがわかります。
デジタルアーカイブは非常に懐が深い言葉であり、様々な流れが合流したり、時としてそこから分かれたりしながら、広くその意味を広げてきました。そしてこれからも、多くの言葉や概念が流入していくでしょう。
このようなデジタルアーカイブの多様な起源を知ることは、私たちが今後デジタルアーカイブをどこへ向かわせるべきかを考える上で重要な指針となります。誰かの特定の意見だけを正しいとするのではなく、より建設的にこれからのデジタルアーカイブの構築や活用に向けて、共通理解を形成していくことが求められています。
(文責:久世)
3.「企業におけるデジタルアーカイブ」
大橋秀亮氏(TOPPAN株式会社 チームリーダー)
動 画
資 料
内 容
1. 自己紹介とデジタルアーカイブへの関わり
私はトッパン株式会社の大橋と申します。現在は上級デジタルアーキビストとして、企業におけるデジタルアーカイブを担当しています。
1998年にトッパン印刷株式会社(当時)東北事業部に入社し、当初は主にジャスコ(現在のイオン)のチラシ制作を担当していました。当時のトッパン印刷は、商業印刷や出版物が花形業務であり、大手企業のカタログ制作や出版社との協業が中心でした。
2005年に関西金融証券事業部に異動した頃から、世の中のデジタルアーカイブへの流れを肌で感じ始めました。私自身が「デジタルアーカイブ」という言葉を初めて耳にしたのは2000年、福島県立美術館の収蔵品管理システム販売を担当した際です。
2008年からは本格的にデジタルアーカイブを担当することになり、世の中は急速に変化しました。2009年には国立国会図書館の長尾真館長による大規模デジタル化が始まり、私はその中で関西館の博士論文デジタルデータの著作権調査に携わりました。その後も、京都歴史博物館の古文書デジタル化(2012年)や沖縄県公文書館の琉球政府文書デジタル化(2013年)、さらには南九州市の知覧特攻平和会館における特攻隊員の遺書デジタル化など、多岐にわたるデジタルアーカイブプロジェクトを担当しました。
2017年には文化庁に出向し、2014年からは大阪公立大学で産学官民連携推進にも携わっています。現在は、デジタルアーカイブの活用にとどまらず、トータルな視点で業務に取り組んでいます。
2. 企業におけるデジタルアーカイブの意義と課題
企業にとってデジタルアーカイブとは何か、という問いに対し、私は**「ステークホルダーのためのアーカイブ」**であると考えています。図書館、公文書館、博物館が「全てのお客様のために」アーカイブを構築するのに対し、企業は「関係する方々(ステークホルダー)にいかに活用してもらえるか」を重視します。
トッパンのように国民全体と関わる規模の企業の場合、そのステークホルダーは広範に及びますが、やはり「誰のために」という視点は重要です。
企業にデジタルアーカイブを提案する際によく聞かれるのは、「売上や利益につながるのか」「宣伝にお金を使った方が良いのでは」「もっと将来につながる経営戦略への投資を優先したい」といった声です。デジタルアーカイブの重要性を理解している企業でも、「今は業績が上がってから」「設備投資が優先だ」といった返答が多いのが実情です。
このような状況を踏まえ、企業へのアプローチとしては、まずBCP対策や業務効率化、知財やノウハウの共有といった、直接的な収益につながる側面を強調して説明します。その上で、最も重要である社史や理念の浸透、企業ブランディングといった目的を伝えていくことが有効であると考えています。
3. 企業デジタルアーカイブの具体事例と活用法
デジタルアーカイブは、電子データの保存・複製が可能で、インターネットを通じてどこからでも閲覧できるため、紙媒体よりもはるかに便利です。具体的な活用事例をいくつかご紹介します。
3.1. 業務効率化とリスク対策:銀行印鑑のデジタル化
かつて郵便貯金(現在のゆうちょ銀行)の通帳には、お届け印の印影が貼付されていました(通称「福印」)。しかし、これはセキュリティ上のリスクが高く、2013年には廃止されました。この廃止に伴い、各支店で保管されていた印影の照合に多大な手間がかかるという課題が生じました。
メガバンクの事例では、この印影を全てスキャンしてデジタル化し、全支店で閲覧できるようにする取り組みが始まりました。これにより、紙での情報共有やFAXでのやり取りといった非効率な業務が不要となり、業務が大幅にスリム化されました。
また、クレジットカードや保険契約などで用いられるサインも、単なる筆跡だけでなく、筆圧、筆運び、書く方向など、あらゆる情報がデジタルアーカイブ化され、本人確認に活用されています。こうした取り組みは、金融機関が大きく変化したデジタルアーカイブの応用例と言えます。
3.2. 知的財産・ノウハウの共有と伝承
熟練者の技術や経験、勘といった無形資産は、音声や映像で記録・形式化し、蓄積・活用することで、その伝承を拡大できます。企業内部のノウハウは通常公開されませんが、その一例として、文化庁の文化遺産オンラインでは、日本の伝統技術(例:蒔絵の作業風景)が映像で記録され、公開されています。
トッパンでも、人間の動きを可視化し、動作の癖や改善点を分析するループトレーニングシステムという商品を開発しています。例えば、ゴルフのスイングや走りのフォームをデータ化し、プロの動きと比較することで、技術習得や改善に役立てています。これも、熟練者のノウハウをデジタルアーカイブ化し、共有する取り組みと言えます。
3.3. 情報共有と人脈管理:名刺のデジタル化
社内での情報共有においても、デジタルアーカイブは活用されています。例えば経済産業省では、4000人の職員を対象に、名刺の情報をスキャンしてデータベース化する実証実験を行いました。これにより、誰が誰と会い、どのような人脈を築いているかを共有し、最新の連絡先情報を把握できるようになりました。
近年では、ZOOM会議などでQRコードを用いた電子名刺の交換も行われるようになり、名刺のデジタルアーカイブ化は情報共有の効率化に貢献しています。
4. 企業ブランディングと社史・理念の浸透
最も重要であると考えるのが、デジタルアーカイブを通じた社史や理念の浸透、そして企業ブランディングです。
創業者が偉大な人物であり、その精神が社員に浸透している企業は、デジタルアーカイブを積極的に活用しています。グローバル展開する企業では、海外の社員に自社の歴史や原点を伝えるために、創業者の言葉や創業からの歴史をデジタルアーカイブとして残し、共有しています。
4.1. 著名企業の事例
京セラ(稲盛和夫氏): 京セラは、創業者稲盛和夫氏の人生哲学・経営哲学である「京セラフィロソフィー」を学び継承することを目的とした「稲盛ライブラリー」を立ち上げています。稲盛氏の生の声を聞ける映像アーカイブや、展示室のバーチャル見学を通じて、彼の精神が全従業員の判断基準として共有されています。
パナソニック(松下幸之助氏): パナソニックの本社には、創業者松下幸之助氏とパナソニックの歴史を伝える建物があり、社員や来訪者に創業者の精神を伝えています。日本を代表する企業が、創業者の精神をいかに大切にしているかがわかります。
オムロン(立石一真氏): オムロンは、創業者立石一真氏の思いや、駅の自動改札機開発といった革新的な取り組みの歴史をデジタルアーカイブで伝えています。また、社名の由来なども詳細に記録されています。
ソフトバンクグループ(孫正義氏): ソフトバンクグループも、孫正義氏の志やビジョンがデジタルアーカイブとして記録され、グループ全体で共有されています。少人数のスタートアップであっても、孫氏のビジョンを共有し、事業に取り組む姿勢は、デジタルアーカイブによる理念浸透の好例と言えます。
これらの事例から、単なる技術や売上・利益の追求だけでなく、企業理念やブランディングといった精神的な側面をデジタルアーカイブを通じて伝えることの重要性がうかがえます。
4.2. トッパンの事例
トッパンも、自社の歴史を伝えるためにデジタルアーカイブに取り組んでいます。最近のテレビCMでは、かつて印刷が花形だった出版事業がデジタル化され、キャッシュレス決済に変わっていくという歴史を感じさせる内容が描かれています。このCMは、社員が自社を誇りに思うこと、そして学生や社会一般にトッパンという企業を知ってもらうことを目的としています。
トッパンは**「トッパンヒストリー」**というウェブサイトで企業情報を発信しており、年代別に区切られた歴史の中で、創業者の精神や、活版印刷からオフセット印刷への転換といった重要な出来事を伝えています。トッパンの場合、特定の創業者に焦点が当たるよりも、常に新しいことに挑戦する「変革の精神」が受け継がれていることを強調しています。
5. デジタルアーカイブの応用と社会貢献
企業のデジタルアーカイブは、単なる社内活用にとどまらず、社会貢献にも繋がっています。
5.1. 文化財・歴史資料の忠実な再現と復興支援
トッパンは、バーチャルリアリティ(VR)映像制作において、歴史的な建物の再現などに忠実な再現性を追求しています。例えば、熊本地震で被災した熊本城の石垣の復興では、崩れる前の石垣の精密なデジタルアーカイブが、崩れた石を元の位置に戻す作業に役立ちました。肉眼では判断が難しい石の形状や凹凸も、デジタルデータで詳細に分析することで、復興作業の精度向上に貢献しています。
5.2. 市民参加型アーカイブと地域活性化
京都の伏見区では、市民から集めた映像や写真を組み合わせてアーカイブする取り組みが行われています。博物館や資料館の資料だけでなく、市民が提供した個人的な写真(例:1982年の七五三の写真)などもアーカイブすることで、当時の風景や人々の暮らしを多角的に記録し、地域住民が参加し、活用しやすいアーカイブを構築しています。これにより、アーカイブが地域コミュニティの中で継承されやすくなります。
5.3. 国宝・文化財の高精細デジタル化と研究活用
京都の国宝「洛中洛外図屏風(舟木本)」もデジタルアーカイブ化されています。通常は近づいて見ることができない屏風の細部(例えば、約1cmの人物の顔や0.数mmの着物の柄)も、高精細なデジタルアーカイブによって拡大して閲覧できるようになりました。さらに、人物一人ひとりにタグ付けを行い、当時の生活様式などを調査するプロジェクトも進行中です。
5.4. 災害アーカイブと3次元データの活用
最近の事例として、石川県の能登半島地震に関するアーカイブが公開されました。Googleマップと連携し、被災地の3次元データと組み合わせることで、どのような被害があったかを詳細に把握できるようになっています。デジタルアーカイブの技術は、このような災害記録や復興支援においても進化を続けています。
6. まとめ
企業にとってデジタルアーカイブは、単に売上や利益に直結するだけでなく、社史や企業理念の浸透、企業ブランディングといった、企業の根幹を支える重要な役割を担っています。もちろん、知的財産やノウハウの共有、業務効率化、BCP対策といった実務的な側面も重要であり、これらの側面からデジタルアーカイブの導入を推進することが有効です。
最終的には、**「ステークホルダーのためのアーカイブ」**として、企業のデジタルアーカイブを構築していくことで、その価値が広がり、企業活動の持続的な発展に貢献していくでしょう。
トッパンでは、東京・飯田橋の印刷博物館(企業のミュージアムではなく、印刷の歴史を伝えるミュージアム)で、新しいシアターなどを通じて印刷の歴史を体験できます。また、大阪公立大学での産学官民連携など、様々な形でデジタルアーカイブを活用した社会貢献に取り組んでいます。
(文責:久世)
コーディネータ:井上 透氏(岐阜女子大学教授)
■ e-Learning(オンデマンド講座)
デジタルアーカイブ概論【Ⅰ】 ~ デジタルアーカイブによる地域活性化 ~
デジタルアーカイブ概論【Ⅱ】 ~ デジタルアーカイブにおける新たな価値創造 ~(構想中)
デジタルアーカイブ概論【Ⅲ】 ~ 知識循環型社会における知的財産権 ~(構想中)
【公開講座】学校DX戦略コーディネータ講座 ~ 学校DX戦略とその理論 ~
趣 旨:
学校DX戦略コーディネータは,学校や教育機関においてデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略の計画,実施,および評価をし,効果的に推進する役割を担う専門家を育成します。
プログラム:
1.「次期教育課程と教育DX」
武藤久慶氏(文部科学省・教育課程課長)
動 画
内 容
1. 諮問の背景と現代社会の課題
次期学習指導要領の改訂が議論されている背景には、現代社会が直面する多岐にわたる課題があります。武藤課長は、中央教育審議会への諮問文の内容を踏まえ、主に以下の5つのトレンドと課題を挙げました。
1.1. 深刻な人口減少と個人のエンパワーメントの必要性
日本の人口減少は深刻な状況にあり、近い将来、少ない人口で残りの人口を支える極めて厳しい社会が想定されています。このような状況では、**一人ひとりが最大限に能力を発揮し、社会を支える存在となる「エンパワーメント」**が不可欠です。教育は、この個人のエンパワーメントを促進する上で極めて重要な役割を担います。
1.2. 加速するグローバル化と多様性への対応
外国人の増加、日本人の海外進出など、グローバル化は加速の一途をたどっています。2067年には人口の1割が外国人になるとの推計もあり、将来の子どもたちは、異なる常識、宗教、価値観を持つ人々と共に働く、あるいは地域社会を形成することが当たり前の世界で生きていくことになります。ソニーとホンダのEV提携など、企業間の協業も国境を越えて活発化しており、教育もこうした多様性と協働を前提とした社会に対応していく必要があります。
また、社会政策の側面では、ダイバーシティ&インクルージョンが重視されており、SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」が掲げられています。これは、不登校の子ども、特別支援を必要とする子ども、外国人児童生徒など、多様な特性を持つ子どもたち一人ひとりに「個別最適な教育」を提供していくという高い目標を示しています。この高い目標を達成するためには、従来の教育方法では限界があり、ギガスクール、教育データ、ICT活用、DXといった強力なツールが必要不可欠であると認識されています。
1.3. Society 5.0の実現とデジタル社会の「作り手」・「使い手」の育成
政府全体で取り組むSociety 5.0は、仮想空間と現実空間を高度に融合させ、人間中心の社会を創造することを目指しています。AIやロボティクスなどデジタル技術が社会のあらゆる領域に行き渡る中で、教育関係者は、**デジタル化社会の良き「作り手」(ハイエンドな人材)と賢い「使い手」(すべての人々)**の両方を育てる必要があります。
Chat GPTの登場に象徴されるように、AIやロボットで代替可能な仕事が減少する一方、代替不可能な仕事は増加する傾向にあります。教育は、子どもたちがこのような社会で活躍できるよう、AIが得意な領域(スピード、知識量、大量データ解析など)と人間が得意な領域(創造性、対人コミュニケーションの深い部分など)を見極め、人間の強みを伸ばす方向性を模索する必要があります。
1.4. デジタル化がもたらす負の側面への対応
デジタル化には、フィルターバブルやエコーチェンバーといった負の側面も存在します。子どもたちのスマホ所有率が上昇する中で、パーソナライズされた情報が偏って流れてくる状況を認識している人が少ないことは危険であると指摘されています。
子どもたちが不健康な情報の渦に巻き込まれないよう、教育はICTを単なる学習ツールとしてだけでなく、デジタルとの賢い付き合い方を意図的・計画的に教える必要があります。これには、情報を批判的に捉える力、デジタル社会を創造するプログラミングスキル、そしてデジタルから意識的に距離を置く選択肢も含め、包括的な情報モラルやメディアリテラシーの育成が求められます。
1.5. 加速する変化のスピードと生涯にわたる学びの必要性
技術や知識の変化は激しく、人的資本の価値が失われるスピードも加速しています。企業の寿命が短くなり、職業寿命は長くなる「人生100年時代」においては、マルチステージの人生モデルが常識となります。転職や転業が当たり前となる中で、**生涯にわたって学び続け、自らの人生を主体的に「かじ取りする力」**が極めて重要になります。この「自らの人生をかじ取りする力」を初等中等教育のうちに身につけさせることの必要性が強調されています。構造的な人材不足が予測される中で、企業や職場に働き方・生き方を決めてもらうのではなく、個人が主体的に決定する時代が到来しており、学校教育、リスキリング、生涯学習、そしてデジタルがその不可欠な一部として貢献する形が求められます。
諮問文では、少子高齢化、グローバル化、AI、そして不確実性の高まりといった時代背景のもと、人生100年時代において、子どもたちが主体的に学び続け、自らの人生をかじ取りする力を身につけることの重要性が増していると結論づけられています。
2. 現行指導要領の課題とデジタル活用の可能性
日本の教育はPISA調査で世界トップクラスの学力を示している一方で、いくつかの課題も抱えています。
2.1. 学びに向き合えない子どもの増加と多様なニーズへの対応
子どもたちの多くは、授業が「簡単すぎる」または「難しすぎる」と感じており、特に中学校では「難しすぎる」と感じる生徒が増加しています。従来の紙ベースでの一斉指導では、成績上位層と下位層の子どもたちに十分な対応ができていないという構造的な課題があります。
子どもたちの認知特性は多様であり、教室には様々な特性を持つ子どもたちが共存しています。しかし、統計的には、小中学校で学習面・行動面に困難を抱える子どもが約8.8%いるにもかかわらず、高等教育への接続率は著しく低い(大学学部学生在籍率は0.32%)という現状があります。これは、多くの子どもたちが自分なりの賢い学び方や効率的な学び方を獲得できないまま高等教育に接続できていないことを示唆しており、少子化が進む中でこの状況を放置することはできないと指摘されています。
Z世代の子どもたちは、興味のあるコンテンツに個別にアクセスし、視聴スピードすら自分で決めるなど、学習ペースに対する多様なニーズを持っています。こうした背景から、一斉指導のみに依存する従来の教育モデルは限界に近づいており、個別最適化された多様な選択肢の必要性が強調されています。不登校の子どもたちへの調査からも、「自分のペースに合った手助けがある学び」「好きなことを追求できる学び」への強いニーズが明らかになっています。
このような多様な子どものニーズに応え、誰も取り残さない教育を実現するためには、教育DXが強力なツールとなり得ます。デジタル技術を活用することで、一人ひとりの意欲を高め、可能性を開花させることができると期待されています。
2.2. 現行指導要領の浸透と「深い学び」への課題
現在の学習指導要領は「主体的・対話的で深い学び」を目指していますが、その浸透は道半ばであると認識されています。
自律的な学習能力の不足: PISA調査(2022年)では、日本の生徒は高い学力を示しながらも、「自力で勉強をこなす」「勉強の予定を立てる」「学びの進み具合を評価する」「オンライン学習リソースを活用する」といった自律的な学習能力に自信がないという結果が出ています。生涯にわたって学び続けることが求められる時代において、これは大きな懸念材料です。
知識の「記号設置」と概念理解の不足: 知識を現実と関連付けて理解する、概念を習得する、深い意味理解を促すといった点が弱い傾向にあります。例えば、数学の「関数」を単なる計算問題として捉え、未知の数字を予測できるというその本質的な意味や感動を理解していない、歴史の「鎌倉幕府」を単なる暗記で終え、なぜ元寇が御恩と奉公の関係を崩壊させ、幕府滅亡に繋がったのかという因果関係をストーリーとして理解していないといった例が挙げられています。また、「等しい」という言葉の意味を誤解している子どもの存在も指摘され、**概念が腹落ちしないまま問題演習を行う「記号設置」**の状態が課題とされています。デジタルツールは、このような概念理解を深める上で有効な可能性を秘めています。
自分の考えを表現する能力の不足: 自分の考えを述べることや議論することが苦手な子どもが多いという課題も根強く存在します。TOEFLのスピーキングテストの例を挙げ、日本の学校教育が、リスクを冒して挑戦することと無難に生きることのどちらが良いかといった**「自分の考えを持ち、その理由を説明する」訓練**が十分ではないことを指摘しています。
当事者意識の希薄さ: 政治や社会問題に対する自分の考えを持ち、議論し、社会を変えられると考える子どもの割合が低い傾向も課題です。AIの専門家である川村先生の言葉を引用し、将来、自分で何をするかを決める「意思決定の仕事」が残り、言われたことをこなす「作業」はAIに代替される時代において、「夢を突き詰めること」「自分で何がやりたいか」という主体的な動機づけが不可欠であると強調しています。
これらの課題は、全体として日本の学力レベルは高いものの、教育の「弱み」となっていると総括されています。深い意味理解や概念の習得、自律的な学習能力、そして主体的な社会参加の意識を高めるためには、デジタル活用が大前提となると武藤課長は述べています。
2.3. ギガスクール活用の現状と課題
ギガスクール構想は緒に就いたばかりであり、実体験の格差やデジタル化の負の側面を指摘する声も存在します。しかし、武藤課長は、デジタルとリアルのバランスを取り、「デジタルの力で学びを支える」という視点で次の指導要領を考えていく姿勢を示しました。
PISA調査から見るICT活用:
適度なICT活用は学力向上に寄与: PISA調査の分析によると、ICTを「全く使わない」場合よりも、「1時間から5時間程度」適度に使用する場合の方がスコアが20ポイント増加するという結果が出ています。一方で、使いすぎは学力低下に繋がる可能性も示唆されています。
日本の学習規律の高さ: デバイス使用による「注意散漫」な生徒の割合が、OECD加盟国の平均3人に1人に対し、日本はわずか5%と世界で最も低いというデータが示されました。これは、日本の教育現場がこれまで培ってきた学習規律、教室環境の整備、教師の集中させる技術、発問の工夫などが国際的に高いレベルにあったことを示唆しています。
「残すべきもの」と「リニューアルすべきもの」: 日本の教育が培ってきた優れた側面(学習規律など)の中で、新たな時代においても残すべきものは意図的に残し、時代遅れになったものはリニューアルしていくという意識的な取り組みの重要性が述べられています。
ICT活用の具体例:
日常的なICT活用: ICTが日常になった教室では、紙とデジタルを使い分けたり、両方を活用したりする場面が増えています。
多様な学びの深化:
部活動での練習録画とプロの動画との比較による改善点の話し合い。
理科の実験動画記録による検証。
ルールメイキングにおける意見の即時共有と少数意見の可視化による深い議論。
これらの事例は、デジタルツールが、これまで時間的制約などで難しかった**「質的な学びの深化」**を可能にする強力な手段であることを示しています。ルールメイキングのような「主体的に社会参加する教育」は、手間と時間がかかるため、DXなしには成り立たないと武藤課長は強調します。
諮問文では、これらの課題に取り組む上で、教師の努力と熱意に過度に依存せず、持続可能な形で学校教育を継承・発展させることを前提に、これからの時代にふさわしい指導要領を検討していくことが述べられています。
3. 教育DXがもたらす変革とカリキュラム改革
教育DXは、単なるツールの導入に留まらず、学習の保証、個別最適化、カリキュラムのあり方そのものに変革をもたらす可能性を秘めています。
3.1. 学びの保証と個別最適化の推進
デジタル技術は、学びの個別化を強力に推進します。
個別指導と学習進度の管理: 動画教材やドリルなどを活用することで、子どもたちは自分のペースで学習を進めることができ、教師は手が空くことで、すべての子ども一人ひとりの進捗を確認し、必要な指導や支援をきめ細やかに行うことが容易になります。
多様な学習方法の選択: インターネット上には様々な良質なデジタル教材が存在し、子どもたちは自分に合った学習方法を見つけることができます。熊本市の事例のように、自治体が高品質なデジタル教材を開発し、他自治体にも開放するといった動きも出ています。
「文房具」としてのICT: ICTは、教師の指導ツールであると同時に、子どもたちにとっての「学びのための文房具」であり、学習の基盤となるツールとして捉えられています。
3.2. ICT活用の「手段」と「目的」
ICTはあくまで**学習を改善するための「手段」**であり、それ自体が目的ではありません。個別最適化された学びと協働的な学びを一体的に充実させ、「主体的・対話的で深い学び」の授業改善を進めることで、資質・能力の育成に繋がるという全体像が示されています。
効果的なICT活用: 主体的な授業改善に取り組んでいる学校ほどICTを積極的に活用しており、ICTを活用することで自分のペースで学べたり、動画で学習内容が理解しやすくなったり、考えや意見を伝えやすくなると感じる子どもほど、平均正答率が高い傾向が示されています。これは、ICTが漫然と使われるのではなく、目的意識を持って「主体的・対話的で深い学び」の方向で活用されることが重要であることを示唆しています。
情報活用能力の重要性: 一方で、ICTが「手段」として機能するためには、一定期間使い続けることで操作スキルを習得し、活用できるようになる必要があります。さらに、**「情報活用能力」は、言語能力や問題発見能力と並ぶ「学習の基盤となる資質・能力」**として位置づけられています。情報技術を適切に活用して自分の考えを形成し、問題解決や対話的なコミュニケーションを促進するこの能力は、まさにそれ自体が「目的」であるとされています。情報モラル、メディアリテラシー、AIに関する知識などを含め、情報活用能力を抜本的に向上させていく必要性が強調されています。
3.3. 教員の「教えすぎ」と児童の「学びすぎ」の課題
一部で「教えない方が良い」「子どもに任せるべき」といった誤解が生じていることに対し、武藤課長は、教師の適切な介入と支援の重要性を強調します。
教師の積極的な関与: 成功している実践例では、教師がクラウド上で子どもの学習状況をモニタリングし、指導・支援を行っています。自己決定できる前提を整えるための手引きの作成や、質の高い資料の準備など、教師が周到に準備した上で子どもたちの自律的な学習を促しています。
「間違いの修正」と深い学び: 新潟県の事例では、子どもが自分の間違いを修正するプロセスで成長を実感し、その経験をポートフォリオとして蓄積・振り返ることで、自己調整能力やメタ認知能力を高めている様子が紹介されました。これは、ICTを活用することで、このような深い学びのプロセスをより効果的に実現できることを示しています。
「調べる」ことの本質: スライド作成などの学習活動において、「調べる」ことが単なる情報収集で終わってしまい、そこからの整理・分析、自分の意見の形成、新たな問いの創出に繋がっていないという課題も指摘されています。デジタル思考ツールなどは便利ですが、フォーマットに流されるだけでなく、本質的な思考を促す教師の指導が不可欠です。
「参照点」の重要性: デジタルは、子どもたちが模範となる「参照点(reference)」を容易に見つけられる強みを持っています。例えば、野球選手のプレー動画やダンスの動画を参考にし、それを模倣・改善することで、驚くほどスキルが向上する事例が挙げられています。しかし、このデジタルの強みが、プレゼンテーションや英語学習、議論の場において十分に活かされていない現状も指摘されています。
3.4. カリキュラム・オーバーロードと「中核的概念」の重視
現在の教育課程は、教科書が過去50年で大幅に厚くなるなど、**「カリキュラム・オーバーロード」**の状態にあり、これが教員の負担増大の一因となっています。
パフォーマンス課題と深い学び: 愛知県春日市の事例では、室町時代をテーマに、教師があえて構造的な板書を行わず、子どもたちに「政治」「貿易」といった視点やヒントを与え、自分で情報を整理・分析し、構造化する活動(パフォーマンス課題)を行っています。NHKなどの質の高い映像資料や付箋を活用し、共同や議論を通じて最終的に成果をまとめて発表するこの学習は、深い意味理解を促します。
入試改革との連動: 定期テストでも教科書の持ち込みを許可し、「多面的に」「根拠となる資料やデータを引用して」説明させるなど、知識の丸暗記ではなく、思考力・判断力・表現力を重視する取り組みがなされています。
「中核的概念」の重視: 今後の指導要領では、AIの発展状況を踏まえ、個別具体的な知識の集積だけでなく、**「概念の習得」「深い意味理解」「学ぶ意味や社会とのつながり」**を重視し、それらを直結するような授業改善に繋がる内容を目指すとされています。教科の「中核的な概念やアイデア」を中心に、目標や内容を分かりやすく構造化することで、カリキュラムのスリム化を図りつつ、子どもたちの学力を向上させる可能性が模索されています。例えば、歴史においては、個々の用語の暗記よりも、「なぜ室町時代と鎌倉時代は本質的に異なったのか」といった「本質的な問い」を追求することで、関連する知識が磁石のように引き寄せられ、より深い理解に繋がると考えられています。
3.5. 時間の再配分と教員の「余白」の創出
教育DXと効率化を進めることで、教員と子どもの活動時間を再配分し、教育の質を高める取り組みも行われています。
研究開発学校の事例(東京都目黒区):
小学校の標準授業時間45分を40分に短縮し、年間127時間の「余剰時間」を創出。
この時間を活用し、**「個人の興味関心に基づく探究活動」「振り返りから生まれた問いの追求」「体験活動の増加」「表現力・対話力の育成プログラム」「教員の研修や子どもとの個別対話」**など、多様な取り組みを実施しています。
この取り組みは、DXによる効率化が前提であり、教員に「余白」を生み出し、それが最終的に子どもへの教育の質向上に繋がるという好循環を生み出しています。
終わりに
次期学習指導要領は、ギガスクールや教育DXが十分に推進されることを前提として検討されます。武藤課長は、現在の指導要領とギガスクールの学校現場への徹底的な実装が、次期指導要領への最も重要な準備行為であると結びました。
(文責:久世)
2.「GIGAスクール時代に相応しい授業のために」
東原義訓氏(信州大学名誉教授・東原学び研究所)
動 画
資 料
内 容
学校DX戦略とその理論:未来を生きる子どもたちのために
未来を生きる子どもたちのために教育システムにおいて「当たり前」とされてきた概念を問い直し、学校DX戦略として3つの柱が提示されました。
1. 新たな価値を創造する対話的な学び
ギガスクール環境の最大の強みである1人1台の端末とクラウドを活用し、多様な他者との対話を通じて新たな価値創造や課題解決能力を育むことを目指します。
対話的学びの5つのレベル
東原先生は、タブレットを活用した対話的学びを以下の5つのレベルで捉え、レベル5の「新たな価値の創造」を目指すことの重要性を強調しています。
レベル1:発表
児童生徒が自分の考えをタブレットに入力し、数名が発表する。
レベル2:全員で共有
児童生徒全員がタブレットに入力した内容を共有し、お互いの考えを見る。
レベル3:質問・意見の書き込み
共有された考えに対し、質問や意見を書き込む。
レベル4:比較・分類
みんなの考えを比較・分類し、構造化する。
レベル5:新たな価値の創造
友達の考えや対話を通じて自分の考えを修正・深化させ、新たなものを創造する。これはOECDの「ラーニングコンパス」にも通じる考え方です。
授業展開のポイント
対話的な学びを促進するための授業展開のポイントは以下の3点です。
共有できる形でのアウトプット: 自分の考えをタブレット(例:スプレッドシート)に書く。
吟味する時間の確保: 友達の考えをじっくり読んで吟味する時間を十分に取る。
考えのバージョンアップ: 友達の考えを踏まえ、自分の考えをより良いものに改善・表現する時間を持つ。特にこの「改善」のプロセスが重要であると述べられています。
実践事例:国語と公民の授業
具体的な実践事例として、小学校での国語の授業と、中学校での公民の授業が紹介されました。
国語の授業(小学校):
「ごんぎつね」の物語におけるごんの気持ちの変化について、児童が各自の考えをスプレッドシートに記述。
その後、友達の考えを読み、自分の考えを修正・改善する時間を設けた結果、先生の指導なしでも児童の考えが大きく改善されることが確認されました。これは、他者の意見に触れることで、子どもたちが想定以上の学びを得られることを示しています。
公民の授業(中学校):
「路線バス廃止問題」という村の課題に対し、生徒が役場の担当者として解決策をスプレッドシートに記述。
次に、記述した内容をJamf Proなどのデジタルホワイトボードの付箋に落とし込み、色分けや矢印で関係性を示すなどして「構造化」する作業を実施。
この構造化の作業を通じて、生徒たちは新しいことに気づき、より深い学びに繋がったと報告されています。ここで重要なのは、構造化の要素が教科書や資料の概念ではなく、「友達の考え」のキーワードであるという点です。これにより、単なる知識の整理に留まらない、共同による新たな価値創造が促されます。
これらの実践から、小学2年生といった低学年でも構造化の作業が可能であり、それが深い学びに繋がることが示唆されました。新しい気づきや因果関係の理解、そして新しい考え方の創造に繋がるとして、ギガスクール時代の事業スタイルとして推奨されています。
2. 時間を基準とした教育システムからの脱却
日本の教育システムは長らく「時間を基準」としており、同じ時間の中で同じ内容・同じ方法で教育が行われてきました。しかし、このシステムが本当に適切なのかという問いに対し、東原先生は「3タウの原則」と学生の研究成果を提示し、脱却の必要性を訴えかけます。
「3タウの原則」と最新の研究結果
1970年代に筑波大学の中山和彦先生が提唱した「3タウの原則(3τの原則)」は、ある単元を習得するのにかかる時間は、最も速い子どもと最も遅い子どもで約3倍の差があるというものです。
東原先生の指導学生がギガ端末を活用して行った卒業研究では、この3タウの原則が現在の教育現場でも変わらず存在することが実証されました。
研究内容: 算数のシンプルな計算問題15問を解くのにかかった時間を計測。
結果: 最も速い児童(約150秒)と最も遅い児童(約500秒)の間には約3倍の時間の差が見られました。
重要な示唆: 最も遅い児童であっても、彼らが必要とする時間をかければ、正答率は最も速い児童とほとんど変わらないという結果が得られました。つまり、時間を基準としたテストでは「できる子」と「できない子」の差が生じるように見えますが、時間という制約を取り払えば、子どもたちの達成度には大きな差がないことを示唆しています。
これは、これまで「速い=できる子、遅い=できない子」という誤った思い込みがあったのではないかという問いを投げかけます。ペーパーテストのように時間制限がある環境では点数に差が出ますが、時間という枠を外してあげれば、子どもたちはそれぞれ必要な時間をかけて、同等の達成度に至ることができるのです。
教育実践への示唆と成果
この研究結果は、学校現場の先生方に大きな気づきをもたらし、事業のやり方に変化をもたらしました。
授業の変化: 子ども一人ひとりに必要な時間と、適した補充学習を確保する学習方法を取り入れた。
学力調査の結果: 文部科学省の学力・学習状況調査の結果を見ると、これまで見られた成績下位層が減少し、むしろ満点に近い方に偏った正規分布とは異なる(右側に偏った)グラフへと変化しました。
このことから、時間を基準とした教育システムを見直し、子ども一人ひとりに必要な時間と、適した学習の機会を与えることで、これまで想定された以上の成果を子どもたちが成し遂げられる可能性が示されました。義務教育の時間が「無駄なものにしてはいけない」貴重な時間であるという認識のもと、ギガスクール時代だからこそこの変革が可能になるという期待が述べられています。
3. 教員の自己研鑽と総合啓発のための仕組みの構築
学校DXを進める上で、教員のスキルアップや意識改革は不可欠です。東原先生は、教員の自己研鑽と相互啓発を促すための3つの仕組みについて考察しています。
ギガスクール時代にふさわしい授業イメージの共有と自己評価
授業スタイルの振り返り:
教員が自身の授業がギガスクール時代にふさわしいものになっているかを確認するための「振り返りシート」を作成。
「授業の開始」「自律的な学び」「個別最適な学び」「対話的な学び」「振り返り」という5つの観点に基づき、3段階(望ましいA、中間B、望ましくないC)で評価できるようにしています。
例えば、「授業の開始」では、端末がすぐ活用できる状況がB、子どもが自ら学習活動を開始できる状況がAと定義。
「対話的な学び」では、他者参照後に自分の考えをバージョンアップさせるまで行っていればAとしています。
自己評価とレーダーチャート:
教員がこれらの項目について自己評価を行うと、自動的にレーダーチャートが作成され、自分の得意な点や改善すべき点が視覚的に把握できます。
これにより、校内で他の先生と共有することで、互いに学び合う機会が生まれます。夏休みなどには、1学期の授業を振り返り、2学期に向けた改善目標を宣言する研修も行われています。
教師の専門性の再認識:
対話的な学びを進める中で、子どもたち任せにできる部分と、教師の専門的な指導が不可欠な部分の見極めが重要であることが改めて浮き彫りになりました。先生が介入すべきタイミングと方法が、より深い学びに繋がると強調されています。
教員一人ひとりに寄り添う個別相談
集合研修では限界がある教員の育成に対し、個別相談の形を取ることで大きな効果が得られることが示されました。
個別最適化された授業づくり:
東原先生が学校を訪問し、教員一人ひとりと個別に45分程度の打ち合わせを実施。
教員それぞれの「授業の開始を変えたい」「自律的な学びを促したい」といったニーズや目標に基づき、具体的な授業案の作成をサポートします。
先生からの指示ではなく、「何がやりたいのか」「どうしたいのか」を丁寧に聞き出し、具体的なアイデアや他校の事例を紹介しながら、自律的な思考を促すアプローチが取られています。
学校全体の変革:
この個別相談を3年ほど続けた結果、学校全体として授業スタイルが大きく変化してきたことが実感されています。
子どもの個別最適な学びだけでなく、教員にとっても個別最適化された研修が非常に有効であることが示唆されました。
自己研鑽・相互啓発のための物理的空間の創出
教員がリフレッシュし、新たな発想を得られるような環境の重要性が語られました。
非日常的な空間の提供:
学校や役場の既存の空間から離れ、リラックスして自由に議論できる「アイススペース高木」という空間を地元自治体と協力して創設。
このスペースでは、職員会議の一部や講演会、教育委員会のミーティングなどが行われ、非日常的な空間が思考の切り替えや発想のリフレッシュに繋がる効果が期待されています。
窓から見える景色や、夕方にはお酒を飲みながら議論できる雰囲気など、精神的なゆとりをもたらす空間設計の重要性が述べられています。
まとめ
学校DXを推進する上で最も重要なのは、子どもたちの将来の姿を描くことです。現在の教育システムのままでは、変化の激しい未来を生きる子どもたちにとって不十分であり、デジタル技術、特にクラウドの力がその変革を大いに助けることになります。
情報活用能力の育成はもちろんのこと、SNSのようなデジタル世界の特性を理解し、適切に判断できる力を養うことも不可欠です。教育に携わる者が、これからの時代に求められる力を深く理解し、共通認識のもとで戦略的にDXを進める必要があります。
東山先生は、1978年からの教育情報化の経験に基づき、今回の3つの柱(対話的な学び、時間基準からの脱却、教員の自己研鑽環境整備)に焦点を当て、従来の「当たり前」を問い直し、具体的な工夫が効果を上げている事例を紹介しました。これらの実践は、他地域でも応用可能であり、少しずつ学校を変革していく手応えを感じていると締めくくられています。
(文責:久世)
3.「セカンドGIGAへの展望と課題」
堀田龍也氏(東京学芸大学大学院教育学研究科・教授)
動 画
資 料
内 容
1. GIGAスクール構想の現状と進展
GIGAスクール構想は、2020年のスタート以来、小中学校の児童生徒に1人1台の情報端末を配備し、授業改善を進めてきました。特に2022年度以降は多くの地域で本格的な活用が始まり、当初は「とにかく使ってみる」段階でしたが、現在は教科の学習と並行して、児童生徒一人ひとりが自分のペースで納得して学べるような授業改善へと移行しています。
1.1. 授業風景の変化
• 個別最適化された学びと協働学習: 児童生徒が教科書を読み込み、端末で情報をまとめ、クラウド上で共有することで、互いの進捗を確認し、助け合いながら学習する場面が増えています。教師は個々の進捗や努力に合わせて助言や指導を行います。
• 「学びに価値を感じる」ことの重要性: 当初はふざけてしまう児童生徒もいますが、学びに価値を感じ始めると、自分のペースで学べ、困ったときに教師だけでなく友達にも聞けるため、主体的に学びに向かう態度が育まれます。
• 体験とデジタルの融合: 理科の実験では、体験の重要性を前提としつつ、実験の経過を動画で撮影するなど、デジタルを活用して学びを深める事例が増えています。デジタルはリアルな学びを支えるツールとして機能しています。
• デジタルだからこそ可能な学び: 小学1年生がゴミ収集車の仕組みを学ぶ際に、写真を拡大して観察するなど、デジタルデバイスだからこそ可能になる詳細な観察や情報整理が行われています。
• 情報取り出しスキルの重要性: 児童生徒が自分のペースで学ぶには、教科書などの情報から必要な情報を自力で取り出すスキル(情報取り出し)が不可欠であり、義務教育段階でその訓練を積むことの重要性が強調されています。
• デジタル教科書の活用: 中学校の英語デジタル教科書では、ネイティブ音声でリスニング練習を繰り返せるため、児童生徒が自分のペースで反復学習を行うことが可能になります。小学校の算数デジタル教科書では、平行四辺形の面積を求める際に、図形を「切ったり動かしたり」して視覚的に理解を深めることができます。
1.2. アウトプットと学びの深化
• スライドによる共同編集: 児童生徒がスライドで学習内容をまとめる際、クラウド上で共同編集することで、他の児童生徒のまとめ方を参考にしたり、自分のまとめ方を多様化させたりすることができます。
• 進捗の可視化と相互支援: 個々の児童生徒の学習進捗を一覧で共有することで、「一人ですらすら」進める子から「一人でできた次も人に聞くんじゃないか」と自信がない子まで、それぞれの状況に合わせて助け合う文化が生まれています。
• 教え合いによる学びの深化: 早く進む児童生徒が、わからない友達のために説明動画を作成するなどの活動は、クラスへの貢献だけでなく、問題の本質をより深く理解することにつながり、高度な学びを促します。
• 「自分の学びは自分で責任を持つ」主体性の醸成: 堀田先生は、「分からないことは調べる」「他の人に聞く」「自分でできるようにする」といった、自分の学びに対する責任を持つ姿勢が主体性を育むと強調しています。
• 個別指導の質の向上: 自律的に学ぶ児童生徒が増えることで、教師は発達に障害のある子や心の弱い子、外国人児童生徒など、より手厚い支援が必要な児童生徒に時間を割くことができるようになります。
• 学習権の保障: 端末の持ち帰りやクラウドでの情報共有が日常的になることで、不登校や体調不良などで学校に来られない児童生徒もオンラインで学習に参加し、学習機会が保障されます。
• 心理的安全性と多様な学び方: 児童生徒が一人で学ぶだけでなく、友達と協力して学ぶことも増えています。教室内の心理的安全性が確保されることで、児童生徒は安心して学びに取り組めます。また、自分の考えが似ている人との確認や、異なる意見の人との意見交換など、状況に応じて多様な学び方を選択できるようになることが推奨されています。
1.3. 教師の役割と学級経営
• 振り返りの重要性: 学習内容だけでなく、自分の学び方(うまくいった点や改善点)を振り返る活動を区別して行うことで、より深い学びにつながります。
• 「教える」ことの継続: 児童生徒に任せる場面が増えても、教師が分かりやすく説明したり、明確な指示を出したりする場面は依然として重要です。実物投影機などを活用した丁寧な説明は、デジタル化が進んでも変わらず必要とされます。
• 学習規律と学級経営: 児童生徒が安心して学べる環境を提供するために、教師の学級経営の力量が試されます。清掃活動や机の整頓など、集団で学ぶ上での基本的な規律は引き続き重要です。
• 基礎的学力の定着: ドリル学習など、基本的な学びを疎かにすることなく、デジタルの利点を活かしながらも基礎を大切にする姿勢が重要です。
• タイピングスキルの必要性: 情報活用能力の基礎として、キーボード入力(タッチタイピング)の習得が非常に重要であり、児童生徒にしっかりと身につけさせるべきだと強調されています。
1.4. ICT活用の効果と学力
• Jカーブ効果: ICT活用は、導入当初は慣れないために効果が見えにくいものの(Jカーブ)、慣れてくると子どもの変化や教師の授業デザインの変化によって、劇的に効果が向上するという研究結果が紹介されました。
• 学力向上への寄与: GIGAスクール構想によって進められた「主体的・対話的で深い学び」に取り組んでいる学校では、全国平均や県の平均と比較して学力が高い傾向にあり、特に「思考・判断・表現」の能力が大きく伸びています。
• 知識・技能と思考・判断・表現のバランス: 基礎的な知識・技能はもちろん重要ですが、それを踏まえた上で、自分の力で考え、他者とコミュニケーションを取りながら学ぶ力を育むことが大切です。
________________________________________
2. 学力に関する誤解とCBT化の動向
2.1. 学力評価の多層性と注意点
• 学力の多層性: 「学力が上がった/下がった」と一括りにするのではなく、どの学習内容や活動が重要だったのか、どの児童生徒に合っているのかなどを、より詳細に分析する必要があります。
• 他校との比較の難しさ: 全国学力・学習状況調査の結果を単純に比較することの限界が指摘されています。問題も異なり、点数のわずかな差で優劣を判断するのは適切ではありません。
• 基礎学力と応用的な学び: 基礎的な学力が高度な学びを支えるのは当然であり、ICT活用は基礎的な学力を効率的に習得させ、より高度な学びに時間を割くためのものです。
• デジタルと紙の二項対立の超越: 「紙の方が良い」という意見は、紙で学んできた世代の前提に立っており、デジタルに慣れ親しんだ現代の児童生徒にとっては当てはまらない可能性があります。デジタル批判にはビジネス的な背景もあるため、冷静な判断が求められます。
• 「学ぶ力」「学ぶ意欲」の重要性: 学力は、学んだ結果身についた力だけでなく、「学ぶ力」や「学ぶ意欲」、学ぶスキルも含まれます。生涯にわたって学び続ける現代において、後者を育むことが非常に重要です。
2.2. CBT化の進展と準備の必要性
• 全国学力・学習状況調査のCBT化: 全国学力・学習状況調査がCBT(Computer Based Testing)に移行することが公表されています。2025年度の中学校理科から始まり、2027年度には小学校の国語・算数、中学校の国語・数学もCBT化されます。
• CBT化への準備: 各教育委員会は十分なネットワーク速度を担保し、学校はCBT経験を積む必要があります。文部科学省が提供するCBTプラットフォームの活用や、動画を用いた出題形式、マウス操作による回答など、従来の紙のテストとは異なる形式への慣れが求められます。
• 個別最適化された評価: CBT化により、児童生徒それぞれの理解度や進捗に合わせて問題を変えることが可能になり、採点や集計も迅速に行われるため、より早いフィードバックが可能になります。
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3. 次期学習指導要領に向けた議論の方向性
2024年12月25日、文部科学大臣から中央教育審議会に対し、次期学習指導要領(2030年全面実施予定)に関する諮問が出されました。
3.1. デジタル化の課題意識と基本的な考え方
• 日本のデジタル化の遅れ: デジタル化における課題として、日本の現状の遅れや、実体験における格差、デジタル化の負の側面(依存、いじめなど)が挙げられています。
• デジタルとリアルの融合: 今後は「デジタルかリアルか」「デジタルか紙か」といった二項対立ではなく、デジタルの力でリアルな学びを支えるという基本的な考え方が示されています。バランス感覚を持って、最適な組み合わせを積極的に考えていくことが求められています。
3.2. 審議すべき内容のポイント(デジタル関連)
• 生成AIの影響と学習内容の問い直し: 生成AIの急速な発展は、学校で学ぶべき内容そのものを問い直すきっかけとなります。検索すれば分かるような知識の詰め込みではなく、教科の本質的な見方・考え方や、より大局的な学びが重要になります。
• 情報活用能力の抜本的向上: 情報社会において、情報活用能力(情報をうまく取り扱う能力、端末を使いこなす能力)の抜本的な向上が求められています。小学校からの教科としての情報教育や、現在の技術家庭科、高等学校の情報科のあり方を含め、カリキュラム全体の改善の中で検討されます。
• 教科書のあり方の検討: 教科書が分厚く、教師の負担となっている現状を踏まえ、今後の教科書の内容や分量、デジタル化の範囲などが検討されます。児童生徒が自立して学ぶことを前提とした教科書のあり方が模索されます。
• デジタル学習基盤を前提とした学び: 端末やネットワーク、クラウドといったデジタル学習基盤を前提に、児童生徒が自分で学びを自己調整し、教材や方法を選択できるような指導計画や学習環境をどう構築していくかが議論されます。当然ながら、その中での教師の指導性のあり方も重要な論点となります。
(文責:久世)
コーディネータ:村瀬康一郎氏(岐阜女子大学教授)
🔳 e-Learning(オンデマンド講座)
学校DX戦略コーディネータ概論【Ⅰ】 ~ 教育DX時代における新たな学び ~
学校DX戦略コーディネータ概論【Ⅱ】 ~ 学校DX戦略の策定と展望 ~
学校DX戦略コーディネータ概論【Ⅲ】 ~ カリキュラム開発と学びのデザイン ~(構想中)
学校DX戦略コーディネータ概論【Ⅳ】 ~ 教育DX時代における教材開発 ~(構想中)
【公開講座】デジタルアーカイブ概論【Ⅰ】 ~ デジタルアーカイブによる地域活性化 ~
第1講 デジタルアーカイブの基礎
1.目 的
デジタルアーカイブは、「デジタル」と「アーカイブ」という言葉からできた和製英語と言われています。デジタルアーカイブとは何か? デジタルアーキビストに必要な能力は何か?ここでは、言葉の意味と発展の歴史から、基本的な考え方を理解し、今後のデジタルアーカイブの方向性を考えます。
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブとは何か説明できる。
② デジタルアーカイブがどのように発展してきたかについて具体例をあげ説明できる。
③ デジタルアーキビストに求められている能力について具体的に説明できる。
3.課 題
① デジタルアーカイブとは何か自身の立場で説明しなさい。
② デジタルアーカイブがどのように発展してきたか説明しなさい。
③ デジタルアーキビストに求められている能力は何か自身の立場で説明しなさい。
4.プレゼン資料
5.動画資料
第2講 デジタルアーカイブ開発と活用プロセス
1.目 的
デジタルアーカイブの利用は、資料の提示や提供から始まり、課題解決、知的創造等の処理へと進みます。またデジタルアーカイブを活用し、新しい「知」の創造を求め、さらに新しい「知」と人々の経験を付加し、新たな知的活動へと発展します。ここでは、デジタルアーカイブの開発と活用プロセスについて考えます。
2.学習到達目標
①デジタルアーカイブの活用について具体例を挙げて説明できる
②資料の選定評価について説明できる。
③デジタルアーカイブのプロセスや記録方法について説明できる。
3.課 題
①デジタルアーカイブの活用について具体例を挙げて説明してください。
②資料の選定評価の課題について説明してください。
③デジタルアーカイブのプロセスや記録方法について説明してください。
4.プレゼン資料
5.動画資料
第3講 デジタルアーカイブの評価とメタデータ
1.目 的
デジタルアーカイブは、対象とする資料(情報資源)の分野も多岐にわたり、プロジェクト規模なども異なるため、それぞれにあわせた評価手法が求められます。そこで、本講では、デジタルアーカイブの自己点検ツールとして考案された「デジタルアーカイブアセスメントツール」の内容を把握し、その評価項目の中でも重視されているメタデータについて、記述のための国際標準、国際指針として制定されている事例から学びます。
2.学習到達目標
① 「デジタルアーカイブアセスメントツール」の内容について説明できる。
② 記述のための国際標準、国際指針などの事例について説明できる。
③ 資料(情報資源)のメタデータ記述ができる。
3.課 題
① 「デジタルアーカイブアセスメントツール」の評価項目の内、あなたが重要だと思う項目について、なぜそう思うかを含めて説明してください。
② 具体的に何か資料(情報資源)を一つ取り上げ、その資料のメタデータ記述項目を設定した上で実際の記述を行ってください。
4.プレゼン資料
5.動画資料
第4講 デジタルアーカイブの利活用
1.目 的
デジタルアーカイブは、1990年代の初期から、過去から現在の資料をデジタル化し、次の世代への伝承と現状での利活用を目指して開発が進められてきた。デジタルアーカイブの基本は、過去~現在の資料の収集・保管、デジタル化、さらに現状での利活用と次の世代への伝承である。
過去~現在の各種資料を収集・保管し、次のように使われる。
①次世代へのデジタルコンテンツの確かな伝承
②国内外のデジタルコンテンツの流通と利活用
ここでは、図書館や博物館等におけるデジタルアーカイブの利活用について考える。
2.学習到達目標
① 図書館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明できる。
② 博物館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明できる。
③ デジタルアーカイブの共通利用について説明できる。
3.課 題
① 図書館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明しなさい。
② 博物館におけるデジタルアーカイブの実践例を具体的に説明しなさい。
③ デジタルアーカイブの共通利用について説明しなさい。
4.プレゼン資料
5.動画資料
第5講 デジタルアーカイブによる地域活性化
1.目 的
知識基盤社会においてデジタルアーカイブを有効的に活用し,新たな知を創造するという本学独自の「知の増殖型サイクル」の手法により,地域課題に実践的な解決方法を確立するために,地域に開かれた地域資源デジタルアーカイブによる知の拠点形成をする。このことにより,地域課題に主体的に取り組む人材を養成する大学として,伝統文化産業の振興と新たな観光資源の発掘並びにデジタルアーカイブ研究による地方創成イノベーションの創出について具体的に考える。
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブと地域課題解決について説明できる。
② 地方創成イノベーションの創出について具体的に説明できる。
3.課 題
① 飛騨高山匠の技デジタルアーカイブにより,地域の文化産業を振興するための方策を3つ挙げて説明しなさい。
4.プレゼン資料
5.動画資料
※本映像は本学の学部の授業(情報の管理と流通)の内容の一部を利用して提供しています。
6.資料
第6講 文化はどのように記録するの?
1.目 的
近年,デジタルアーカイブの対象である“文化”の意味が以前に比べて広がっていること,“文化”は時代によって変化するものであることを理解し,様々な文化のデジタル化(記録),デジタル化の際の留意点について学びます。
2.学習到達目標
①デジタルアーカイブの対象である“文化”について説明できる。
②記録に応じて,多様なデジタル化の方法を説明できる。
③記録の際の留意点について説明できる。
3.課 題
① 身近な“文化”をひとつ挙げ,具体的な記録方法を挙げてください。
② ①で挙げた記録方法の特性を説明しなさい。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.資料
③ 沖縄おうらい
第7講 デジタルデータはどのように管理・流通するの?
1.目 的
情報社会においてデジタル化・データの蓄積をする意味について理解し,具体的なデータの管理方法および流通方法について学びます。また,情報社会におけるデジタルアーカイブの管理と流通の重要性についても考えます。
2.学習到達目標
①デジタルアーカイブの資料データの管理に必須であるメタデータの役割について説明できる。
②データの流通について多様な発信方法があることを理解し,説明できる。
③情報社会においてデータの管理と流通が重要である理由を説明できる。
3.課 題
① デジタルアーカイブにおいて,なぜ管理と流通が重要なプロセスであるのか,具体例を挙げて説明しなさい。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.資料
② 情報の発信と伝達
第8講 デジタルアーカイブと知的財産権(1)
1.目 的
デジタルアーキビストとして、アーカイブを計画し、そして資料収集し、そして構築し、そして利用許諾し、また運用していくという、こういったときに必要な権利処理について説明する。
2.学習到達目標
① デジタルアーキビストに著作権処理の能力が必要であることについて具体的に説明ができる。
② 著作者の権利について具体的に説明できる。
③ 著作権の契約書を作成できる。
3.課 題
① デジタルアーキビストに著作権処理の能力が必要であることについて具体的に説明しなさい。
② 著作者の権利について具体的に説明しなさい。
③ 著作権の契約書を作成しなさい。
4.プレゼン資料
第9講 デジタルアーカイブと知的財産権(2)
1.目 的
著作権について、自分の立ち位置とは関係ない形で第三者的に実践の試みの良い部分と課題について理解を深め、基本的な理解を図った後に、実践の中から法律など制度的な課題について考えます
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブの実践における著作権に関する課題について説明できる。
② 著作権のデジタルアーカイブの活用に関する課題について具体例を挙げて説明できる。
3.課 題
1.デジタルアーカイブの実践における著作権に関する課題について説明しなさい。
2.著作権のデジタルアーカイブの活用に関する課題について具体例を挙げて説明しなさい。
4.プレゼン資料
5.動画資料
第10講 ジャパンサーチとデジタルアーカイブ活用基盤
国立情報学研究所名誉教授 高野明彦氏
1.目 的
ジャパンサーチは,書籍等分野,文化財分野,メディア芸術分野など,さまざまな分野のデジタルアーカイブと連携して,我が国が保有する多様なコンテンツのメタデータをまとめて検索・閲覧・活用できるプラットフォームである.このジャパンサーチについて理解を深め,基本的な理解を図った後に,メタデータの連携⽅法について考えます.
2.学習到達目標
① ジャパンサーチの目的について説明できる.
② メタデータの連携方法について具体例を挙げて説明できる.
3.課 題
① ジャパンサーチについての課題について説明しなさい.
② ジャパンサーチAPIの活⽤例について具体例を挙げて説明しなさい.
4.プレゼン資料
5.映像資料
第11講 世界のデジタルアーカイブの発展とその活用
東京大学大学院情報学環 時実象一氏
1.目 的
デジタルアーカイブの種類っていうふうに考えていったときに,書籍,文書,新聞それからテレビ・放送,映画,音楽・音声,舞台芸術,写真,それから美術品があります.その他にも,それとかあとはウェブページ,ゲーム,ソフトウェア,その他というようなのがあります.ここでは,世界のデジタルアーカイブの発展とその活用について考えます.
2.学習到達目標
① 世界のデジタルアーカイブの動向ついて説明できる.
② 世界のデジタルアーカイブを俯瞰して,その活用の変化について具体例を挙げて説明できる.
3.課 題
① ジャパンサーチについての課題について説明しなさい.
② ジャパンサーチAPIの活⽤例について具体例を挙げて説明しなさい.
3.プレゼン資料
4.映像資料
第12講 デジタルアーカイブと法制度の現在地点
骨董通り法律事務所パートナー弁護士 福井健策氏
1.目 的
著作権について,自分の立ち位置とは関係ない形で第三者的に実践の試みの良い部分と課題について理解を深め,基本的な理解を図った後に,実践の中から法律など制度的な課題について考えます.
2.学習到達目標
① デジタルアーカイブの実践における著作権に関する課題について説明できる.
② 著作権のデジタルアーカイブの活用に関する課題について具体例を挙げて説明できる.
3.課 題
① デジタルアーカイブの実践における著作権に関する課題について説明しなさい.
② 著作権のデジタルアーカイブの活用に関する課題について具体例を挙げて説明しなさい.
③ デジタルアーカイブ憲章について,課題を説明しなさい.
4.プレゼン資料
5.映像資料
第13講 AIと人間の学び
赤堀侃司(東京工業大学名誉教授)
1.目 的
第1次AIブームから第2次AIブームへと移り変わり、生成AIを活用する人間の学びに変化が生じています。これからの私たちの学びに必要となる7つの資質能力とAIについて学びます。
2.学習到達目標
① 第1次AIブームから第2次AIブームへと移り変わり、変化した生成AIの学びについて説明することができる。
② 生成AIの発展により、私たちの学びに求められる7つの資質能力について説明することができる。
3.課 題
① 生成AIの進化から、これからの私たち人間の学びに求められる資質能力について説明しなさい.
4.プレゼン資料
AIと人間の学び(赤堀先生)
5.映像資料
nbsp;
6.資 料
① AIと人間の学び 壁の向こうで答えているのはAIか人か? (単行本)発売日 : 2022/3/31
② 第11講「AIと人間の学び」デジタルアーカイブin岐阜2023(赤堀先生)
第14講 人とAIの学習研究から考えるこれからの教育
益川弘如(聖心女子大学教授)
1.目 的
人はどのように学ぶのか、また、どのようなときに深く学ぶのかという認知科学の知見に基づき,人の学びと人工知能やAIがつくり上げていく知能を比較することで、AIとの共生時代である今、人間としての「価値ある学び」やそれらの活用による私たちの学びの変容について学びます。
2.学習到達目標
① AI時代における「価値ある学び」について説明することができる。
② 人工知能や生成AIを活用した際の人間の学びの変容について説明することができる。
③ 生成AIを活用した具体的な授業事例から、学習観や授業観をとおして私たちの学びの本質を説明することができる。
3.課 題
① AI時代における「価値ある学び」とデジタル化された情報との関係について説明しなさい.
② 人工知能や生成AIの効果的な活用と私たちの学びの変容について説明しなさい.
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.資料
② 第12講「人とAIの学習研究から考えるこれからの教育」
第15講 人工知能(AI)とデジタルアーカイブの現状と未来
澤井進(岐阜女子大学特任教授)
1.目 的
「人工知能とデジタルアーカイブの一体化が未来のブレークスルー,デジタル文化遺伝子となる」というアイディアについて、「AIとデジタルアーカイブの関係」、「デジタルアーカイブの利活用」、「生成AIの驚異的進化」、「AIとデジタルアーカイブが創る未来」、「デジタル文化遺伝子を目指して」の5つの内容から学びます。
2.学習到達目標
① 生成AIとデジタルアーカイブのそれぞれの機能からみた関係性について説明することができる。
② デジタルアーカイブを活用した人工知能との一体化によってもたらされる新たな可能性とは何か、説明することができる。
③ デジタル文化遺伝子というアイディアについて説明することができる。
3.課 題
① デジタル文化遺伝子の重要な役割とは何か、800字で説明しなさい。
4.プレゼン資料
人工知能(AI)とデジタルアーカイブの現状と未来(澤井先生)
5.動画資料
6.資料
2.第13講「人工知能(AI)とデジタルアーカイブの現状と未来」
テキスト
【テキスト】
1.2023版デジタルアーカイブ概論_テキスト(最終)久世_20240401
2.2023版デジタルアーカイブ概論_テキスト(最終)久世_20240401(Word版)
3.2023版デジタルアーカイブ概論_テキスト(最終)久世_20240509
4.2023版デジタルアーカイブ概論_テキスト(最終)久世_20240509(Word版)
【公開講座】人工知能(AI)概論【Ⅰ】~ AIの過去から未来へのプロローグ ~
Ⅰ はじめに
本講座では、コンピュータの歴史を振り返り、人工知能(AI)の誕生から現在までの進化を解説します。また、AIが今後どのように教育に活用されるのかについて、展望します。
今日のトランスフォーマー革命は機械翻訳の精度を大幅に向上させ、生成AIを誕生させました。生成AI(ChatGPTやGemini等)はAIが人間のような会話を生成できる技術です。
今後必要となるのはAI倫理です。正確無比のデジタルアーカイブとAIの両者の一体化と、その活用の仕方が未来の課題だということを理解します。
Ⅱ 授業の目的・ねらい
本講座の目的は、AIの過去・現在・未来について幅広く学ぶことです。教育にAIがどのように活用されるのか、AIと共生する未来を生き抜くための教育とは何かについて、考察する機会を提供することをねらっています。
Ⅲ 授業の教育目標
① デジタル社会の「読み書きそろばん」として必須となるAIを理解する。
② AIはコンピュータの発展と密接な関係があることを理解する。
③ AIのデジタルアーカイブとAI文化を理解する。
第1講 AIの過去から未来へのプロローグ ー『コンピュータ歴史博物館』が語るAI文化
澤井進(岐阜女子大学特任教授)
1.何を学ぶか
AI時代の教育「人工知能(AI)の過去・現在・未来」の講座を通して、コンピュータの歴史とAI時代を生きる哲学について学んでいきます。
三浦謙一博士の紹介による「米国シリコンバレーのコンピュータ歴史博物館が語るAI文化」からAIの過去・現在・未来を理解します。
2.学修到達目標
① コンピュータ歴史博物館が語るAI文化について説明できる。
② AI誕生からシンギュラリティにいたるAIの過去・現在・未来を説明できる。
③ 何をどのように学び、如何に自分の資質・能力をアップグレードするかについて考えることができる。
3.課題
① 結婚相手を探す時に信用するのはAIが選んだ人ですかそれとも親が選んだ人ですか?について考察し,あなたの考えを800字で説明しなさい。
4.プレゼン資料
AIの過去から未来へのプロローグ ー『コンピュータ歴史博物館』が語るAI文化
5.動画資料
6.テキスト
第2講 知能の迷宮を解き明かす-暗号解読とチューリングテストの謎めく挑戦
澤井進(岐阜女子大学特任教授)
1.何を学ぶか
AI時代の教育「人工知能(AI)の過去現在未来」の講座を通して、コンピュータの歴史とAI時代を生きる哲学について学んでいきます。
内容は「知能の迷宮を解き明かすー暗号解読とチューリングテストの謎めく挑戦」です。
アラン・チュリーング(A. M. Turing)が解読不能と言われた「エニグマ」暗号の解読に成功し、汎用コンピュータの誕生やチューリングテストを経て、ダートマス会議で「人工知能(AI)」という言葉が誕生したことを理解します。
2.学修到達目標
① アラン・チュリーングの暗号解読とチューリングテストについて説明できる。
② 汎用コンピュータとAI誕生とについて事例を挙げて説明できる。
③ 日本のコンピュータと日本のAIについて考えることができる。
3.課題
① 貴方はAIの教師と人間の教師どちらから学びますか?について考察し,あなたの考えを800字で説明しなさい。
4.プレゼン資料
知能の迷宮を解き明かす-暗号解読とチューリングテストの謎めく挑戦
5.動画資料
6.テキスト
第3講 知識が翼を得る瞬間-知識表現とエキスパートシステムの知の舞台裏
澤井進(岐阜女子大学特任教授)
1.何を学ぶか
第2次AIブーム「知識の時代」の代表的な研究成果である第五世代コンピュータプロジェクト、 知識表現形式、機械翻訳、エキスパートシステムを学び、知識(暗黙知)獲得の問題を理解します。
2.学修到達目標
① 第五世代コンピュータプロジェクトを説明できる。
② 知識表現形式、機械翻訳、エキスパートシステムについて事例を挙げて説明できる。
③ 知識(暗黙知)獲得の問題について考えることができる。
3.課題
① AI搭載の自動運転の車は、信号無視で突然歩行者が飛び出した時、壁に激突してでも歩行者を救うべきか、それとも歩行者を犠牲にしてドライバーの命を救うべきか?について考察し,あなたの考えを800字で説明しなさい。
4.プレゼン資料
知識が翼を得る瞬間-知識表現とエキスパートシステムの知の舞台裏
5.動画資料
6.テキスト
第4講 人間の脳のなどと深層学習の魔法 目を持ったコンピュータが見せる未知の領域
澤井進(岐阜女子大学特任教授)
1.何を学ぶか
「コンピュータが目を持つ」という大変ワクワクするような講座です。「人間の脳のなどと深層学習の魔法 目を持ったコンピュータが見せる未知の領域」というテーマです。
今回の狙いは、第3次Alブームでは「深層学習(ディープラーニング)」がAIを大きく変えました。具体的には、コンピュータが目を持つようになる畳み込みニューラルネットワーク(CNN)等の登場について理解します。
2.学修到達目標
① 3つの機械学習(教師あり/教師なし/強化学習)を説明できる。
② 畳み込みニューラルネットワーク(CNN)について事例を挙げて説明できる。
③ リカレントニユーラルネットワーク (RNN)について事例を挙げて説明できる。
3.課題
① 人間の医師とAI手術ロボット、どちらに命を預ける?について考察し,あなたの考えを800字で説明しなさい。
4.プレゼン資料
人間の脳のなどと深層学習の魔法 目を持ったコンピュータが見せる未知の領域
5.動画資料
6.テキスト
第5講 シンギュラリティの扉を叩け
澤井進(岐阜女子大学特任教授)
1.何を学ぶか
AIが人間を超える「シンギュラリティ」という大変ドキドキするような講座です。「シンギュラリティの扉を叩け-AIが覆す人間の世界チャンピオン」というテーマです。
狙いは、データサイエンスとDX、探索と推論、チェスコンピュータの開発、AI時代のバックギャモンと将棋・囲碁の順にお話ししてまいります。最近のDXやデータサイエンスの背景には、バックギャモンやチェス等の中心的な例題があり、多くの探索アルゴリズムや並列計算技術など広く普及している技術が生み出されていることを理解いたします。
2.学修到達目標
① DXやデータサイエンスの背景を説明できる。
② バックギャモンやチェス等の中心的な例題がAI技術をけん引したことを説明できる。
③ 多くの探索アルゴリズムや並列計算技術などが生み出されたことを説明できる。
3.課題
① AIを使って何をすれば生産性を倍増し、国際競争に勝てるか?について考察し,あなたの考えを800字で説明しなさい。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第6講 機械翻訳の新時代-トランスフォーマー革命と「生成AI」の驚異的進化
澤井進(岐阜女子大学特任教授)
1.何を学ぶか
トランスフォーマー革命は、生成AI(ChatGPT、Gemini等)を誕生させました。生成AIは人間のような会話を生成できる技術です。その技術が、機械翻訳精度の向上、産業、医療領域や農業等に応用されていることを理解します。
2.学修到達目標
① トランスフォーマー革命が生成AIを誕生させたことを説明できる。
② トランスフォーマー革命により機械翻訳精度が向上したことを説明できる。
③ AIが産業、医療や農業等に応用されていることについて事例を挙げて説明できる。
3.課題
① AIが作った小説、論文、楽曲やプログラム等の著作権はAIにあるか?について考察し,あなたの考えを800字で説明しなさい。
4.プレゼン資料
機械翻訳の新時代-トランスフォーマー革命と「生成AI」の驚異的進化
5.動画資料
6.テキスト
第7講 AIの過去・現在・未来 - 未来への飛翔 –
澤井進(岐阜女子大学特任教授)
1.何を学ぶか
日本のAI戦略は教育から始まること、教育に利用される生成AI、重要なAI事例である自動運転自動車や、世界で話題になっている国際的なAIのルール作り及びその根底にあるAI倫理を理解します。
2.学修到達目標
① 日本のAI戦略は教育から始まることを説明できる。
② 教育に利用される生成AIや自動運転について,事例を挙げて説明できる。
③ 国際的なAIのルール作りとAI倫理について考えることができる。
3.課題
① 自動運転車が引き起した事故は、誰が責任を負うべきか?について考察し,あなたの考えを800字で説明しなさい。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第8講 人工知能(AI)とデジタルアーカイブの現状と未来
澤井進(岐阜女子大学特任教授)
1.何を学ぶか
「人工知能とデジタルアーカイブの一体化が未来のブレークスルー,デジタル文化遺伝子となる」というアイディアについて、「AIとデジタルアーカイブの関係」、「デジタルアーカイブの利活用」、「生成AIの驚異的進化」、「AIとデジタルアーカイブが創る未来」、「デジタル文化遺伝子を目指して」の5つの内容から学びます。
2.学修到達目標
① 生成AIとデジタルアーカイブのそれぞれの機能からみた関係性について説明することができる。
② デジタルアーカイブを活用した人工知能との一体化によってもたらされる新たな可能性とは何か、説明することができる。
③ デジタル文化遺伝子というアイディアについて説明することができる。
3.課題
① デジタル文化遺伝子の重要な役割とは何か、800字で説明しなさい。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第9講 AIと人間の学び
赤堀侃司(東京工業大学名誉教授)
1.何を学ぶか
第1次AIブームから第2次AIブームへと移り変わり、生成AIを活用する人間の学びに変化が生じています。これからの私たちの学びに必要となる7つの資質能力とAIについて学びます。
2.学修到達目標
① 第1次AIブームから第2次AIブームへと移り変わり、変化した生成AIの学びについて説明することができる。
② 生成AIの発展により、私たちの学びに求められる7つの資質能力について説明することができる。
3.課題
① 生成AIの進化から、これからの私たち人間の学びに求められる資質能力について説明しなさい.
4.プレゼン資料
プレゼン資料(赤堀先生)
5.動画資料
6.テキスト
7.資 料
1.AIと人間の学び 壁の向こうで答えているのはAIか人か? (単行本)発売日 : 2022/3/31
第10講 人とAIの学習研究から考えるこれからの教育
益川弘如(聖心女子大学教授)
1.何を学ぶか
人はどのように学ぶのか、また、どのようなときに深く学ぶのかという認知科学の知見に基づき,人の学びと人工知能やAIがつくり上げていく知能を比較することで、AIとの共生時代である今、人間としての「価値ある学び」やそれらの活用による私たちの学びの変容について学びます。
2.学修到達目標
① AI時代における「価値ある学び」について説明することができる。
② 人工知能や生成AIを活用した際の人間の学びの変容について説明することができる。
③ 生成AIを活用した具体的な授業事例から、学習観や授業観をとおして私たちの学びの本質を説明することができる。
3.課題
① AI時代における「価値ある学び」とデジタル化された情報との関係について説明しなさい.
② 人工知能や生成AIの効果的な活用と私たちの学びの変容について説明しなさい.
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第11講 生成AIと学習コンテンツ
澤井進(岐阜女子大学特任教授)
1.何を学ぶか
人工知能AIは社会のあらゆる分野に影響を与え始めており、現在「生成AI世代が日本をどう変える!」と言われています。というのも現在大学で学んでらっしゃる学生さんは大体宿題を作ったり宿題を書いたり論文を作ったりする時に生成AIを使われます。そういう意味で生成AIを含む超AIの発展は教育分野にも大きな影響を与え従来の教育方法では対応できない新たな課題が生じています。
2.学修到達目標
① 超AI世代と2つの超AI世代教育について説明できる。
② 3つある生成AI世代用学習コンテンツを説明できる。
③ 体験学習と個別学習の学習コンテンツおよびその他の要素について、事例を挙げて説明できる。
3.課題
① 生成AIを活用してどのような学習コンテンツを作成したら良い授業になるか考察し、あなたの考えを800字以内で説明しなさい。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第12講 教師あり学習を用いたAI倫理
澤井進(岐阜女子大学特任教授)
1.何を学ぶか
現在の第4次AIブームでは、自動運転や画像診断など私たちの暮らしにAI技術が急速に入り込んできています。21世紀の基幹テクノロジーとされるAIとどう付き合い、その活用をどこまで許容していくのか?EUではAI倫理に基づく輸入規制を計画しており、日本のAI倫理が問われています。
2.学修到達目標
① AI倫理の定義と背景を説明できる。
② GIGAスクール構想でAI倫理チャットボットが必要になった理由を説明できる。
③ AI倫理処理で用いる「教師あり学習」について説明できる。
3.課題
① GIGAスクール構想でAI倫理チャットボットをどのように活用したら「いじめ」が減るかを考察し、あなたの考えを800字以内で説明しなさい。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第13講 マルチモーダル生成AI共同によるAI倫理処理
澤井進(岐阜女子大学特任教授)
1.何を学ぶか
2023年9月25日、新たな機能追加で、ChatGPT(チャットGPT)がついに目と声を手に入れました。具体的には、ChatGPTに画像解析機能と音声出力機能が追加され、マルチモーダル生成AIが登場しました。その後、各社のマルチモーダル生成AIが開発され、マルチモーダル生成AIは驚異的な発展を行っています。マルチモーダル生成AIとは、異なる種類のデータを組み合わせたり、関連付けたりして処理する人工知能(AI)システムで、生成AIの一種です。マルチモーダル生成AIは、テキスト、音声、画像、動画、センサ情報など、複数の異なるデータの種類(脳が知覚できる様相、Modality)から情報を収集し、統合して処理することで、より豊かな情報を処理し、深い理解や洞察を提供することができると言われています。
2.学修到達目標
① マルチモーダル生成AIについて説明できる。
② 3種のマルチモーダル生成AI共同による倫理問題の解決法を説明できる。
③ モーダル論理の定義を説明できる。
3.課題
① マルチモーダル生成AIのハルシネーションを防ぐにはどのようにしたら良いかを考察し、あなたの考えを800字以内で説明しなさい。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第13講 「マルチモーダル生成AI共同によるAI倫理処理」テキスト
第14講 超AIと世界遺産
澤井進(岐阜女子大学特任教授)
1.何を学ぶか
生成AIの脅威的な進展に伴い、早ければ、2020年代後半には業務に依存しない人工汎用知能AGIや、人工超知能ASIが登場すると言われています。
2.学修到達目標
① AIを超える世代教育の必要性を説明できる。
② 世界遺産の事例で先人がどのような文字で「知」を継承したか説明できる。
③ マルチモーダル生成AIの活用事例が説明できる。
3.課題
① 世界遺産の謎を解明するには超AIをどのように活用したら良いかを考察し、あなたの考えを800字以内で説明しなさい。
4.プレゼン資料
5.動画資料
6.テキスト
第15講 AIを超える世代教育
澤井進(岐阜女子大学特任教授)
1.何を学ぶか
2023年12月17日にOpenAIの「超知性」誕生に備える研究チームが、GPT-2(弱いAI)モデルで、GPT-4のように強力なAI(強いAI)を制御する方法を説明しました。OpenAIは、人間よりもはるかに賢いAIである「超知性」が2033年までの10年間で開発されると推測しており、「スーパーアライメントチーム」を立ち上げ、超知性を制御するための研究が行われています。
2.学修到達目標
① マルチモーダル生成AIから発展した2種の「超AI」を説明できる。
② 「AIを超える世代教育」の狙いと授業の仕方を説明できる。
③ 超AIとデジタルアーカイブの役割を説明できる。
3.課題
① 超AIとデジタルアーカイブを活用してどんな社会、そしてどんな未来を実現したいかを考察し、あなたの考えを800字以内で説明しなさい。